産後の体重が1カ月程度で戻らないのは当たり前?
出産すればすぐに体重は戻ると思っていたのに、1カ月が経過……。産後ダイエットを頑張るべき?
私が行っている漢方相談では、妊活中、妊娠中、妊娠後を通じて、サポートさせていただくことが多いため、ご相談者さまの体重・体型の変化に関してもよくご相談をいただきます。
ご相談者さまの中には、出産直後にほぼ妊娠前の体重に戻ると思われている方も少なくなく、1カ月、2カ月が過ぎてもなかなか戻らない体重に、焦ってしまう方もいらっしゃいます。しかし、産後、特に授乳中の極端なダイエットは禁物です。
産後のダイエットは危険!「6ヶ月で標準体重」を目安に緩やかなペースで
一般的に、正常な妊娠・分娩を経た授乳婦さんは、妊娠前と比べて余分にエネルギーを摂取すべきと考えられています。「産後の肥立ち」という言葉がありますが、産後はしっかり休んで、体力をつけ、母乳分泌を促し、今後の育児に備える大切な時期です。産後、継続して母乳育児に取り組む方は、母乳分泌により消費エネルギーが増大します。授乳により体重が減りやすい時期ではありますが、産後6ヶ月に標準体重(BMI22)に調整していくのが負担のないペースと言われています。体重の変化には、個人差がありますので、急激な体重の増減を起こさないよう、体重を確認しながら、食事の量や内容を検討なさってください。緩やかに体重を落とす食事のポイントとしては、上手な脂質のコントロールが挙げられます。妊娠中は脂肪を多く溜め込みやすく、授乳時は食事の脂質量が少ない方が、母乳中へのエネルギー移行が多いと言われています。そのため、体重管理の面からも、脂質は取り過ぎないことが大切です。しかし、体内では合成できない必須脂肪酸を赤ちゃんにしっかりと届けるには、極端な脂質制限も禁物。魚由来の脂肪酸を積極的に摂取すると良いでしょう。
また、ご自身で注意しているにも関わらず、思うように体重が減っていかない場合や、妊娠前に比べて太りやすくなったと感じる場合、夜の授乳や生活が不規則になることなどで、思わぬ時間の間食が増えていないか、赤ちゃんのお世話に精一杯で、脂質の多い偏った食生活になっていないかなど、基本的な所に立ち返っていただくのが、まず大切です。
中医学的に見る産後の体…気虚・血虚・気滞体質になり代謝が落ちる?
中医学では、産後は、気血の消耗が激しく体内のエネルギーが足りなくなる「気虚」や、体に必要な血液を含む栄養素が足りなくなる「血虚」体質になったり、慣れない育児やストレスが高まることで、エネルギーの流れが滞る「気滞」体質になったり、これらが絡み合ったりすることで、いわゆる「代謝が落ちた」状況になるため、体重が落ちにくくなると考えられています。中国でも、産後の養生(体を労わる生活習慣)が大切にされています。産後の女性は、まず、母体を休めるために安静に、階段を登らないことや、外気にあたらないことなどが注意されます。お母さんの気血の回復をしっかりと行うことが産後の心身の健康の鍵になるのです。これは健康的に体重を戻していくためにも、大切なことだと言えるでしょう。しかし状況によっては、なかなか十分な休養が取れず、お体の消耗がなかなか回復しないことがあります。
産後の体重の戻し方・効果が期待できる漢方薬
産後の体重コントロールは、激しい運動を頑張るよりも、まずは、しっかりと養生し、体の基本的な機能を回復させて、代謝をあげていくことがポイントです。この回復の過程で、漢方薬が奏功することがあります。産後のケアには、補中益気湯や芎帰調血飲第一加減という処方を使うことがあります。以下、簡単に、産後に頻用される処方をご紹介します。
- 補中益気湯……胃腸が弱り、気力が湧かない、すぐに寝落ちしてしまう方に
- 芎帰調血飲第一加減……イライラ・くよくよ、気持ちの揺らぎを感じる方に
- 四物湯……お産の際に出血が多かったかたや、めまい感、低血圧、不安感のある方に
- 当帰芍薬散……めまい感、低血圧、不安感などとともにむくみの症状がある方に
- 防風通聖散……お腹周りに脂肪がついている方で、高血圧傾向、脂質代謝異常を抱えている方に
- 麻子仁丸……腸が乾燥していて、コロコロした便が出る方に
上記はいずれも市販されている漢方薬ですが、安易な選択では期待した効果が出ないだけなく、副作用が出てしまうリスクもあります。必ず専門家に相談の上で、服薬をスタートしてください。
産後ダイエットは体の回復を待ってから! 次の妊活にもつながる適切なケアを
中医学では、産後のケアをしっかり行うことで、以降の妊活にもスムーズに繋がると考えられています。もちろん、お体が回復したあとは、運動も積極的に日常に取り入れていきましょう。生まれたばかりの赤ちゃんのお世話で大変な毎日かもしれませんが、ママが自分自身を労わることは、体重コントロールにも有効です。決して焦らず、無理なくできることから、産後のケアに取り組んでみてくださいね。