子育て/子どもの発達障害・グレーゾーン

「発達障害グレーゾーン」が陥りがちなトラップとは?

発達障害児のグレーゾーン。それは、幅がものすごく広く、判りにくいと言われています。特に症状が幼少期の早い段階で現れた場合、きちんとした診断がつくまでに時間が掛かることも珍しくありません。今回は、とある事例をもに陥りがちなトラぷについてお伝えしたいと思います。

執筆者:All About 編集部

「療育センターで言われたのです」。それ本当に、真に受けて大丈夫?

発達障害グレーゾーンと言われたら?

発達障害グレーゾーンと言われたら?

一般的に発達障害の可能性が疑われる場合、普通は地区の保健センターから療育センターへ回っていくケースがほとんどだと思います。

療育センターというのは0歳児から学童期までのお子さんの発達について早期発見から療育まで一貫したサービスを行ってくれる施設をいいます。スタッフには医師や看護師をはじめ、臨床心理士、言語聴覚士、作業療法士、理学療法士など専門分野のさまざまな人たちが揃っています。

対象年齢は施設によってさまざまで、18歳までを対象としている施設もある一方で、成人してしまうと対応してくれる施設は殆どないのが現状です。そのため、まれに小児科などを受診するケースもあるかとは思いますが、本当に発達障害だった場合、最終的には療育トレーニングを受けることになるので、療育トレーニングを受けられる専門機関として最初は地区の療育センターなどの受診を薦められる場合がほとんどでしょう。
 
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子どもの発育は親ならだれでも心配ですよね

ここで陥りがちなのが、保健センターまたは療育センターの担当者の言葉によるトラップです。以前担当したことがある5歳の男児の事例を、今回はご紹介しましょう。

この男児は、少し繊細過ぎるお子さんでした。乱暴なお友達や、その状況を見ていることで不安を感じてしまい、保育園が怖くなり登園拒否傾向が強く出ていました。心配したお母さんが保健センターを受診したところ、療育センターへ回され、そこで担当したスタッフの方から「このままでは、まともな大人にはなれません」と言われて愕然とした、といいます。

療育に携わる方の多くは、お子さんと親御さんの未来のために一生懸命になってくれています。また、このときのやりとりが実際はどうであったか定かではないとも思います。言葉というのは受け取り方がありますから、スタッフの方にそのようなつもりがなくても、相手の方にそう受け取られてしまうことも十分に考えられます。でも、問題は受け取られてしまった場合、その親子の人生を大きく左右するといったことが現実に起こるのです。
 

「療育トレーニング依存症」に、なってはいけない

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子どもとはいえ、人格を持った個人なのです

問題を深刻にとらえたお母さんは、とある民間施設で療育トレーニングを受け、めざましい成果を出している発達障害児のお子さんと知り合います。そして、我が子もそのトレーナーへ預けました。きっと、藁にもすがる思いだったのでしょう。

結論から言うと、結果的にはそのことが余計に症状を悪化させてしまいました。発達障害かどうかはさておき、子どもというのはある程度の個性を持っています。その個性は成長過程で固まっていくわけですが、その中で当然ですが、指導者との相性という問題が出てきます。相性が合わないトレーナーに子どもを預けたところで、いい結果など出る訳もありません。むしろ反対で、嫌いな大人のところへ自分を通わせるお母さんに対して、ある種の不信感さえ抱きかねないというリスクを背負っているのです。大人だって、嫌いな人のいうことは素直に聞けませんよね。まして発達障害グレーゾーンの子たちは繊細で独特の感性を持っています。指導者次第で症状は良くも悪くもなっていくという側面があると理解しておきましょう。

この男児は、成果をあげるどころか、むしろ症状が悪化しました。具体的には相性が良くないトレーナーのところで心理学用語で「筋肉の鎧」といわれるマイナスの要素を身に着けてしまったのです。「筋肉の鎧」とはその言葉通り、嫌なことがあったときや緊張状態などを感じたとき、筋肉がそのときの体の状態を感情と結び付けて記憶してしまい、ある一定の条件が揃うと無条件にそのときの身体症状を再現してしまう現象を言います。この男児の場合、大人によってより生きにくさを強いられることになってしまった、といってもいいのではないでしょうか。

その後、お母さんは日常生活で男児に感じる「困り感」を解消するべく、いろいろなトレーナーへ男児を預けます。しかし、筋肉の鎧の効果は絶大。なかなか現実は楽にならず、結果、また新しい先生を探すことに。実はこのような「療育トレーニング依存症」が多く生まれている現実もあります。

 

まずは、子どもの可能性を信じてみよう

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子どもが楽しいのが一番だとは思いませんか?

療育センターの言葉は、お母さんには本当に重たい言葉だったのかもしれません。でも、結論から言うとこの男児は恐らく発達障害ではなく、個性の強いお子さんという範疇にとどまっています。

なぜなら得意なことや好きなことだけでなく、苦手なこともタイミング次第でクリアできる上に、私立の小学校受験に合格もしています。通信教育の教材も進んでやるときもあるなど、それほど日常生活に困り感があるとは思えない行動が幾つもあるのです。お友達とも普通にコミュニケーションが取れているし、特段今の段階で大きく問題があるようには見えません。

ただ、環境になじめないと不登校傾向が出ることが気になりますが、この小学校ではほかのお子さんにも同じような症状があると言います。であるなら、何を基準に療育センターでそう言われたのか、首をかしげたくはなりませんか?

とはいえ、一度診断が出ているからにはグレーゾーンであることにかわりはないとは言えるでしょう。では、どうするか。まずはお子さんの様子を見て、子どもの可能性を信じてあげてください。仮に発達障害だったとするなら、それがなくなることはありません。発達障害は脳機能障害ないので、病気のように治ることはないからです。大切なことは、現実の生活が円滑に回ること。そのためにどの段階で療育トレーニングを入れていくか、またどのトレーナーと子どもが歩んでいくかを決めてあげることが重要なポイントになると思います。
 

気になる場合はセカンドオピニオンを!

「そんなことをいっても、専門家に言われたら気になって仕方ないでしょう」。そう言われる方も多いかもしれません。いま医療の世界では「セカンドオピニオン」が常識になりつつあります。セカンドオピニオンとは、現在掛かっている医師の診断について、別の専門家にもジャッジして貰い患者自身が治療方針や施設を選択するための判断材料にする「サブ診断」と捉えていいでしょう。

発達障害についても、同様に考えるべきだと思います。保健所、療育センター、小児科など、さまざまな相談施設があります。専門家に言われた言葉に傷ついて、それを鵜呑みにしてしまう前に、親としてやれることをすべてやるくらいの強い気持ちを持ってほしいと思います。

子どもはある程度成長するまで自分で人生を選べません。そのためにも、保護者であるお父さんお母さんが、どのようなセレクトをするかで大きく人生が変わってしまうともいえるのです。取り返しのつかない後悔をしないよう、しっかり知識を得て、自分とお子さんにあった療育プランを作っていくことを心がけて下さいね。

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※乳幼児の発育には個人差があります。記事内容は全ての乳幼児への有効性を保証するものではありません。気になる徴候が見られる場合は、自己判断せず、必ず医療機関に相談してください。

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