長引く休校と外出自粛により中高生の妊娠が増加している?
学校という「逃げ場」がなくなり、家庭に居場所のない女の子たちが街で性的な被害や搾取にあっています。
熊本県で「赤ちゃんポスト」を運営する慈恵病院の妊娠相談窓口に寄せられた今年4月の中高生からの相談は、過去最多の75件だったそうです。これは昨年同月(58件)の129%、一昨年同月(52件)の144%とのことです。(引用:朝日新聞)
その背景には、新型コロナによるDVや虐待の増加があると考えられます。
厚生労働省は、学校等の休業や外出自粛が継続する中で、子どもの見守り機会が減少し、児童虐待のリスクが高まっていると懸念しています。今後も地域によってはこうした状況が続くことが見込まれるとして、4月27日、これまでの取り組みに加え、様々な地域ネットワークを総動員して児童虐待の早期発見・早期対応につなげる「子どもの見守り強化アクションプラン」を実施しました。
実際に、今、福祉の相談窓口ではDVや虐待の相談が急増しています。休業による経済的な不安や外出自粛のストレスにより、DVが始まったりエスカレートしたりといった相談です。家庭という密室の中で、暴力はより弱い者へと向かいます。家族の中で一番弱い立場である子どもは、ストレスの標的にされやすくなります。
孤立し、妊娠におびえる女の子たち
たとえば、こんな相談が寄せられます(※ プライバシー保護のため修正・加工しています)。A子さん(高2):「中学生の頃から、父親にレイプされていました。新型コロナで父がテレワークになりました。母はパートに出ているので、昼間は父とふたりきりです。毎日のようにレイプされ、今朝、妊娠検査薬で妊娠がわかりました。助けて」
B子さん(中3):「父の会社が休業になり、父は朝からお酒を飲んで暴れるようになりました。家出したけど行くところがなくて、SNSで知り合った男の人のところに泊めてもらっています。昨日『宿代だ』と言って、むりやりセックスされました。避妊はしてもらえませんでした。妊娠したかも。どうしよう」
長引く休校や外出自粛によって、教師も周囲の大人たちも、子どもたちのS.O.S.を受け取ることが難しくなりました。そんな中、家から出られずエスカレートした性虐待に耐える子、家を飛び出したもののお金がなくて性的に搾取されたり、性犯罪に巻き込まれたりと、行き場のない女の子たちの妊娠が増加しています。
今、すべての女の子に伝えたいこと
伝えたいことは3つあります。■1■
女の子たちにまず伝えたいのは「あなたが望まない性行為は、全て性暴力」だということです。
「性的合意」という言葉があります。キスやセックスなど、性的なことをする前には、必ず相手の意思を確認する必要があるということです。あなたが彼を大好きでも、触れ合いたいと思っていない時に無理やりされる性的な行為は、全て性暴力です。あなたが妊娠を望んでいないのにコンドームをつけずに行うセックスも性暴力です(ちなみに、膣外射精は避妊ではありません)。
「食事をおごってもらったから」「泊めてもらったから」と、仕方なく相手の求めに応じなくていい。「いやだ」と言っていいのです。あなたがお金を持っていなかったとしても、あなたの身体を、食事や宿泊の対価として提供しなくていいのです。「性的合意」についてのガイドブックや、YouTube動画もありますので、見てみてください。
■2■
次に伝えたいのは、「相談できるところがある」ということです。
「bondプロジェクト」や「Colabo」では、中高生世代を中心とした10~20代の女の子たちの相談に乗り、衣食住の支援もしています。18歳までの子どもが利用できる「チャイルドライン」でも電話で相談ができます。
電話やメール、SNSなどで24時間相談できる、無料の相談窓口「よりそいホットライン」では、DVや性暴力などの女性の相談に対応する「女性支援専門ライン」があります。0120-279-338 に電話して、ガイダンスが流れたら「3」を押すと、女性支援専門ラインにつながります。「これって、性暴力なのかな?」「DVといえるのかな?」といった相談でも大丈夫です。
また、各都道府県に、性犯罪・性暴力に関する相談窓口「ワンストップセンター」が設置されています。産婦人科医療やカウンセリング、法律相談などの専門機関とも連携しているため、自分に起きた出来事を何度も説明しなくても適切な支援につなげてもらえます。
「189」に電話すると、最寄りの児童相談所につながります。身の危険を感じたときは警察「110」に通報しましょう。
私たち大人の多くは、あなたの力になりたいと願っています。でも、外から見ただけではあなたが悩んでいることはわかりません。だから、少しだけ勇気を出して相談してみてください。あなたのことを話してみてください。
■3■
最後に伝えたいのは、「セックス後72時間以内に服用すれば妊娠を防げる薬がある」ということです。
処方してくれる病院は全国にあります。保険適用外なので、病院や処方される薬により費用は違いますが、1~2万円くらいです。72時間を過ぎても、5日以内なら相応の効果があるともいわれていますが、遅くなればなるほど効果は低くなるので、少しでも早く服用することが大切です。
ホルモンに働きかける薬なので副作用もありますが、妊娠するよりははるかにマシですよね。妊娠は、あなたの人生を大きく変えてしまう出来事ですから。
そんなお金がない、親に知られたくない、という人は、上に書いた相談窓口に相談してみましょう。
周りの大人たちへ
外出自粛中にも関わらず外を出歩いている若者に、眉をひそめた人は多かったと思います。もちろん、軽率な若者もいたでしょう。けれど、彼ら彼女らの中には、家の中が安全ではなく、行き場を失った子どもたちが少なからず含まれていました。思春期から青年期は、大人に反発することで「自分自身」を作り上げる時期です。そのため、親にも(親だからこそ)なかなか心を開いてくれません。
でもそれは、かつての私たちの姿でもありますよね。
「もしかしたら、何か事情があるのかも」という想像力を持つことが、子どもたちとの距離を縮めてくれるのだと思います。もし、S.O.S.を受け取ったら、「力になりたい」と伝えてください。身近に支えてくれる大人がいるというのは、心強いことです。そして、上記の相談機関などの情報を伝えてあげてください。可能なら、相談場所までついていってあげてください。暴力の問題や家庭の問題は、関わり方が難しいものですので、ひとりで抱え込まず、専門家の支援につなぐことも大切です。
今年2020年は、性犯罪に関する刑法改正の見直しの年に当たります。「性的同意(暴行・脅迫要件の撤廃)」や「性交同意年齢(13歳)の引き上げ」などがポイントです。13歳といえば中学1~2年生ですが、今の法律では、13歳からは加害者からの「暴行・脅迫」を証明できなければ、性行為に「同意したとみなされる」ということです。
「YesはYes、NoはNo」というアニメーションは、性的同意をはじめ性犯罪の定義に関する問題点がわかりやすく整理されています。中高生の望まない妊娠を防ぐためにも、問題意識を共有し、社会の仕組みを変えていきましょう。
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