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油断していると危ない!?「世界恐慌」に備えるマネー術

もし、日本の国債がデフォルトして紙くずになると、何が起こるのでしょうか?

午堂 登紀雄

執筆者:午堂 登紀雄

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日本の財政は持続不可能な領域に近づいている

私たちは日本で日本円を使って生活しているわけですが、そのお金の大半は、銀行預金になっていると思います。銀行はそのお金を使って日本国債を買っているので、私たちの預金は国債に化けているわけです。銀行内部には「国債」という有価証券はあっても、「現金」はほとんどありません。
 
そしてもし、日本の国債がデフォルトして紙くずになると、どうなるか? 国債を大量に保有する日本の金融機関は倒産し、銀行の窓口に行っても、自分の預金を引き出せないということになります。いくら一金融機関あたり1000万円までの預金保護という法律があっても、取り付け騒ぎになれば、お金を取り戻すことはもはや不可能です。
 

なぜ中央銀行による国債引受けが禁じられているのか?

日本の国債のほとんどは国内で消化されているから大丈夫、という論調もあります。しかし、いくら国内消化といえども、資金は無限ではありません。国民の個人金融資産が約1800兆円強に対し、すでに国債で1100兆円が使われていますから、残りは約700兆円。

毎年150兆円ずつ国債発行で使っていけば、計算上は5年で資金が底をつきます。(実際は企業部門もあって単純ではないですが……)
 
しかし、そういうギリギリの状況になるまで国債を持ち続ける金融機関はあるのか。日銀が国債を引き受ければいいと主張している人もいますが、それは無限にお札を刷ることができるということを意味します。

何の裏づけもなく、無限に供給される通貨を信用する人はいるのか。たとえば韓国ウォンや香港ドルが無制限にばらまかれるとしたら、あなたはそんな通貨を持ち、そんな国にお金を預けたいと思うでしょうか。日本人は信用しても、海外の金融機関や機関投資家が信用するとは限りません。
 
日銀が引き受けたとたんに円の信任は崩れ、売られるリスクにさらされます。だからこそ世界中の国で、中央銀行が国債を引き受けることを法律で禁止しているのです。これは長い歴史の中で世界が学んだ教訓です(ただし現在の日銀の金融緩和政策は、市中にある国債を買い戻しているので単純な引き受けではありません)。
 
ただ不安なのが、今の状況を見ていると政府には赤字国債の返済意思はなさそうな点です。通常、借金をしている人が新たに借金をするとき、生活を切り詰め、できるだけ借金を増やさないようにするはずです。しかし日本政府は、「足りない分は国債発行で賄う」体質が当たり前になっています。
国が破綻したらどなる?

国が破綻したらどなる?

 

国家破綻のシナリオ

膨張を続ける国債の引き受け手がいなくなったとき、あるいはメガバンクのひとつが国債の売却を始めたら、連鎖的に国債暴落が始まるかもしれません。金利は急上昇し、株価も大暴落。
 
その状況で、投資家が投機マネーをほうっておくはずはなく、格好のターゲットとして「日本売り」が進みます。売りが売りを呼び、暴落は加速します。国債を大量に抱える銀行は、国債暴落によってバランスシートが大きく毀損し、新規融資ができず、お金が回らなくなります。預金準備金も不足し、預金の引き出し制限がかかり、さらにパニックになるでしょう。
 
同時に、価値が目減りするであろう日本円を保有する人は減少するため、円が売られ、急激な円安になります。日本は多くを輸入で賄っていますから、円安になれば、生活必需品も含めてほとんどの製品の値段が上がります。
 
今80円で仕入れている燃料や食糧、原材料が、160円になれば2倍の円を払わなければならなくなります。給料が上がるわけではありませんから、1000万円持っていても、500万円の価値に目減りしてしまうということです。
 
国債の引き受け手がいなくなると国家運営ができませんから、日銀法を改正してでも日銀が国債を引き受け、どんどんお札を刷ることになります。すると、インフレになります。インフレが過度に進めばお札はゴミほどの価値になり、新円切り替えによりデノミをするかもしれません。

それは悪性インフレを誘発します。なぜなら、価値が切り下げられる通貨を受け取っても意味がないので、売り手は商品の値段を上げるからです。
 
しかし、日本は世界第3位の経済大国ですから、世界経済も金融も、リーマンショックのときとは比べ物にならないくらいの恐慌に陥るでしょう。IMF(国際通貨基金)が日本に緊急融資を行い、日本はIMFの管理下に置かれます。公務員の人員削減や給与カットも行われ、財閥や特殊法人の解体、公共事業の激減、増税や給付の削減など厳しい緊縮財政が敷かれるでしょう。

多くの企業は倒産、失業率は20%を超え、金利上昇とのダブルパンチで住宅ローン破綻者が続出。失業者が街に溢れ、治安は悪化……。
 
しかし、超円安によって、製造業を始めとした輸出産業が息を吹き返し始めます。さらに、株安・円安・債券安のトリプル安となれば、外国人投資家から見れば絶好のバーゲンセールです。
アメリカ、ロシア、中東、中国から、機関投資家だけではなく個人富裕層も含めて、日本を買いまくるようになるでしょう。

少しずつお金が動き始め、日本経済が回復していく。破壊と創造の名の通り、社会はいったん崩壊し、多くの国民が犠牲となり、そこから新生日本が始まる……。
 

起こるか起こらないかではなく、備えておくことが重要

これほどの事態が起こる可能性は限りなく低いとは思いますが、ゼロだとは言い切れません。実際、今から74年前の1946年、日本で起こったことなのですから。日本は敗戦による賠償金支払いと、戦費調達のために発行した国債の償還ができず、日銀による国債引受をさせました。

結果は誰もが予想したとおり、悪性のインフレが起こり、デフォルトに追い込まれました。政府は預金封鎖(引き出し制限)やデノミを行った結果、国民は文字通り路頭に迷い、生活は困窮を極めました。ちなみにIMFのシナリオは、お隣の韓国で、1997年に実際に起こったことです。2013年にはキプロスで預金封鎖が実施されました。

これらの非常事態が、起こるかどうかは別として、可能性があるのならば、できる範囲で備えておく必要があるということです。
 
だから「日本は大丈夫」と論じている人はとても無責任に感じます。なぜなら、有事への対応を考える機会を奪ってしまうからです。いたずらに危機を煽ることを奨励するわけではありませんが、「日本は破綻しないから大丈夫」と思った瞬間に思考停止し、何も備えようとしなくなるからです。

「地震が起こるかもしれない」と思えば災害対策グッズや食料品の備蓄などをして備えますが、「ない」と思えば備えないでしょう。
 
私たちは、命ある限り生きていかなければなりません。そして、生きるにはお金が必要です。住むにも、食べるにも、移動するにも、お金がかかります。しかし会社の非常事態に、会社は従業員に何かしてくれるのか。国家の非常事態に、国は個人に何かしてくれるのか。何もしてくれない可能性もあるわけです。

そんなときでも生活が破綻しないように、私たち個人は武装しておかなければなりません。そのためのテキストは、書店にいけばたくさんありますし、オールアバウトマネーにもたくさんあります。あとは、やるかやらないかではないでしょうか。


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