人間関係

家に家族がいるのがストレス…「家族力」を高める大切なポイント3つ

【公認心理師が解説】在宅勤務や休校、外出自粛などで、毎日家に家族がいることが増えたご家庭も多いと思います。連日一緒にいるとお互いにストレスが溜まるもの。イライラを上手に解消し、家族力を高めるために大切な3つのポイントをご紹介します。

大美賀 直子

執筆者:大美賀 直子

公認心理師・産業カウンセラー /ストレス ガイド

毎日家に家族がいる……家族との時間がストレスに?

家に家族がいるのがストレス

家族みんなが毎日家に……お互いストレスが溜まっていないでしょうか?

新型コロナの緊急事態宣言発令により、在宅ワークの推進や休校延長、外出自粛の強化が求められています。両親と子どもたちが、平日も含め、毎日一緒に過ごすことになったご家庭も多いのではないでしょうか。
 
こうしたなか、お互いにイライラが募り、険悪ムードになってしまう家族もあるでしょう。逆に子どもが「昼間のパパ/ママ」の働きぶりを垣間見て親を見直したり、だんらんが増えてコミュニケーションが進む家族もあるかもしれません。今回は、非常時に試される「家族力」についてお話ししたいと思います。
   

一緒の時間が増えてストレス増? 家族のイライラの原因は

大事な家族でも、普段は自然と、適度な距離を保っているものです。それが突然、一つ屋根の下で連日過ごすことになると、お互いの嫌なところが目につきやすくなり、どうしてもイライラした気持ちが涌いてしまいます。家族それぞれが抱えやすいストレスの例を挙げてみましょう。

■妻→夫への在宅ストレス
  • 在宅ワークで時間のゆとりがありそうなのに、家事や育児を全く手伝わない
  • 「料理がまずい」「家事のやり方が雑」などと家のことに口を出す
  • 「休憩」と言っては、平日の昼間からソファで寝そべる姿に幻滅
■夫→妻への在宅ストレス
  • 在宅ワークは休みではないのだから、仕事の邪魔をしないでほしい
  • 妻はイライラ、子どもはギャーギャーで一日中落ち着かない
  • 顔を合わせると用事を言いつけられるので、休憩中も安らげない
■親→子への在宅ストレス
  • 一日中話しかけてくるので疲れる。適当に返事をするとキレる
  • 勉強もせずにゲーム三昧。生活習慣の乱れも心配
  • とにかく言うことを聞かない。感染予防への関心も薄くて不安になる
■子→親への在宅ストレス
  • いつもイライラして叱ってばかり
  • 分かっているのに、何度も同じことを注意してくる
  • 話し相手が親しかいなくて、正直、家にいるのには飽きた……
■その他の在宅ストレス
  • 調理担当者(多くのケースで母親)は、1日3食の準備が負担
  • 家が狭い場合は「家庭内人口密度」が上がり、物理的にも窮屈
  • とにかくいつも誰かがしゃべっているのでうるさい
いずれも本当にちょっとしたことなのですが、連日これらのイライラを感じ続けると、大きなストレスになってしまいます。
 

今問われる「家族力」……イライラ軽減に有効な3ポイント

それぞれがストレスを感じるのは仕方のないことですが、これらの思いをそのままぶつけあうと、お互いを傷つけて家庭内の雰囲気が最悪になってしまいます。関係が悪化すると会話もなくなり、家庭崩壊に向かってしまうかもしれません。
 
こうした危機を避けるために有効な、3つの考え方のポイントをご紹介します。
 
1. リフレーミングで相手の欠点を長所に変える
同じ空間にずっと一緒にいると、どうしても相手の悪いところばかりが気になってしまうもの。「ずぼらでだらしない」「言い方が冷たい」というように。しかし、こうした欠点は長所でもあるはず。これを「リフレーミング」という方法で長所として捉えてみましょう。
 
たとえば、「ずぼらでだらしない」をリフレーミングすると「鈍感力がある」。つまり、細かいところを気にしないということ。ずぼらである分、家族の言動への気づきも鈍く、余計なことを言われずに済んでいないでしょうか?
 
「言い方が冷たい」をリフレーミングすると、「主張がはっきりしている」ということ。その言われ方に傷つくのは、そもそも言われていることが「図星」だからなのでは? つまり、直すべきことをはっきり教えてくれているということです。リフレーミングについて詳しく知りたい方は、「マイナスをプラスに変える「リフレーミング」の力!」をご覧ください。
 
2.「くれない族」にならない。「くれている」ことを見つける
家族にはどうしても要求が大きくなりがちです。そのため「手伝ってくれない」「分かってくれない」など、ついつい「してくれない」の言葉が頭に浮かんでしまうもの。「くれない」を多用する人々のことを「くれない族」と呼びます。
 
いくら「くれない」と嘆いても、相手が快くそれをしてくれるようにはなりません。それよりも、相手が「してくれている」ことにもっと目を向け、そのことに感謝の言葉を伝えてみましょう。レベルが低いと感じてもダメ出しをせず、「してくれる気持ち」に感謝を向けましょう。「ゴミ出ししてくれたのね。ありがとう」「洗濯しておいてくれてありがとう」というように、当たり前のことこそ、それを自らしてくれた気持ち感謝を向けます。すると、相手は優しい気持ちになり、「返報性の原理」で同じ優しさを返したくなります。「くれない族」について詳しく知りたい方は「くれない族とは…依存心や自己への不満などの心理」を、「返報性の原理」について詳しく知りたい方は「大人の仲直りに有効な「返報性の原理」をご覧ください。
 
3. 家族全員が楽しめる娯楽を探す
テレビをつけても、口を開いてもコロナの話題ばかり。これでは、家庭の空気が暗くなり、神経質になります。もちろん最新のニュースをチェックし、感染予防について話し合うことも大切ですが、その話題ばかりに偏らないようにすることも大切。そこで、家族全員が楽しめる娯楽を探してみましょう。
 
たとえば、コメディ映画を見て大笑いするのはお勧め。先日、わが家も家のリビングで邦画『翔んで埼玉』を家族全員で鑑賞しましたが、馬鹿馬鹿しすぎて全員思わず大笑い。一瞬でも笑いを共有できると、雰囲気とコミュニケーションが明るく変わります。また、トランプや手品など、一見地味なレジャーもみんなでやると楽しいもの。テレビもなかった昔の家庭では食事の後、みんなでこうしたレジャーを楽しんでいたのです。

非常時こそ、こうしたアナログな娯楽で家族の心が一つになりやすいものです。ただし、娯楽はあくまでも娯楽。お互いのやり方や結果を批評したり、ダメ出しをしたりしないこと。一緒に笑って楽しい雰囲気を共有することが大切です。
 

家族力を高めるために、「一人になりたい気持ち」も大切に

以上のように、今まさに家族へのイライラに悩んでいる方は、まずは家族に思いやりを向け、家族全員で明るい雰囲気を作れるように働きかけてみましょう。
 
とはいえやはり、たとえ家族といえども同じメンバーと四六時中同じ空間にいるのは疲れます。一人で散歩に出かけるなどして、お互いにパーソナルスペースをとることが大切です。ときには一人で車や自転車に乗り、自然が多く人の少ない場所に出かけて、ボーっとしてみるのもいいかもしれませんね。家族間で時間を調整し合い、それぞれが一人の時間を楽しめるようにしていきましょう。
 
同じ空間で過ごすときには家族を思いやり、そして一人になりたい自分自身も思いやることが、「家族力」を高める秘訣です。

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