早期退職して、夫婦で登山を楽しむことは可能ですか?

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回のご相談者は、夫のリタイア時期に悩むパートで働く54歳、女性の方。夫の仕事は肉体的にもハードなため、早期リタイアして夫婦で趣味を楽しみたいという希望があるが、資金的に不安な面も……。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。※マネープランクリニックに相談したい方はコチラのリンクからご応募ください(相談は無料です)

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早期リタイアして夫婦で趣味の登山を楽しみたい

早期リタイアして夫婦で趣味の登山を楽しみたい


■相談者
三毛猫さん(仮名)
女性/パート・アルバイト/54歳
中部/持ち家・一戸建て
 
■家族構成
夫(会社員/56歳)、長男(独立)
 
■相談内容
主人は現在夜間のドライバーです。タクシーは歩合制のため貯金は多めにしているつもりです(今回の新型コロナのような災害、病気等に備えて)。最近、長時間勤務が辛そうですし、大好きな登山に行けないので、貯金もある程度できたので、早期退職をしてライフスタイルを変えたいと思っていますが可能でしょうか。二人とも登山好きなので、主人が早期退職できれば国内、海外の山を存分に歩きたいと思います。

主人は60歳まで働く意思があるようですが、家計に影響がなければ、自分の小遣い(5万円くらい)だけ稼ぐスタイルに、また、働かなくても済むのなら、働きたくないようです。また、私はパートで働いていますが、去年から駐車場収入が入るようになり今年から扶養を外されるようです。今のままの働き方にしたいのですが、扶養を外されると勤務時間を増やして会社にお願いして厚生年金、健康保険をかけてもらった方がよいのか。それとも、自分で国民年金、国民健康保険をかけて今までどおり自由に働いた方がよいのか悩んでいます。私自身は雇ってもらえるうちは働きます。それと、貯金はこのままのスタイルでよいのか。普通預金が多すぎるように思います。
 
■家計収支データ
相談者「猫のミー」さんの家計収支データ

相談者「三毛猫」さんの家計収支データ





■家計収支データ補足
(1)ボーナスの使い途
クルマの保険(2台分)5万円、固定資産税9万円、旅行・レジャー費5万5000円、その他出費30万円
 
(2)加入保険の保障内容
・夫/共済(65歳まで、病気死亡400万円、入院1万5000円、三大疾病特約)=毎月の保険料8000円※60歳以降、保障減額
・妻/共済1(病気死亡450万円、入院5000円)=毎月の保険料1800円※65歳以降、保障減額
・妻/共済2(終身タイプ、入院5000円、その他手術特約など)=毎月の保険料3000円
 
(3)今後想定される大きな支出
クルマの買い替えに予算300万円(2台分。ただし、今後は所有1台にする予定)
自宅の塗装などの修繕に200万円。温水器50万円など。
 
(4)公的年金の支給額
夫婦合わせて20万円。妻だけなら8万3000円。
 
(5)新型コロナウイルスの影響
夫は出勤数減少により35万円から25万円に減収。とりわけ夜間営業がきびしく先月より1ヵ月間休職(補償なし)。
 
■FP深野康彦の3つのアドバイス
アドバイス1 現状、老後資金は「安心」とは言い切れない
アドバイス2 夫を妻の扶養に切り替える
アドバイス3 貯蓄の取り崩し分をきっちり設定、確認していく
 

アドバイス1 現状、老後資金は「安心」とは言い切れない

ともあれ、試算をしてみましょう。
ご主人が現時点で、夜間のタクシードライバーの仕事を辞めて、65歳まで体に負担のない程度に月5万円ほどの収入を得られるアルバイトをするとします。世帯収入は三毛猫さんのパート収入6万円と駐車場収入(経費を除いた利益部分のみ)8万6000円ですから、年間235万円。
 
一方、支出ですが、生活水準が今と変わらないとすると、月25万6000円にボーナスの支出分(ほぼ支給額の全額)を加算して、およそ367万円。年間の不足額は132万円となります。ご主人が65歳になるまでの9年間で計1180万円。これを貯蓄から取り崩すと、手元に残る資金(投資商品の変動は考慮せず)は2820万円。さらに、ご夫婦の60歳までの国民年金保険料、挙げていただいた想定されるまとまった支出(クルマの買い替え、自宅の修繕等)を差し引くと、およそ1910万円。これがいわゆる老後資金です。
 
