目の病気

「目からも感染する」って本当?眼科医が考える新型コロナウイルス対策

【眼科医が解説】「新型コロナウイルスは目からも感染する」という情報に、多くの方が不安を感じていると思います。私は眼科専門医ですが、ウイルス性の目の病気も多いため、院内感染対策は常に徹底しています。目からウイルスが侵入する可能性は理論的にはゼロではありませんが、日常生活で神経質になる必要はないでしょう。今回は「目からのウイルス感染」の真偽について考察してみます。

大高 功

執筆者:大高 功

眼科医 / 目の病気ガイド

「新型コロナウイルスは目から感染する」というのは本当か

目を守るフェイスシールド

新型コロナウイルスは目からも感染する? 医療者はフェイスシールドなどをつけている姿もありますが、一般人にはどこまで必要なのでしょうか

新型コロナウイルスの有効な予防法として、手洗いの徹底や人ごみを避けることなどが挙げられますが、「新型コロナは目からも感染する」という話の真偽は、多くの方が気になっているのではないでしょうか。これについては実はまだ科学的根拠としてはっきりしたことが言い切れないのですが、日常生活を送る上で、そのような感染は「ほぼない」と考えてよいのではないかと思います。

より正確に言うと、「目からは感染しないか、するとしても無視できるレベル」です。今回は科学的根拠がまだ十分ではないことを先にお伝えした上で、眼科医としての知識と経験からの考察を述べさせていただきたいと思います。
 

目からのウイルス侵入リスク、理論的にはゼロではないが……

目から体内にウイルスが感染する可能性については、目の基本的な構造を簡単に理解しておくと、わかりやすいかもしれません。目の表面は粘液で覆われているため、目の表面からウイルスが体内に直接吸収されるという可能性は、非常に少ないと思います。

しかし目の表面にある物質は、「鼻涙管」という管を通って鼻に行きます。泣くと涙だけでなく鼻水も出てくるのは、涙が鼻涙管を通って鼻に行ってしまうからですね。そして、鼻はのどにつながっています。このように構造を考えると、目の表面とのどはつながっていると言えますので、大量のコロナウイルスが目の表面に付着した場合、そこからウイルスがのどの方まで行ってしまうという可能性も、完全に否定することはできません。しかし、目の前で話している感染者の唾液が目に直接噴射されるレベルの量でないと、そこまで行くことは通常ないでしょう。普通の生活でそこまで神経質に目を保護する必要はないのではないでしょうし、私の場合は普段から度の入っていない眼鏡をかけていますが、それだけでもかなり防御できるレベルかと思います。

これまでもインフルエンザウイルスが目から感染したという話は聞いたことがありません。インフルエンザのシーズンになると、内科や耳鼻科はどこも混雑し、先生は毎日非常に多くの患者さんを診察なさっています。多くの先生は特に目を保護するわけでもなく、マスク一枚で患者さんの喉の奥の状態を診るために、口にかなり目を近づけて診察をされていますが、耳鼻科医や内科医がマスクをしているのに、目からの感染でどんどんインフルエンザになっているという事実はないでしょう。

新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスは動きが似ているでしょうから、この点も、普通の生活をしている限りは、目に関してはウイルス対策に神経質にならなくても良いのではないか、と私が考える理由の一つです。
 

最前線の医療者が保護用メガネをつけている理由

ではなぜ報道などで見る、新型コロナの最善性にいる医療者は、保護用メガネをしているのでしょうか。それは、最前線で治療にあたられている医療者は、日常生活でのリスクとは全く違うレベルで大量のウイルスの危険にさらされているからです。外来はもちろん、入院されている新型コロナの患者さんが咳き込むと、大量の新型コロナウイルスが近距離で高速で目に飛び込んできます。しかも診る患者さんは一人二人ではありません。これらをしっかり防ぐためには、保護用メガネをしっかりかけ、リスクを最小に抑え込む必要があります。シールドまでできれば完璧です。

もし、一般の方で、それでもどうしても目も保護しないと安心できないという場合は、ホームセンターなどでも購入できる作業用の保護用メガネがよいでしょう。医療用の物資の不足なども心配されていますので、無理に医療用のシールドなどを探す必要は全くありません。薬局や眼鏡店、通販でも普通に買える花粉症用のメガネなどもおすすめです。白内障術後に患者さんに渡している眼鏡はとても良いのですが、ウイルス感染のリスクの程度とその予防の点で考えるならば、保護用メガネだけでも十分すぎるほど防御効果があると考えます。
 

新型コロナと言えどウイルス…とにかく「鼻や喉に入れないこと」

私たち眼科医がウイルス性の結膜炎(以下「はやり目」)の感染対策としてやっていることは、「受付で、はやり目の可能性があるかをスタッフが正確に判断する」「はやり目の患者さんが触れたこところをアルコールで拭く」「はやり目の患者さんへの検査は極力控え、できるだけ早く帰ってもらう」「はやり目の患者さんを診たらすぐ手を洗う」「はやり目の患者さんに、私生活で、タオルの共用の禁止、手を洗うこと、目を触らないこと、触ったらすぐに手を洗うこと、お風呂やプールを共有しないこと、などをプリントなどで解説する」「いつのまにかウイルスが自分の手についているかもしれないので、自分の目をこすりたいときは、必ずティッシュなどを使う」などです。
 
ウイルスというものは、めんどくさいモノですが、案外わかりやすい動きをするモノでもあります。新型コロナもウイルスであることは間違いなく、とにかく鼻や喉に入れなければ感染しません。それを完璧に実行するのが難しいわけなんですが、「鼻や喉に入れなければ感染しない」ということがわかっているだけでも、すごいアドバンテージだと思いませんか? まだ正体不明な部分が多いとは言え、一番大事な、身を守る方法だけははっきりしているわけですから、地道にこれを実践できるような対策法を、一つ一つやっていくしかありません。
 
ともかくもみなさん、手洗いを頻繁に、マスクをして(マスクに関しては人にうつさないための効果が一番と思いますが、経験的には、普段からマスクをしているほうが、やはりインフルエンザなどにもかかりにくいと思います)、むやみに手を口や鼻に入れない、そして、三密を避けて、残念ですが今は人との接触をなるべく避けて……ということですね。どれも耳にタコができるほど聞いていることだと思いますが、間違いなく正確な方法だと思います。
 
新型コロナの感染拡大は簡単には終息しないでしょうが、遠からず新型コロナに有効な薬が開発されるはずです。そこまでくれば、今のインフルエンザとのお付き合いと同じようになるでしょう。とにかく今は、みんなで引きこもり生活を頑張りましょうね!
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