お金の悩みを解決!マネープランクリニック/50代以上の家庭のお金悩み相談

56歳貯金1600万円。夫が50代で亡くなり、将来が不安で仕方がないです(2ページ目)

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、夫が50代で亡くなり、お金を遺してくれたものの将来が不安だという56歳のパートの女性です。息子さんにお金を遺したいと思っていますが、自宅の修繕費用もかかるといいます。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

あるじゃん 編集部

執筆者:あるじゃん 編集部

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アドバイス1 奨学金は一括返済して、収支の赤字を解消すれば大丈夫

ご主人が早逝されたこと、お悔やみ申し上げます。さまざまな手続きも大変だったことと思います。生活を再開され、パート勤務もされ、十分ご立派です。どうか頑張りすぎないでください。長時間勤務を希望されていますが、勤務先も体に無理せずと言ってくださっているのですから、健康にだけは気をつけてください。
 
将来が不安な気持ちは十分理解します。毎月大赤字と書かれていますが、大丈夫です。少し家計を見直すことで、赤字はすぐに解消できます。また、老後についても、過剰に不安になることはありません。ひとつずつ紐解いていきましょう。
 
家計管理はしっかりなさっていますので、減らせるところはないと思われるかもしれませんが、通信費と保険の見直しで赤字はなくなります。通信費はお一人にしては少し高いと思います。プランの変更や格安スマホへの乗り換えも含め、5000円程度は減らせるでしょう。保険については、変額保険は払い済みにし、これ以降の保険料の支払いをなくします。保障はこれまで支払った保険料相当分ということになりますが、息子さんは独立していますので、それほど多くの死亡保険金は不要です。これで、毎月1万6000円ほど削減でき、赤字は解消です。
 
もうひとつ、奨学金についてです。息子さんに代わって返済されていますが、そうであれば、一括返済してしまってはいかがでしょうか。おそらく残りは170万円程度だと思われます。アドバイス2で詳細は説明しますが、現在の金融資産であれば、一括返済しても問題ありません。完済すれば気持ちの整理もつきます。毎月の返済額は、貯蓄に回せますので、1万4000円で年間17万円。60歳までに68万円貯めることができます。
 
家計を少し整え、毎月貯蓄できれば、気持ちもだいぶ落ち着かれると思います。心のゆとりのためにも、この68万円は旅行や趣味など、ご自身の楽しみのために使ってもいいでしょう。
 
 

アドバイス2 65歳までムリなく、今のペースで働くことが安心につながる

その上で、65歳まで現在の収入が続くとして、金融資産がどうなるか、順を追って計算してみましょう。
 
まず、現在の貯蓄は1600万円で、そのうち1000万円を息子さんに残したいということですが、今の段階で明確に分ける必要はないと思います。もし分けるとしても500万円で十分です。じょん子さんに万一の時は、払い済みにした変額保険が支払われ、分けておくとする500万円と使い切らなかった金融資産も相続されるわけですから。息子さんの将来を思いやるばかりに、ご自身の生活が不安になってしまっては元も子もありません。
 
仮に、1600万円のうち500万円を差し引き、また奨学金を一括返済した残り930万円がじょん子さんの今の貯蓄ベースだとします。60歳までは、現状の収支で大丈夫です。赤字は解消できていますので、貯蓄からの取り崩しもありません。60歳からは個人年金保険が収入として加算され、年額163万円は、まるまる貯蓄することができます。さらに、これまで支払っていた個人年金の保険料2万円も貯蓄することができ、年間で24万円、5年で120万円になります。65歳の時点で、金融資産は、930万円+815万円(163万円×5年)+120万円=1865万円まで増やすことができるのです。
 
65歳時点で2000万円弱の金融資産があれば、それほど不安に思うこともないでしょう。ただ、65歳まで今のペースで働き、収入を得る前提ですので、やはり、長時間勤務ではなく、現状維持に努め、長く健康で働けることを一番に考えてほしいと思います。
 

アドバイス3 70歳まで貯蓄も増え、100歳まで心配なし

では、65歳以降は、どうでしょうか。
 
65~70歳は、年金額は仮にじょん子さんの申告通りの金額であるならば公的年金の93万円と個人年金の163万円が収入となり、年間で256万円。支出は、保険料の支払いなどなくなり毎月15万円とすると年間で180万円。収支差は76万円です。これも貯蓄するとしたら、5年で380万円となり、都合2245万円が70歳時点で残ります。
 
70歳以降は公的年金のみとなり、年間での収支は90万~100万円がマイナスとなり、ここでようやく貯蓄から取り崩すことになります。でも、2200万円残っていますから、ゼロになるのは25年後。つまり100歳です。
 
いかがですか? これに息子さんのために残してある500万円と払済にした変額保険の保険金もありますから、心配する必要はありません。
 
自宅の修繕費用は、一度見積りを取られてみてはいかがでしょうか。歳を重ねてからの修繕工事は、気苦労が多いものです。300万~500万円程度かかったとしても、その後の生活がラクになるのであれば、早めに気になる部分だけでも修繕してしまったほうがいいように思います。
 
どうぞ、過剰に将来を不安に思うことなく、ワンちゃんと穏やかな生活を送ってください。
 

相談者「じょん子」さんより寄せられた感想

奨学金の一括返済、保険料を払い済みにすること、スマホを格安に変更、そしてそれらの分を貯蓄に回す、などなど、細かく丁寧に知恵を授けてくださって本当に感謝しております。読んでいて涙がこぼれました。私一人では不安が先立ち、お金の管理・使い方の工夫を考えることができませんでした。心がだいぶ軽くなりました。これからは心身共に健康に気を付けて生きていこうと思います。それが子どものためにも一番だと気づきました。今回は本当にありがとうございました。


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教えてくれたのは……
深野 康彦さん
 
 

 


マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。近著に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など

取材・文/伊藤加奈子



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