世界的な問題となっている海洋プラスチックごみ

近年、世界中で問題となっているのが「海洋プラスチックごみ」。すでに1億5,000万トンのプラスチックごみが海に流出しており、なおかつ毎年800万トンが新たに流出していると言われています。

世界で一番深い海といわれるマリアナ海溝でもプラスチックごみが見つかっており、このままでは2050年には魚の数よりもプラスチックごみの量のほうが多くなるとの予測も。実際に僕もスキューバダイビングで海の中を潜っていると、いたる所でさまざまなごみが沈んでいるのを見かけます。
 
海洋プラスチックごみは“アップサイクル”の時代へ

ビニール袋やペットボトルなど、さまざまなごみが海の中には沈んでいます
 

海洋プラスチックごみが問題なのは、海の景観を損ねるだけでなく、海洋生物が拘束されたり、エサと間違えて食べてしまうことでダメージを負ってしまうということ。また、プラスチックは極めて丈夫なため、何百年、何千年も分解されずに残ってしまうと言われています。

それらが波や紫外線などによって微細化され、5mm以下となったものは「マイクロプラスチック」と呼ばれ、その有害性がクローズアップされてきています。

 

ごみを出さない取り組みは進んでいるが・・・

こうした状況に対し、国レベルでもさまざまな取り組みが行われており、日本でも環境省が「プラスチック・スマート」キャンペーンを2018年にスタート。「ポイ捨て撲滅」を徹底したうえで、「代替素材の開発・活用」や「不必要なワンウェイのプラスチックの排出抑制」「分別回収の徹底」などの“プラスチックとの賢い付き合い方”を全国的に推進しています。

また、7月1日からはレジ袋有料化も始まっており、プラスチックごみを出さないための取り組みは今後もますます増えていきそうです。

ただし、一方で「すでに海に沈んでしまっているごみをどうするか」という視点での取り組みはまだまだ少ないように感じています。もちろん、これからプラスチックごみを出さないようにすることは非常に大切ですが、前述したとおり、膨大なプラスチックごみがすでに海に出てしまっているのです。
 
すでに多くのプラスチックごみが海の底に

すでに多くのプラスチックごみが海の底に


僕も海を愛するダイバーとして、海に潜ったときには沈んでいるごみを拾うようにしており、「1 Dive 1 Cleanupプロジェクト」に携わったり、いくつかのエリアで海中クリーンアップイベントなどにも参加していますが、問題となるのが「ごみの処理」。海中に沈んでいるごみには、泥や砂、ときには海岸生物が付着しており、そのままでは一般ごみ(一般廃棄物)として出すことができず、「産業廃棄物」として有料で処理してもらわなければならないことも(※自治体によります)。

それがネックとなって、なかなかごみ拾いに積極的になれないという実情もあるようで、海洋プラスチックごみ問題の解決にあたっては「すでに出てしまっているごみをいかに回収しやすくするか」という視点も必要ではないかと思っています。

 

ごみが“アップサイクル”で素敵な商品に

そんななかで出会ったのが、海洋プラスチックごみで作られたエコバッグなどの「アップサイクル」製品。「アップサイクル」とは、リサイクルやリユースとは異なり、本来であれば捨てられるはずの廃棄物にアイディアを加え、新たに価値の高いものを生み出すという考え方で、持続可能(サスティナブル)なものづくりの新たな方法論のひとつと言われています。
 
例えば、スポーツ用品メーカーの「adidas(アディダス)」は、環境組織「Parley For The Oceans」と協同し、海岸や海沿いの地域で回収されたプラスチックごみをアップサイクルしてスポーツウェアに作り変える取り組みを始めており、2024年までに未使用プラスチックの代わりに100%リサイクルポリエステルを製品に使用することを目指しているとのこと。
 
最近、僕が愛用しているのが、adidas とParley for the Oceansとのコラボレーション5周年を記念してリリースされたランニングシューズ「ウルトラブースト DNA PARLEY」。履き心地も抜群です。

最近、僕が愛用しているのが、adidas とParley for the Oceansとのコラボレーション5周年を記念してリリースされたランニングシューズ「ウルトラブースト DNA PARLEY」。履き心地も抜群です。


また、コスメショップ「Cosme Kitchen(コスメキッチン)」では、海洋プラスチックゴミから生み出される100%リサイクルポリエステルを使ったエコバッグ「SUSTAINABAG」を販売。世界最大のスキューバダイビングの教育機関PADIではRash’Rとともに、新型コロナウイルス対策としてのマスクを海洋プラスチックごみで作り、「健康も海も守る」として注目されるなど、さまざまな企業・団体が海洋プラスチックごみのアップサイクル製品を生み出してきています。
 
海洋プラスチックごみから作られた、Cosme Kitchen(コスメキッチン)の「SUSTAINABAG」。レジ袋有料化により、さらに注目されているエコバッグですが、環境に良いものを使いたいですね。

海洋プラスチックごみから作られた、Cosme Kitchen(コスメキッチン)の「SUSTAINABAG」。レジ袋有料化により、さらに注目されているエコバッグですが、環境に良いものを使いたいですね。


こうした流れの背景には、これまでは海洋プラスチックごみをリサイクルする設備が複雑で高価なため、限られた企業などしか手に入れることができず、ハードルが高かったということがあります。

しかし、2013年にオンラインコミュニティ「プレシャス・プラスチック」が立ち上げられ、プラスチックごみをリサイクルするためのノウハウが無料で提供されるなど、小規模でのリサイクルも世界的に広まりつつあります。

今後、海洋プラスチックごみをアップサイクルした製品がますます増えていきそうで楽しみです。
 

サスティナブルな社会を目指して

海洋プラスチックごみは“アップサイクル”の時代へ

美しい海を後世に残すために、アップサイクル製品を選ぶという選択をぜひ
 

海洋プラスチックごみが素敵な製品に生まれ変わるというアップサイクル。直接的に海の中のプラスチックごみを拾うことはできなくても、消費者として“賢い選択”をし、こういった製品を使えば使うほど、海洋プラスチックごみを減らすことにつながっていくはずです。

また、こうした動きが進めば、もはや海洋プラスチックごみは「ごみ」ではなく、立派な「資源」として考えることができ、その回収に積極的に取り組む動きも高まってくるでしょう。美しく健康的な海をいつまでも残すために、自分たちにできることから少しずつ取り組んでいきませんか?


 
 
 

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