アドバイス1 資金援助も同居も一切しないことが絶対条件
まず最初に厳しいことを述べることをご承知おきいただくと共に、このアドバイスはご夫婦で読んでください。ご相談、拝見しました。あくまでFPとして、マネープランの観点からお話しします。ピンくんさんも理解されているとは思いますが、あえて申し上げます。今も、そしてこれからも、最優先に考えることは、自分の家族を守るということです。自分の家族とは、言うまでもなく、ご主人と3人のお子さんです。そこにご両親はもとより、兄弟の方も含まれません。心苦しいですが、姪っ子さんも同様です。この基本が崩れるようなことがあれば、ビンくんさんの大事な家族のライフプランは残念ながら、高い確率で破綻します。これに関しては、細かい試算は不要でしょう。
したがって、ピンくんさんの5人家族以外に関しては今後一切、相手が生活苦の状況に陥っても、資金的に関わりを持たない。親子さんとの同居など、論外です。もし、わずかでも資金的援助をする、同居をするということになれば、もはやピンくんさんだけの問題ではありません。その決断が自分の3人のお子さんの人生を台無しにする恐れがある。そのくらいの状況だということを認識してください。
今後、連絡も不要でしょう。結果、親子関係が切れるかもしれません。仕方がありません。親子の感情、思いはあるでしょうが、それに流されたら終わりです。鬼になるくらいの気概がなければ、自分の家族は守れません。今後もし、お金の無心が続くようであれば、警察に相談する、あるいは弁護士を介して司法の場に訴える。そのくらいの覚悟、気持ちの強さが不可欠です。
そして、今お伝えしたことを、たった今から実行してください。それが今後のライフプランを実現していく上での絶対条件となりますし、それを前提にいただいたマネー相談にお答えします。
アドバイス2 毎月12万5000円の貯蓄ペースが必要
まず教育費について考えてみます。進路はまだ未定ですが、問題は貯蓄がゼロ、学資保険も加入していない状況で、第3子の方が大学卒業するまで12年しかないということ。その間でどれだけ資金準備ができるかがポイントです。実際に必要な額を割り出してみると、一般的なコースとして高校は公立、大学は私立文系の場合、かかる費用の目安は高校で150万円弱、大学(文系)で400万円。したがって、一番上のお子さんは550万円ですが、第2子、第3子の方はその前に中学もあるので、さらに150万円加算して700万円となり、合計1950万円。
対して、今後の貯蓄ペースですが、月10万円、ボーナスから40万円を目指すとのことですから、年間で160万円。これは高いペースではありますし、12年間で1920万円を貯めることができます。とはいえ、目安の教育費にはわずかですが届きません。
さらに、教育費以外に成人式と自動車の運転免許取得の費用も負担したいと言われています。成人式は、着付けや写真撮影なども含めれば、安く抑えても50万~60万円でしょうか。さらに、教習所費用を40万円とすれば、3人で計300万円が別途必要です。先の教育費と合わせて2250万円となります。
したがって、これを12年間で用意するには、年間で190万円を貯めなくてはなりません。ボーナスから回せる貯蓄分が40万円で変わらないとするなら、月々の必要額は12万5000円。家計収支は現在、毎月の6万9000円の黒字ですから、それを達成するには、あと5万6000円の削減が必要となるわけです。
アドバイス3 老後への準備期間が長いのは大きなメリット
では、そのためにどう家計支出を削減していくか。具体的には、ピンくんさんが言われている雑費や水道光熱費、家族の小遣いは当然その候補となりますが、趣味娯楽費の月5万円についても資金の優先順位を考えると、削ることが望ましいと考えます。一方、食費の月4万円は、上手にやりくりしての金額ならいいですが、無理に節約しているのなら、逆にもう少し掛けるべき。食事は生活の基本です。体調や健康を害しては、元も子もありません。それと、現在計上している教育費「月8万円」は、先の教育費の試算に含まれている部分もありますし、お子さんの年齢に合わせて徐々に減っていきます。教育ローンも完済間近。その点も考え合わせると、今後貯めやすくなることは確かです。
それでも高い削減意識は必要です。さらに、児童手当も今後減っていきます。節約はそう簡単ではないかもしれません。
ピンくんさん自身が、これまで辛い経験を何度もしてきたため、自分の子どもにはできるだけのことをしてやりたいと考える、その気持ちは十分理解できます。しかし、「何でもしてあげる」のではなく、普段、子どもたちにかかる費用も抑えていくことは必要になってきます。逆にいえば、そのあたりの予算管理、創意工夫ができるのなら、先の貯蓄目標は決して不可能ではないと考えます。
