休校2ヶ月で、ストレスは新たなフェーズへ
新型コロナウイルスの感染拡大のため、子どもたちの休校も2ヶ月が過ぎようとしています。生活の大きな変化によるストレスも、新たなフェーズに入ってきました。感染への不安と、先の見えない不安の中、自粛生活でのストレスも変化してきました。
仕方がないとわかってはいるけれど……
心配なのは子どもの学習の遅れです。突然の休校により、昨年度の3学期の単元は積み残しとなりました。新学期に入ってから補おうにも、休校延長により授業時間の確保の難しさは明らかです。新しい単元を誰からも教わることなく、教科書を見て理解し、与えられた課題をこつこつとこなしていくのは、子どもたちにとっては難しいことでしょう。親が教えられればいいですが、それも限界があります。オンライン授業が始まった学校や塾もありますが、不十分さは否めません。
そうした子どもの状況をわかっているし、外出もままならず家族としか話さない生活を強いられている子どもに対して「かわいそう」という気持ちもあります。だから、ネットもゲームも「やむを得ない」と見て見ぬフリをしてきたけれど、「いい加減、勉強したら⁈」と言いたくなるのも親心。
今の時期、親は子どもにどのように接すればよいのでしょうか。
家庭の居心地が優先
今、子どもたちには逃げ場がありません。大人は、仕事や買い物などで堂々と外に出ることもできますが、子どもはそうもいきません。自粛中にパチンコやナイトクラブに行く大人たちより、子どもたちはずっとずっと頑張っています。なので、色々気にかかることはあったとしても、まずは居心地のよい家であることを優先しましょう。一緒にいる時間が長くなった分、小言も増えてはいるでしょう。でも、不穏な空気を「長引かせない」ことは、お互いの精神衛生のために大切です。
家族が気持ちよく一緒に過ごすために、自分はどんな努力ができるか皆で話し合ってもいいですね。「トイレ掃除は僕がする」「ママはガミガミ言わないようにする」などなど、それぞれが自分の努力目標を具体的にあげてみましょう。
子どもの「不安」を理解する
心に留めておきたいのは「子どもも不安」ということです。私たちは今「歴史の教科書に載るような事態」を当事者として経験しています。高校野球がなくなり、インターハイもなくなりました。オリンピックもどうなるかわかりません。お祭りも軒並み中止となりました。テレビドラマは延期され、バラエティ番組もオンライン収録が増えました。いつもどこかのチャンネルで新型コロナウイルスが話題にのぼっていて、感染者の増加や亡くなった有名人のニュースがひっきりなしに流れます。
大人たちの不安は子どもにも伝わります。学校はいつ再開されるかわからない。平日の昼間に親が在宅している。自分や家族の未来はいったいどうなるのだろう、という不安を抱えている子どもも少なくないでしょう。「将来のために勉強しなさい」と言われても、なかなか身が入らないのは当然と言えば当然です。
なので、「コロナが終わったら、何したい?」と聞いてみましょう。「友だちに会いたい」「遊園地に行きたい」「ステーキを食べに行きたい」「おばあちゃんに会いに行きたい」「ショッピングモールに行きたい」「学校に行きたい」「カラオケに行きたい」「仲間とスポーツをしたい」「飛行機に乗りたい」「電車に乗ってお出かけしたい」などなど、色々出てくることでしょう。
「不要不急」の中に、生活の豊かさがあったことをしみじみ感じます。子どもが挙げた答えは、その子が大切に思っていた時間です。こうして失ってみなければ、日常に埋もれていたことかもしれません。私たち大人も、制限された生活の中で「自分は何をしたいのか」「これからどう生きていきたいのか」を自分に問う時間を得ています。
「有事」には、DVや虐待が増える
在宅ワークや休業の増加に伴って、夫婦関係や家族関係がギクシャクしはじめた家庭も多くなりました。東日本大震災の時もそうでしたが、「家族」がクローズアップされる時、DVや虐待は深刻化します。「絆」は「鎖」でもあるからです。外出自粛が求められる中、家庭は密室化が進み、DVも虐待も外から見えにくくなりました。国連機関やWHOも、外出自粛が始まった早い時期に、DV増加の危険性を指摘し、被害者対応を強化するよう各国に呼びかけていました。日本でも、被害者支援団体である全国女性シェルターネットが、DV・児童虐待防止のための要望書を政府に提出し、それらを受けて、相談体制の拡充やコロナ給付金受け取りの際のDV被害者への配慮などについて対策が進んでいるところです。
子どもに対するイライラが、本当は夫(妻)に対しての不満が形を変えたものであることは少なくありません。暴力や攻撃性は、自分より弱いものに向かいがちだからです。「子どもに対して強く当たってしまう」という悩みの背景にDVがあることは珍しくありません。
こうした「有事」の際には、色々な問題が表面化します。現に、コロナの給付金をめぐって「経済的DV」で困窮した女性たちの「世帯単位の給付であるため、世帯主の夫が全員分を独り占めするのは目に見えている。個別給付にならないか」といった悲鳴のような相談が急増しています。
支援団体からの要望を受け、既に避難している方は、DVの証明書があれば個別給付の申請ができることになりました。同居の場合も被害者が給付を受けられるよう支援団体からの要望は出されていますが、ひとりひとりが直接政府に声を届けて、最も必要としている人たちに支援が届かない現状を変えていきましょう。
また、外出自粛や休業によるDVの増加や深刻化が懸念されることから、4月20日、内閣府男女共同参画局は、従来の「DV相談ナビ(0570-0-55210)」に加え、「DV相談+(プラス)」を開設しました。電話相談(0120-279-889)のほかに、メールやSNS(チャット)での相談も受け付けています。子どもに関する相談も大丈夫です。
これらの相談を通じて専門家とつながり、より良い人生に変えていくきっかけにしていきましょう。
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