男性不妊の原因で最もポピュラーな疾患にも関わらず、あまり知られていないのが「精索静脈瘤」。男性不妊の患者さんの40%ぐらいに見られると言われているので、かなり高い確率で起きる疾患と言えます。

今回はいつも男性不妊の解説でお世話になっている恵比寿つじクリニック院長の辻先生にインタビューをさせて頂きました。

精索静脈瘤の症状

(池上)精索静脈瘤とは簡単にいうとどのような疾患ですか?

(院長)一言でいうと、精巣(睾丸)に血液が逆流して精巣の静脈血管が瘤(こぶ)状に腫れているものです。
精索静脈瘤検査では超音波検査も行います。

精索静脈瘤検査では超音波検査も行います。


(池上)症状を教えてください

(院長)ほとんどの方は無症状ですが、陰のう部に痛みや違和感があったり、非常に大きいこぶ(瘤)になるとヘルニア(脱腸)と間違うくらいに出っぱります。精索静脈瘤は左側に多く、両側にある場合でも左のほうが程度が強いことが多いため、左の精巣が小さくなって、左右で大きさが違うということもありますね。

精索静脈瘤の原因

(池上)なぜそのようになるのか原因を教えてください

(院長)静脈は全身を回った血液が心臓に戻っていく血管なので内部の圧が低く、もともと血液の逆流を起こしやすいんです。そこで静脈のなかにはバルブ(弁)があって逆流を防いでいるんですが、その弁の具合が悪くて血液が逆流し精索静脈瘤ができると考えられています。

精索静脈瘤の検査・診断

(池上)検査・診断はどのように行うのですか?

(院長)まずは陰のう上部に腫れがないかを見て確認し、次に触れてみます。非常に程度の強い精索静脈瘤になるとまるで陰のうのなかに何匹もミミズがいるような感じになります。超音波検査では、精巣の大きさ、精索静脈の太さ、血液の逆流を観察しますが、力んでもらってお腹のなかの圧力が上がると逆流が強くなり静脈の径がさらに太くなります。

精索静脈瘤の手術・治療

まずは自分で確認してみましょう

まずは自分で確認してみましょう

(池上)どんな治療をされるのでしょうか?

(院長)血液が逆流しないようにするために
(1)手術で静脈をしばってしまう方法
(2)静脈につめ物をして血液の流れをせき止める2つの方法があります。

手術は静脈をしばる部位により大きくふたつに分けられ、
(A)お腹の中で静脈をしばる精索静脈高位結紮術と腹腔鏡手術
(B)足の付け根のところ(そ径部)でしばる精索静脈低位結紮術
があります。

精索静脈低位結紮術では精巣に近いため細い血管がたくさんあり、顕微鏡を使わなくては見えません。しかし手術するほうは大変なんですが、静脈のしばり残しが少なくて治療効果が高く、合併症も少ないうえに、患者さんの負担も軽い日帰り手術ですので、私のところもこの方法でやっています.
 

精索静脈瘤の術後の経過

(池上)治療の結果、期待できる効果を教えてください

(院長)精子の数、動き、形の改善が期待できますが、最近では精子のDNAの質も良くなることが明らかにされています。

顕微授精では精子はいさえすれば良いように考えられがちですが、顕微授精でも100%のご夫婦がお子さんを授かれるわけではないですよね。顕微授精になっても精子の質が改善しなければ成功しません。精索静脈瘤の治療では精子の質の向上も期待されます。

さらに,最近では精巣(睾丸)で精子が作られていない原発性(非閉塞性)無精子症の患者さんでも精索静脈瘤を治療すると精子を作るようになることがあるという報告が出てきています。

精索静脈瘤の超音波画像です

精索静脈瘤の超音波画像です

(池上)潜在的に多くの患者さんがいるように思えるのですがいかがでしょう?

かなりいらっしゃいますね.現在の不妊治療はどうしても女性が主体なので、男性については精子だけが注目され、診察もされることがないですから見つかるはずもないでしょう。

(院長)自分で簡単にチェックは出来ないものでしょうか?その方法があれば教えてください。

立った状態でお腹に力を入れて息んでみてください。精巣(睾丸)の上のほうに何か触れませんか? それが仰向けに寝て、お腹を楽にしたら、小さくなったり、柔らかくなったりするなら精索静脈瘤かもしれません.

(池上)最後に何かあれば一言お願い致します。

(院長)精索静脈瘤があれば、それを治療することによって奥様や生まれてくるお子さんへの不妊治療のリスクを軽くすることができます。

今年4月の米国泌尿器科学会でも、精索静脈瘤手術を受けたグループでは明らかに自然妊娠率が高かっただけでなく、手術を受けなかったグループでは62%で体外受精や顕微授精が必要になったのに、手術を受けたグループでは32%であったというデータが報告されています。

精子の所見が悪くて不妊治療が必要といわれている男性は、自分が悪いのに治療を一方的に奥さんに押し付けちゃまずいのではないでしょうか?治療で良くなる可能性があるのですから、ぜひ調べてください。

まとめ

今回は精索静脈瘤の話題でした。このように治療をして自然妊娠が可能になる可能性がある治療なのに、医療機関によってはこのような根本的な治療を行わず、手っ取り早く妊娠が出来るように体外受精や顕微授精を行うよう誘導するところもあり、そこは気をつけなければいけないと思います。

精子が少ないということの事実をどのように受け止め、男性側の身体と健康の改善を図ることは妊娠の前に必要な事だと思うからです。

男性不妊の方でまだ精索静脈瘤のチェックをしていない方はぜひ一度調べてみてください。ひょっとしたらそれは治るものなのかもしれません。

■関連サイト
恵比寿つじクリニック(精索静脈瘤)
e-dansei.com/spermatic-varicocele.html


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