お金の悩みを解決!マネープランクリニック/60代以上の人のお金の悩み

64歳独身、月10万円の年金で暮らさなければならず、貯蓄が底をつくのが心配(2ページ目)

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、年金生活に不安を抱えている64歳の独身男性。年金額が少なくこの先貯蓄が底をついたらという心配もあるとのこと。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

あるじゃん 編集部

執筆者:あるじゃん 編集部

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アドバイス1 貯蓄を取り崩しても100歳前後まで大丈夫

65歳から年金が10万円程度とのことで、少ないことを心配しているようですが、現在の家計支出を見ますと支出は月額8万6000円とのことなので、じゅうぶん年金収入の範囲で賄えます。固定資産税や火災保険などが年間6万5000円プラスしてかかるとしても、月々は年金の範囲でぎりぎり大丈夫です。万が一貯蓄を取り崩したとしても、そんなに大きな額を毎月必要とするわけではないので心配はいりません。

ドルフィンさんは現在2000万円の預貯金がありますが、たとえば毎月3万円ずつ取り崩した場合、2000万円の貯蓄は55年もちます。月に4万円でも113歳、5万円取り崩しても98歳まで貯蓄が底をつくことはありません。そう考えれば、そんなに心配する必要はないし、リバースモーゲージも考えなくて大丈夫です。
 

アドバイス2 医療費をどうしたいか考えておくと安心です

医療に関しては、これからどんな医療を受けたいか考えておいたほうがいいでしょう。病気などで治療を受ける時には「かかる医療費」と「かける医療費」があります。かかる医療費はどこへ行っても誰でも同じ治療を受けられる、いわゆる保険診療のことです。日本は国民皆保険制度があるので、どんな人も1~3割の自己負担で治療を受けられます。ドルフィンさんの場合、70歳から2割、75歳からは1割の負担になります。また、1カ月に多額の治療費がかかった時には高額療養費制度があるので、一定額以上の費用は健康保険で負担してもらえます。

一方の「かける医療費」は、たとえば保険のきかない特別な治療法だったり、病気になった時にその病気の名医に執刀してもらうなど保険の範囲を超えた治療を望む場合の医療費です。入院した場合の個室を希望するなど差額ベッド代などもかける医療費になります。いざという時にこだわりがあるのなら医療費の支出は別に考えておいたほうがいいでしょう。

病気がちなことが不安の一つのようなので、医療費にどのくらいかけるのかということを考えておけば、マイホームも持っているので住居費もかからないし、65歳以降働かなくても大丈夫でしょう。

保険に関しては月1万1000円も払うのちょっとはもったいないですね。終身払いになっているし、家計に占める割合もかなり大きいです。これを共済とか安いものに変更できるなら変更したほうがいいでしょう。
 

アドバイス3 経済的なことよりもメンタルを含めた健康に留意して

一人暮らしをされているので、何よりも怖いのが家に一人で引きこもってしまうことです。経済的な部分に関しては、今の生活を守っていれば大丈夫ですから、お金の心配よりも自分自身の健康のことに気を配ってください。ストレスをためこんだり、人とのかかわりがなくなることは健康によくありませんよ。ですから家に引きこもってしまわないように、何でも構わないので社会とのかかわりを持ったほうがいいでしょう。

毎月3万円取り崩したとしても足りなくなることはないのだから、年に1、2回でもいいので、旅行などに出かけてみるのもいいのではないでしょうか? 足腰が弱ってしまわないようにするためにも、外へ出ることは重要です。

また趣味をみつけてサークルに参加するなど人とかかわりを持つのもいい方法です。仕事はしないとのことですが、もし趣味のサークルに参加するなどが難しいなら、負担にならない程度でアルバイトをするのも一つの考えです。

シルバー人材センターなどで少しお金をもらいながらボランティアをするのでもいいし、精神的体力的に無理のない範囲で考えてみてはどうでしょう。どんな形でもいいので、誰かとつながっているということは何かの励みになることも多いですよ。

持ち家に関してはリバースモーゲージの必要はないですが、相続する親族もいないようなら最終的に遺贈するということを考えておいたほうがいいかもしれません。

さらに家計の中で一つアドバイスするなら、健康に過ごすために食費をもう少し使ってもいいのではないかと思います。多少支出が増えても貯蓄が底をつく心配はないですから、健康のためにお金を使うのも大事なことですよ。

それと病気になった時の医療費の心配があるのであれば、「限度額適用認定証」をもらっておくといいですね。それがあれば多額の医療費がかかった時にいったん支払ってから高額療養費を還付してもらうのでなく、限度額までしか払わなくて済むのでちょっと安心できるのではないでしょうか。

ご心配しているよりもドルフィンさんの置かれている状況は悪くないので、あまり悲観的にならずにこれからの時間を元気に過ごしてほしいと思います。
 

相談者「ドルフィン」さんより寄せられた感想

先生の助言に助けられました。私は独身のまま死ぬことになりますが、学生時代は素敵な人もいました。社会に出てからはいい出会いもなく、かえって女性の怖さを身に染みて感じるようになりました。私は母子家庭ですが母との生活に強いストレスを感じ、人とは暮らせないなと思ってきました。私は孤独ですが、一番辛いのは集団の中の孤独であり、ただ単に一人でいることには辛さを感じません。一人でいることで満ち足りているのです。

私は男女の愛情が長く続くとも考えませんし、共に生活し成長していくことにも魅力を感じませんでした。子どもも欲しいと思ったことは一度もありません。私の趣味は読書や創作や映画やドラマ鑑賞です。そのために高価な最新のテレビを買いたいと思っているのですが分不相応かなとも思っています。半年に一作、小説を書くことが生きがいでした。もちろんプロの作家にはなれませんでしたが、今はネットのサイトもあるのでそこに書かせていただいています。書くからには常に良いものをと考えていますが、それがなかなか評価に結びつかないのもこの世界です。

医療保険は持病のある人向けの保険にしか入れなかったので高いと思ってきました。ところが最近、大腸ポリープと足の怪我をして手術代と3週間ほどの入院費を保険から支払うことができました。これからが必要になるのかもしれません。

人との付き合いが楽しいものだとは私も分かっております。でも根本的に人の心は怖いものだと思っていますので、これからは浅い付き合いができればなと思っています。ほどほどの付き合いがいいのかなと思っています。長々と書いてすみません。毎月の出費をこれまで通りに抑えていけば後期高齢者以降もなんとか生活していけるのが分かり安心しました。ありがとうございます。
 

教えてくれたのは……
深野 康彦さん
 
 

 


マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。近著に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など

取材・文/堀内玲子


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