「子どものために」と口うるさい親……反発や無気力につながる
昨今、一般的な普通の家庭で順調に育っていた子どもが、思春期になると親に激しく反発したり、また不登校や引きこもりになったり、という話を耳にします。虐待やネグレクトだったわけでもなく、どちらかというと、親は子育てや教育に熱心だった家庭にも起こっています。ほとんどの家庭では、子どもを愛し、子どもの幸せを願っていることでしょう。それにも関わらず、なぜ子どもの健やかな心の成長が妨げられることになるのでしょうか。
<目次>
口うるさい親が子どもを精神的に追い詰める! NGワード5選
「子どもをきちんと育てなければ」「子どもをしっかり育てることが親の役目」と思い、熱心に子育てをする親ほど、しつけや教育的な言葉を口にすることでしょう。ですが、子どものためにと思い、何度も口うるさく、繰り返される言葉が、反対に子どもを精神的に追い詰め、健やかな心の成長には逆効果になっていることがあるのです。口うるさい親が「子どものために」と思って繰り返す代表的な言葉5つと、それが逆効果な理由を説明します。
NGワード1:指示や命令をする言葉
口うるさい親が言いがちなNGワードの一つ目が、「急がないと間に合わないわよ」「忘れ物はないか、確認しなさいね」「靴は揃えなさい」「先に宿題を済ませなさい」「早くお風呂に入りなさい」など、指示や命令をする言葉です。親は「遅刻させてはいけない」「忘れ物があってはいけない」「行儀良い子にしつけなければ……」など思い、子どもに次から次へと指示や命令を与えます。これらの言葉は、子どもが自分で次の行動を考えることの妨げになってしまいます。
NGワード2:強要する言葉
口うるさい親が言いがちなNGワードの二つ目は、「ごめんなさいは?」「朝起きてきたら、まずは『おはよう』でしょう?」「人からしてもらったときは『ありがとう』と言いなさい」などのあいさつや感謝を強要する言葉です。親は「あいさつや感謝の言葉をきちんと言える子にしなければ」との思いから、出る言葉なのですが、子どもは強要されると、もし自ら言おうと思っていても気持ちは萎むものです。またそうでなく、ただ言わされているだけなら、感謝や謝る気持ちが育まれないでしょう。
NGワード3:プレッシャーを与える言葉
口うるさい親が言いがちなNGワードの三つ目は「丁寧にしなさいよ」「失敗しないように気をつけてね」「最後まで、きちんとやり遂げなさい」など、プレッシャーを与える言葉です。親は、達成度を高くさせようと言うのですが、子どもにはプレッシャーとなり、「やるなら完璧にしなければいけない」と追い詰められる気持ちになり、全く取り組むことができないこともあります。
NGワード4:感情を否定する言葉
口うるさい親が言いがちなNGワードの四つ目は「すぐに泣かないの」「これくらいで喜んでいてはダメよ」「悔しがっても、仕方ないでしょう」など感情を否定する言葉です。親は、強く育てようと思ったり、慰めるつもりで言うのですが、子どもは自分の感情を否定されたと受け取るでしょう。注意やアドバイスが欲しいのではなく、共感してほしいのです。「親は分かってくれない」と、親子の間に隔たりができるきっかけとなっていくことがあります。
NGワード5:不安を煽る言葉
口うるさい親が言いがちなNGワードの五つ目は「保育園は楽しい?」「いじめっ子はいない?」「先生に怒られていない?」など、子どもの不安を煽る言葉。親は、子どものことが心配で尋ねるのですが、何度も言われると、「いじめっ子に、いじめられたらどうしよう」「先生って怖いんだ」と、かえって子どもは不安になることがあるでしょう。
家庭で気持ちが休まらない、口うるさい親の子ども
どれも子育てに熱心な親が、よく口にする言葉で、普通の家庭でもよく言われていることでしょう。一つ一つを取れば、子どものしつけを促したり、教育的なメッセージになります。ただこれらを常に繰り返し、口うるさく言われ続けると、考える機会が奪われ、自分のペースや思考、感情を否定されていると感じるようになるでしょう。いわゆる「口うるさい親」に育てられた子どもは、家庭で気持ちが休まることがなく、矢継ぎ早に来る言葉に精神的に追い詰められ、それから逃れることばかり考えるようになります。
そのため思春期になると、その反動で親に激しく反発したり、反対に自分のやりたいことを見いだせなく、無気力になることがあるのです。
子育てに熱心な口うるさい親が心がけたいこと
親に口うるさく言われ、大人になっても影響し、親の言葉に精神的に縛られていると思う人もいれば、社会に出て「あの時、親に口うるさく言われたことが今、役に立っている」「今になれば、口うるさかった親の気持ちが分かる」などの声も、時には聞きます。確かに口うるさく言う程度に差はあるでしょう。ですがこの違いは、どこにあるのでしょうか。それは子どもの性格や、各家庭それぞれの背景があり、一概には言えませんが、一つだけ、はっきり言える違いがあります。
口うるさく言って、子どもに悪影響を与える親は、「私は子育て熱心な、良い親」「私はしつけの行きとどいた子どもの親」と、自分を主体に考え、感情的に言っていることが多いです。
「子どものため」と自分では思っていても、実は自分を納得させようとしていたり、「良い親にならなければ」「優秀な子どもの親でありたい」という気持ちが隠されていることがあります。 それに対して、後に子どもに感謝される口うるさい親は、「子どもの立場」「子どもの目線」を考えて言っています。今、子どもはどのような状況でいるか、どのような立場に立っているか、どのような目線から、その物事を見ているか、など感じ取って、冷静に子どもに言っています。
子どもの目線を意識することで、自ずから繰り返し言う言葉の回数や内容、前後の対応が違ってくるでしょう。
子どもは、親のその微妙な違いを敏感に感じ取るものです。もし今、自分が口うるさい親では?と思えば、将来「親が口うるさく言ってくれたおかげで、今の自分がある」と子どもが思うよう、ぜひ、子どもの気持ちにどれだけ寄り添っているか、振り返ってみてください。
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