お金の悩みを解決!マネープランクリニック/教育費が準備できるか不安な子育て世代

39歳貯金120万円。勤め先の業績悪化で年収200万円ダウンが予想されます……(2ページ目)

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、勤務先の経営悪化で年収が200万円ダウンになりそうな39歳の会社員男性。ただし、不動産収入や売電収入もあり、今後どのように資金を回すべきか、いろいろ悩んでいるとのこと。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

あるじゃん 編集部

執筆者:あるじゃん 編集部

  • Comment Page Icon

アドバイス1 年収ダウンで老後資金は2700万円

勤務先からの収入が200万円ダウンの可能性があるとのことですから、まずは現状維持とダウンした場合、それぞれのキャッシュフローを見ていきながら、各ご相談をアドバイスしていきます。
 
最初に、ダウンせず現状維持となったケースです。いただいた収支データでは、毎月18万6000円の黒字。ボーナスも全額貯蓄ですから、年間の貯蓄ペースは303万円、定年までの21年間継続すると6367万円となります。
 
ただし、売電収入については、16年後の2035年に固定価格買取制度が終了しますから、それ以降は、ご本人も言われているとおり、大きく下落することが予想されます。それにともない売電事業をどうするかについては、不確定要素が多く、予想はつきませんので、とりあえず2035年までは現状と同じ収益を上げ、それ以降は0円とします。また、不動産収入は相談者が言われるように「継続されると見込んでいる」として試算します。
 
一方、支出の変化としては、自動車ローンは9年後に完済となりますので、それ以降は支出から差し引きます。住宅ローンは58歳のときに完済しますので、それ以降の支払いは発生しません。ただし、クルマは買い替えをするでしょうから、その予算を自動車ローンに近い400万円として、さらにお子さん2人の大学資金を、余裕を持って1000万円と見積もります。結果、家計に加えている教育費は高校まで、また、児童手当の支給が途中でなくなるなどを考慮すると、最終的に定年時に手元に残る資金4500万円ほど。これに退職金1200万円(金額の低い方で試算)を加算した額=老後資金はおよそ5700万円となります。
 
次に年収が200万円下がった場合ですが、額面で600万円から400万円に下がるわけですから、手取り額だと130万~140万円程度のダウンとなるでしょうか。これが21年分ですから、2800万円ほど。これを先の老後資金から差し引くと2900万円。この金額が年収ダウンの場合の老後資金ということになります。
 

アドバイス2 繰上返済は積極的にしたいが、年収ダウンなら教育資金優先

これを踏まえて、まず(1)のご相談ですが、「家族を養っていくために必要な最低年収」は、先に割り出した老後資金が足りるかどうかということになります。年収がダウンしたケースでの2900万円ではどうでしょうか。

老後についても不確定要素が多々ありますが、例えば統計的には、公的年金だけの老後の生活費の不足額は平均月5万~6万円(2人以上の世帯)。90歳までの25年間で1500万~1800万円。これに予備費として1000万円を加えると2500万~2800万円。少なくとも65歳までは働いて、あるいは不動産収入等で家計赤字にはならないという条件付きですが、それがクリアされれば2900万円はある程度安心できる金額ともいえます。したがって、家賃収入と売電収入が現状維持されるという設定では、勤務先からの最低年収はちょうどダウンが予想される400万円(額面)をひとつの目安と考えていいでしょう。
 
次に(2)ですが、繰上返済はすべきでしょう。住宅ローンは完済58歳と定年前に終わりますが、現状では資金的に余裕もありますので、支払利息を軽減する意味でも積極的にしたいところです。
 
優先するのは、利息が高い自動車ローン。残高も住宅ローンの4分の1程度ですから、完済してより早く家計の固定支出を減らす効果も得られます。

年収がダウンしなければ、年間貯蓄300万円のうち、教育資金用に100万円、繰上返済用に200万円と振り分けます。2年で自動車ローンが完済できます。貯蓄ペースが相当高いわけですから、繰上返済によりシフトした資金の充て方が可能となるわけです。教育資金も10年で1000万円。下のお子さんが高校卒業前に十分準備ができてしまいます。
 
一方、年収がダウンした場合は、貯蓄額が少なくとも800万円を超えたら、その上積み分を繰上返済に回す。年収が下がったため、当然貯蓄ペースは落ちています。上のお子さんはあと8年で高校卒業ですから、教育費をまずは優先して確保しておくと安心でしょう。
 

アドバイス3 賃貸住宅はもっともリスクの高い投資

(3)のご質問は、繰上返済をするより、その資金を株式投資したいとのこと。ローンの金利より確実に高い利回りを得られるなら、その方が最終的には資産は増えます。しかし、それが保証されている投資商品はありません。余裕資金で行うということが、投資を行う際の必須条件となります。
 
具体的には、教育資金を準備し、自動車ローンも住宅ローンも完済し、残った老後資金が十分足りている場合、ということになります。したがって、年収がダウンしてしまうと、ほぼ余裕はないことになります。しかも、太陽光発電もいわばリスクを取って収入を得ているわけですから、投資でさらにリスクを取ることは、先に述べましたが、余裕がない限りおススメはしません。
 
ただし、それより気になったのが、太陽光発電の土地に賃貸住宅を建てることも検討とのこと。立地について詳細は不明ですが、それまで太陽光発電をしていた場所が都市部であったり、駅から近いなど便利な生活圏であるとは考えにくい。つまり、長い期間、安定して家賃収入が見込めるかどうかという点で、賃貸住宅には適さない可能性が高いということ。それでなくとも、賃貸住宅は飽和状態です。

新たに賃貸住宅を建てるということは、新たに億単位のローンを組みます。それなら、株式投資の方がまだリスクが低いと思います。仮名のとおり「普通が一番」とお考えなら、さらに高いリスクは取るべきではないと考えます。
 
最後に(4)について。学資保険にあえて加入する必要はありません。定期預金で十分です。
保険で加えていうと、もしデータどおり奥様の保障が何もないなら、少なくとも医療保障は確保してもいいと思います。単体の医療保険か共済保険でも構いません。入院給付は日額5000円で十分。保険料負担は月2000円ほどで済みます。
 

相談者「普通が一番」さんから寄せられた感想

アドバイスありがとうございました。教育資金を積み立てるという意識がなかったため、参考になりました。世帯年収は維持できるように努力したいです。しばらくは投資はせず、貯蓄アップ優先で進めたいと思います。

★マネープランクリニック編集部では貯蓄達人からのメッセージを募集中です★

教えてくれたのは……
深野 康彦さん
 
 

 


マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。近著に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など

取材・文/清水京武



【関連記事をチェック】
48歳、貯蓄5500万円。働き方改革で夫は収入減、教育費のピークも目前です
40歳貯金650万円。働き方改革で夫の残業代がなくなり手取りが8万円減
夫婦ともアラフォー、貯金190万。教育資金や老後資金が不安
41歳貯金500万。家計簿をつけず教育費の準備が心配に
42歳貯金80万円。老後に1000万円あれば安心できる?
【編集部からのお知らせ】
・「家計」について、アンケート(2024/5/31まで)を実施中です!

※抽選で30名にAmazonギフト券1000円分プレゼント
※謝礼付きの限定アンケートやモニター企画に参加が可能になります
  • 前のページへ
  • 1
  • 2
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます