ワーママ子育ての明暗を分けるイクメン格差、実家格差、職場環境格差
ワンオペ「子育て格差」
1.専業主婦の姑&夫と価値観があわず……ハナエさん(39歳)
完璧なイクメンは存在しないと、分かってはいるけれど……。
「振り返るだけでイライラがこみあげますが、特に夫について差を感じます。完璧な人はいない、と頭では分かっているつもりですが、育児や家事が当たり前という姿勢をもっている旦那さまを見ると本当にうらやましいです。そういう人って、家事や育児が大変だと知っているから、妻にも気持ちよく自由時間をくれるし、分かり合えると思う。育児は大変だけど、そこを理解してくれるとストレスは減りますよね」
ハナエさんの夫の母親は、「自己を犠牲にしてでも家庭に尽くすことが愛情」と考え、自ら実践してきた専業主婦だという。その環境で育った夫は、断言こそしないが「家事育児は女性の仕事」「母親は仕事をがんばらなくていい」という刷り込みが強く、ことあるごとにその価値観がかいま見えるという。
「子どもに微熱があれば、『かわいそうだから、子どもを優先して仕事を休んで』と私に頼みますが、自分はぜったい休まない。保育園時代から朝、子どもを送ることはしてくれて、お迎えは私と半々くらい。でも、それで『ワンオペ育児で大変』などと言いふらしてくる。食事・お弁当づくり、掃除、洗濯はこちらが全部やっているのに、送迎だけでよくワンオペだなんて言えるなって思います」
ワーママを助けてくれる実家の存在は働きやすさに直結するとハナエさんは言う。
「職場の同僚は、自分の実家が近所で、しょっちゅう子どもを預けているし、夕食も分けてもらっているから、本当にうらやましいです(笑)。夫の実家は比較的近くにありますが、私と義母の価値観が違いすぎてストレスがたまるので、あまり近寄らないようにしています」
また近年、在宅勤務OKの職場が増えてきているが、通勤時間が短縮される以外にもうらやましいことがある。
「息子が小学1年生になって、とにかく平日の学校行事が多い。保護者会、面談、『給食を食べる会』と、ひどいときは10分のために半休を取らないといけない。有給は子どもがインフルエンザなどの時のためにとっておきたいから、できるだけ休みたくないのです。小1の壁というものを実感していますね」
毎日、仕事、育児、家事に疲弊し、「水、木、金曜は、毎日栄養ドリンクを飲んでいる。忙しい仕事のときは毎日(笑)」というハナエさん。比較的、有給が取りやすい職場であるため、そのときに息抜きをして日々を乗り切っているが、旦那さんとの平行線はこれからも続きそうだ。
2.一女の母ながら商社営業部で管理職に! フミエさん(42歳)
トラブルに対処したくても、駆けつけられないジレンマ。
「私は人と違っても、私は私、人は人、と思っているし、すぐにヘルプを出せる性格かなと。義理の両親や妹は、働く女性に理解があるので、協力してもらえて助かりました。でも二人とも、基本的に専業主婦で、フルタイムのワーママとは違うので、子育ての見解に違いが出そうだな、と恐れてはいましたね」
商社の営業職といえば、飲み会も多い。義母はお酒を飲まず、早めに就寝し、パートで働く生活をしていたため、遅くまで子どもを預かってもらうことに気が引けたこともある。
「夜遅く帰る日々が続くと、夫から義母へ頼んでもらうことになりました。夫も帰宅が遅いので、私だけが遅い帰宅だからではなく、『二人とも遅いので』という言葉で頼んでほしいな~という細かい言い方を気にしたり(笑)。かといって、嫌がるような義母ではなかったので、私が気にしすぎなのかもしれませんけど……。結局、気まずくて実母に隣の県から1時間かけて来てもらって、泊まってもらうこともありました」
やはり、義母より実母のほうが頼みやすい。
フミエさん曰く勤め先は「ニッチな商材を扱っている」ゆえに、海外との取引が多く、1週間ほどの長期出張もたびたびある。今となっては乗り越えてしまったが、トラブルで現地に行かねばならないのに、行けないジレンマもあった。
「責任者として、子供を理由に現地へ行けないことに、納得していませんでしたね。反対に、それほど緊急性のない案件で、ほかの人も仕事を休めないから行ってといわれても、自分も本当は休めない。『それ本当に無理をしてまで行かなきゃダメな状況?』と思うこともありました」
そのような案件の場合、仕事を工夫して事なきを得てきたが、作業時間は倍かかる。
「体力がもたなーい、みたいなことになりました(笑)。でも、後輩がそれをきっかけに育つのをみると、結果オーライですよね。大事な場面でのジレンマを格差ととらえるまでには至らなかったのかな」
仕事と子育ての両立にたびたび苦戦していたフミエさんだが、仕事の楽しさが軸にあり、それが育児生活のマイナス面を凌駕しているように感じられた。
「20年ちかく在籍して自由にやらせてもらえるという職場でした。商社という、モノを売る人とモノが欲しい人をうまくつなぐ仕事が楽しかったし、人と関わるめんどうくさい仕事が好きなんです(笑)。いい意味で属人的な仕事ができたのも楽しかった。世の中の役に立っているという実感が自己肯定感を強めたんでしょうね」
戦友のようなママ友たちの存在も推進力となっていたようだ。
「同じように仕事も育児もがんばっているママ友と定期的に飲み会をしていて、それが活力や癒しになりました」
フミエさんはこの夏、悩んだ末に長年勤めた会社を辞め、夫の転勤により家族でヨーロッパに移住した。駐在妻という初めての経験に戸惑いながらも、行先の土地でビジネスチャンスがあるかアンテナを張っている。長年培った商社魂は、離職しても健在のようだ。
夫、実家、ママ友、就業形態……ママたちをとりまく環境はさまざまで格差はある。それぞれが特性を生かしながら目の前の育児を乗り切っているたくましさを感じつつ、必要なときに必要な育児の手を得られることを願ってやまない。
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