そもそも炭水化物とは? エネルギー産生栄養素の一つで最もエネルギーに変わるスピードが早い
ごはん、パン、いも類、そばなど主に主食となる食材に豊富な炭水化物。そのはたらきや注意点をご存じですか?
「炭水化物(糖質)」は、「たんぱく質」「脂質」と並んでエネルギーを作る、「エネルギー産生栄養素」の一つです。かつては「三大栄養素」と呼んでいた時代もあります。そのため、一般市民の間ではまだ「三大栄養素」という言葉を使っているサイトもあるようですが、専門家の間では、すでに「三大栄養素」という言葉は使われなくなっています。
実際には、栄養素はエネルギーを出すものだけではありません。エネルギーを出すことができないものも含めて、栄養素は大きく「炭水化物(糖質)」「たんぱく質」「脂質」「ミネラル」「ビタミン」の5つに分け、「五大栄養素」と呼ばれることがあります。
炭水化物は、「砂糖がたくさん結合してつながった状態のもの」と考えるとわかりやすいかもしれません。この考え方は食品学的には正しくないのですが、食品学・栄養学の知識がない状態でイメージされる場合、当たらずとも遠からずと言えると思います。
炭水化物の種類・該当する食品一覧
炭水化物と一言で言っても、大きく「単糖類」「二糖類」「少糖類」「多糖類」に分けられ、それぞれ特徴が異なります。- 単糖類……ブドウ糖、果糖、ガラクトースなど
- 二糖類……ショ糖、乳糖、麦芽糖など
- 少糖類……オリゴ糖
- 多糖類……でんぷん、グリコーゲン、ペクチン、グルコマンナン、アガロースなど
■炭水化物を多く含む食品・食材
- 米(ご飯、白飯、玄米、おにぎりなど)
- 小麦粉(パン、うどん、そうめん、お好み焼き、たこ焼き、パンケーキ)
- いも類(じゃがいも、さつまいも、長芋、里芋、山芋)
- そば
バナナは炭水化物と考える方もいるようですが、バナナなどのフルーツに多く含まれているのは炭水化物ではなく糖質ですので、どちらかというと砂糖に近いイメージだと思っていただくとよいと思います。
炭水化物のはたらき・吸収について
炭水化物は「エネルギー産生栄養素」の中でも最も早く、エネルギーに変換されます。そのため、スポーツ選手が試合前などに、炭水化物を食べて一気にエネルギーを出せるように調整をすることがあります。これを「グリコーゲンローディング」と言います。また、炭水化物(糖質)は脳のエネルギー源としても重要です。勉強や事務仕事を頑張りたい時などは、炭水化物抜きダイエットは作業効率が下がってしまうため、オススメできません。
炭水化物の一日の摂取量の目安
1日に摂取するエネルギー量の50~65%を炭水化物(糖質)で摂るとよいとされています。成人男性(18~29歳、活動強度Ⅱ)の場合、1日あたりに必要なエネルギー量が2650kcal(日本人の食事摂取基準2020年)ですので、1325~1590kcal分を炭水化物で摂ることが推奨されています。ご飯茶碗1杯(約200g)で約320kcal程度です。大体の目安としてください。
炭水化物の過剰摂取や炭水化物抜きダイエットで体に起こること
炭水化物の過剰摂取による影響は、一言。「太ります」。炭水化物抜きは、疲れやすくなると言われています。また、エネルギー源を「たんぱく質」と「脂質」で賄おうとするため、体のpHが酸性に傾いてしまい、ケトン体を発生するために、体臭がくさくなってしまうことがあります(低炭水化物ダイエットの推奨者によると、よいにおいがするようになる、と言っている人もいますが、正直、実験試薬でケトン体のにおいを知っている人間から言わせてもらうと、ケトン体をいいにおいだと思ったことはありません)。
炭水化物は適量が大切! 主食として3食食べるのが健康的
近年、炭水化物抜きダイエットや低炭水化物の食生活の流行が見られますが、炭水化物はすばやくエネルギーに変換されるという特徴がありますので、頑張りたいときには欠かせない栄養素です。主食として多く食べられているため、食べる頻度や食べる量も多く、「これを食べなければダイエットできる」と言われてしまう傾向があるようですが、日本人は古くから「米」を食べて生活してきた民族です。炭水化物を食べることは日本人にとって至極自然な生活の営みですので、ぜひ炭水化物を毛嫌いしすぎず、1日3回の食事の際には、きちんと炭水化物を食べるようにしましょう。