三毛猫さんもパートを65歳まで続けるとすると、ご夫婦とも公的年金が支給されるまでの2年間(ご主人65~67歳)で、貯蓄=老後資金の取り崩しは140万円ほど。その後は、駐車場収入が継続的にあるとすれば、世帯収入は26万円程度(年金から税、社会保険料を差し引く)。年間の不足額は70万円ほどになりますが、おそらくクルマを1台手放すことと、保険料(夫・共済)が減額になることで、実際は50万円程度に下がるはすです。
 
そうなると、三毛猫さんが90歳までの25年間で、老後資金は1250万円減り、520万円ほどに。100歳までの35 年間なら数十万円ほどということになる可能性があります。もちろん、80代、90代で今ほどレジャー費や小遣いが必要とは思えませんので、実際はもっと減り方は緩やかでしょうが、予備費の必要性(医療・介護費用、その他、不定期支出)を考えれば「まったく安心」とは言い切れないという試算結果になります。
 

アドバイス2 夫を妻の扶養に切り替える

先の試算を踏まえた上で、今後のライフプランを実現するためのポイントを考えてみます。
 
まず収入面ですが、何とはともあれ健康が第一ですから、ご主人には今の仕事を辞めてもらうとしても、その後、しばらくはアルバイト等で収入を得ることが重要だということは、先の試算のとおりです。仮に、現状すぐにフルリタイアとなると、無年金、無収入期間が9年間となり、ざっと500万円超、余分に貯蓄を取り崩すことになります。月5万円程度の収入なら少なくとも65歳までは働くことが、ライフプラン実現の条件のひとつと言えます。
 
三毛猫さんの働き方については、扶養を外れても構いません。さらに、もし勤務先で今より勤務時間を増やし、厚生年金や健康保険への加入も可能なら、それはぜひ実現したいところ。収入アップも大きいですが、公的年金の支給額がアップします。また、扶養については逆にご主人を自分の扶養に入れればいいので、そこは問題視する必要はないでしょう。そうすれば、ご夫婦の国民年金や健康保険料の家計からの負担がなくなるので支出もぐっと抑えられるはずです。
 

アドバイス3 貯蓄の取り崩し分をきっちり設定、確認していく

次に、支出です。見直し効果が高いのはやはり保険。しかも、貯蓄額や家族構成から見て、あえて保障を確保する必要はありません。つまり、現時点では保険は不要、解約してもいいということです。ただし、保障が何もないと不安というのであれば、三毛猫さんは月1800円の共済のみ、ご主人も同じ共済に入り直す。それでも月1万円ほど保険料コストが浮くはずです。
 
あとは通信費でしょうか。プランを見直すなどして下げる工夫をしてみてください。
 
それと、早期リタイアの目的にもつながりますが、夫婦での登山、レジャーについてはしっかり年間予算を組んでほしいと思います。現在、趣味娯楽費が月5万円でボーナスからのレジャー費が5万5000円ですから、年間65万円ほど。これが多いか少ないかは、ご夫婦の働き方等で変わってきますが、例えば、来年海外でかなり使うのであれば、今年は抑えるといったプラン、意識は不可欠だと思います。そして、他の生活費と合わせて、年間どのくらい貯蓄=老後資金を取り崩すことになるのかといったことを毎年きっちり設定し、確認する作業が重要です。
 
ともあれ、50代半ばで住宅ローンは完済、金融資産が4000万円は立派です。そのことは自信にされていいですし、老後を必要以上に不安視したり、無理な節約をする必要もありません。今からしっかりと家計管理をし、自分たちが望む生活、その優先順位を明確にすれば、ご主人が早期リタイア(セミリタイア)しても、ご夫婦で好きな登山が大いに楽しめると思います。
 
最後に貯蓄について。普通預金が多いことを気にする必要はありません。今後は、貯めるのではなく、そこから取り崩す生活に移っていきます。かえって流動性の高い、つまりいつでも引き出せる普通預金の方が使い勝手がいいはずです。しいて言えば、当分使わない部分については、多少利回りのいいネット定期(ネット専業銀行や地方の金融機関のネット支店)の「1年もの」に預け替える程度で十分と考えてください。
 

相談者「三毛猫」さんより寄せられた感想

深野先生ありがとうございました。もう少し、身体に負担のないよう勤務時間を減らして、年金受給まで夫婦二人でセミリタイアを目指してみます。これからは、健康と時間が一番の財産ですので。保険料と通信費の見直しは意外でした。もう一度検討してみます。この機会に、資産、ライフプランの見直しができ、夫婦で話し合えてよかったです。お世話になりました。
 

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教えてくれたのは……
深野 康彦さん
 
 

 


マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。近著に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など

取材・文/清水京武


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