また、老後資金については、仮に目標どおり貯蓄できても、それはすべて貯まってはお子さんの費用に消えていき、結果的に残りはゼロということになります。しかし、それもあと12年の話です。それ以降は、お子さんたちも社会人となり、貯蓄の多くは自分たちの老後資金に充てられます。
このとき、ご主人は定年まであと11年。つまり、ピンくんさんが若いときに出産されたことで、老後資金の準備が一般より長く取れるということ。おそらく夫婦だけの生活費は、住宅ローンを加えても20万円台前半でしょう。つまり、月20万円の貯蓄も可能。ボーナスと合わせて年間280万円貯蓄できれば、11年間で3000万円超の貯蓄が新たにできます。退職金が不確定のことですが、これと公的年金で、老後資金の土台はできるはず。加えて、65歳まで家計が赤字にならない程度に働くことが可能なら、資金的にはほぼ心配はないといっていいでしょう。また、この間、貯蓄が順調なら、希望されている住宅ローンの繰上返済も、結果的に老後に備えることになりますし、余裕資金を充てるという形で実施してもいいと思います。
あと保険ですが、まず夫婦の医療保障を現在加入している保険で確保できているかどうか、再度、保障内容を確認してください。住宅ローンにがん特約が付いていますが、病気、けが全般をカバーする医療保障は必要。もし確保されていないなら、入院5000円で十分ですので、割安な掛け捨てタイプの医療保険や共済の加入は検討していいでしょう。
また、ピンくんさんには死亡保障も欲しいところ。10年定期で1000万円。保険料は1000円台前半です。それと今掛けられている傷害保険。これは不要です。
ともあれ、これからは自分たち5人家族を守る。それだけを考え、ご主人と力を合わせて、元気に明るく生活していく。それができれば、望むライフプランはきっと実現できるはず。頑張ってください。
相談者「ピンくん」さんより寄せられた感想
私たち夫婦は、親に振り回される人生を歩んできました。第1子を産んだとき、病室で主人と「この子が望む未来を応援できる親になろうな」と話したのを鮮明に覚えています。もし、自分たちが普通に進学したり就職したりと、他の家庭のようにできていたなら、仕事も選べたし、結婚をし家庭を持った時点で私たちの人生設計をしていけたのだろうと思っています。うちの母親は「なんとかなる」という言葉をいまだによく使いますが、なんとかなるのは、することをして努力をした上でなんとかなるのだと、先生からのアドバイスをいただいて再認識をしました。数字と文章でアドバイスをいただき、これからの教育資金や老後に向けて、どう金銭管理を行っていけばいいかとてもわかりやすかったです。引越しを機に光熱費も2万前後減ってきているので、これをできる範囲で維持していくこと。また、子どもたちに教育を除いて、できることできないことを伝えて協力してもらい、子どもたちにも金銭管理の大切さを教育していこうと思います。
食費は週1か10日に1回程度まとめ買いをし、3品以上は栄養面を考えて作れているので、このまま維持していきます。アドバイスを元に相談に行き、保険の見直しも今年度中には行っていきます。
子どもはどんなことがあっても、親がおかしいと思っても嫌いになれず、愛されることを求めるのだと今回の自分の相談を振り返り思いました。だから、自分の親って酷いなって涙が出ました。
はじめて子どもたちと出会った時の気持ちや誓いを忘れずに、自分たちの子どもや老後のことだけを考えて、気持ちを引き締めて毎月12万5000円を目標に貯蓄していきます。姪のことも心配ですが、彼女が少しでもより良い人生を歩んでくれることを願います。今は連絡を取り合わないようにしているし、このままこちらからは一切連絡を断ち切ります。私たちがした苦労や悩みを引き継がないよう、心を鬼にして親たちとの関係を考えていきます。子どもたちに余計な心配をさせないよう、2人で力を合わせて頑張っていきます。本当にありがとうございました。私たち夫婦の人生の大きな第一歩になるアドバイスをありがとうございました。
★「お金の悩みを解決!!マネープランクリニック」の過去記事はコチラへ
★「お金のことで悩む人に、貯金のコツを伝授!貯蓄達人の貯めワザ」はコチラ
教えてくれたのは……
深野 康彦さん
マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。近著に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など
取材・文/清水京武
【関連記事をチェック】
38歳子ども3人、貯金15万円。国民年金は免除申請中で老後が心配です
39歳、夫に病気が見つかり、家族が共倒れになる前に相談させてください
39歳子ども3人。赤字家計で家族の貯金はゼロ。私の貯蓄もなくなりました
34歳専業主婦、貯金100万円。2人目を出産後、貯蓄を取り崩す生活に
45歳、貯金130万円。自営業の夫がケガをして収入が下がり貯金を切り崩しています
48歳子ども4人。カードや教育ローンで毎月25万円の返済を自転車操業でやり繰りしています