アドバイス1 家計管理はカンペキです。将来もこのままで大丈夫
2人のお子さまが小さいときから、シングルマザーで、よくここまで頑張ってこられました。家計管理も完璧で、アドバイスすることがないぐらいです。節約、倹約も楽しみながら、やりくりされている様子が窺え、本当に立派だと感心しました。さらに、年に数回、旅行も楽しまれているとのこと。息子さんの勤務先の福利厚生が使えるというのも、言うことなしです。お子さま2人とも独立されたとのことですから、これからは、もっと自分の生活を楽しんでください。
現在の貯蓄額は、少し心もとないですが、次にご説明することで、解決できると思います。
アドバイス2 60歳まで貯蓄ペースを維持し、資産の取り崩しを遅らせること
白いことりさんの現在の貯蓄額は297万円ということですが、お子さまが独立されてから、ハイペースで毎月の貯蓄額を増やしているとのこと。現在の収支を前提に試算すると、年間の収入が154万円。支出は約86万円。年間で約68万円の貯蓄が可能です(個人年金保険の保険料も貯蓄としてカウントします)。60歳までの9年間、今の会社で働いている間に、約910万円まで増やすことができます。60歳以降、この910万円を取り崩すペースを少しでも遅くするようにしてください。
一つには、60歳以降は、パートでとご自身も書かれていますが、それでいいと思います。毎月8万円ぐらいの収入を得られれば、収支はトントンです。おそらく白いことりさんは、今の支出をキープできる力がありますから、毎月8万円を目安に働いてみてはいかがでしょうか。
もう一つは、60歳でご実家に帰られるようであれば、住宅関連費が浮きます。食費や水道光熱費の負担をどうされるかですが、浮いた住宅関連費程度は、実家に入れてもいいでしょう。親御さんと案分するとしても、今よりも、さらに支出を減らすことができるかもしれませんね。
いずれにして、白いことりさんの家計管理、生活スタイルであれば、60歳まで、もうひと頑張りして、1000万円弱の貯蓄があれば、老後の心配もないと思いますよ。
アドバイス3 生命保険は全部解約か、または最低限の保障だけ残す
生命保険、医療保険の入り方も、本当にお子さまのことを心配し、よく考えられた入り方だと思います。健康で払えるうちは払い、保険料が上がるタイミングで続けるか考えるとのことですね。でも、もうお子さまは2人とも独立されているわけですから、少なくとも死亡保障の生命保険2つは、解約してもいいのではありませんか? 万一のときに、少しでも遺してあげたい、という愛情はわかりますが、ここまで一人で育ててこられた姿を、お子さまはずっと見てきているのです。もう十分だよ、とお子さまもおっしゃるのでは?
医療保険、がん保険は、白いことりさんの気持ち次第ですが、病気死亡で410万円の保障がある、医療共済だけ残して、あとは解約してもいいと思います。そうすると、毎月1万3000円削れることになります。ご本人も、「保険が削りどころ」とわかっていらっしゃいます。保険の解約は、なかなか踏ん切りがつかないかもしれませんが、お子さまが独立したのを機に、ぜひ見直しをしてください。節約ということではなく、もう不要になったということです。
最後に、最近の年金問題で、いろいろと不安を抱える方が増えていますが、白いことりさんは、このままで大丈夫です。現在、積み立てている個人年金、つみたてNISAで十分で、あえて副業したり、他の投資をする必要はありません。
65歳からは、公的年金と個人年金を合わせて130万円。今の支出額をキープしていけば、年金から貯蓄ができてしまうのですから。趣味の旅行も、もっと行けるようになるでしょうね。どうぞ、楽しんでください。
相談者「白いことり」さんから寄せられた感想
的確なアドバイスに、漠然とした不安がスッキリと払拭された気持ちです。アドバイス2については、今後、さらなる貯蓄増を含めて、しっかり意識しながら取り組んでいきます。アドバイス3の「生命保険の解約」これがまさに、心配性の私にとっては、まるで命綱を断ち切るかのような難題なのですが、「やはりここだったか」という部分でもあります。「解約」を悲観的に捉えずに、前向きに一つ一つ整理していきたいと思います。
これまで将来に不安ばかり抱きながら、ただやみくもに、できる限りの貯金や投資で備えてはきましたが、収入の少ない私でさえ、もうひと頑張りすれば自分の老後までに1000万円達成も可能だとは今まで考えてもみませんでしたので、深野先生の試算によって現実的な目標や希望ができたのがとてもよかったです。また、深野先生の「このままで大丈夫」をはじめ、温かなお言葉の数々に、涙が出るほど嬉しく、安堵しました。心から感謝いたします。
いつも「世の中のシングルマザーは、老後資金はどうやって備えているんだろう」と考えながら、手探りのままやってきました。母子家庭で頑張っている、似たような収入の方々にとっても、この相談がご参考になると幸いです。
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教えてくれたのは……
深野 康彦さん
マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。近著に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など
取材・文/伊藤加奈子
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