コーヒーの飲み過ぎは体に悪い? 健康被害の報告はあるのか
健康にもいいというさまざまな研究があるコーヒーですが、中には「飲み過ぎるとがんになる」「発がん性がある」といった心配をされている方もいるようです。こういった言説はどこから出てきたものなのでしょうか?信頼できるデータで、コーヒーに発がん性があると指摘しているものは見つけられませんでしたが、多少古い論文で、以下のようなものがあります。1983年に三崎文夫氏らによって発表された『消化性潰瘍のリスク・ファクターに関する疫学的研究』(※1)には、以下の記載があります。
「アルコールとコーヒーについては摂取量と潰瘍の間に用量反応性を認めることができなかった. ただし,コーヒーを多く飲む者は十二指腸潰瘍への危険率が有意(p<0.025)」
コーヒーによって十二指腸潰瘍のリスクが高まるという記載です(ただし被験者によるバイアスがかかっている可能性もあります)。こういった発表からコーヒーの健康リスクが不安視されるようになったのかもしれません。潰瘍については気をつけたほうがよさそうな気がしますが、がんに関する悪影響までいわれているものはないようです。
コーヒーは自律神経に悪影響を及ぼす?
2012年の種村一識氏らの発表(※2)によると、「コーヒーを飲むと胃の活動や自律神経活動が活発になる」と書かれています。寝る前など、胃や自律神経の活動が活発になるとよくないタイミングなどに限れば悪影響といえるかもしれません。しかし普通に考えれば、「活動が活発になる=悪影響」ではありませんので、コーヒーが自律神経に悪影響を及ぼすといったことは過度に心配されなくてもいいでしょう。コーヒーのカフェインは有害か
2014年の中村万理子氏の発表(※3)によると、大学生のカフェインの過度の摂取が不眠をもたらす可能性があるとされています。大学生のような、肉体的にも精神的にも人間がもっとも元気であろうと考えられる年代の人で不眠をもたらすということは、壮年期などの人の場合、ちょっと心配ですね。カフェインの影響については適宜配慮しながら、健康的な睡眠の妨げにならない量と時間帯で楽しむのがいいでしょう。
コーヒーは肥満の元? 甘いコーヒーが好きでも無糖にすべきか
コーヒーに入れる砂糖やミルクのカロリーは、- スティックシュガー1本(4g)=約16キロカロリー
- ミルクポーション1個(3ml)=約7キロカロリー
砂糖は控えたいもののブラックコーヒーは苦手で甘みがほしい方に対しては、以前はゼロカロリー甘味料をお勧めしていました。しかし最近ではこれらの甘味料は糖尿病学会でも推奨されていません。難しいところですがあれこれ難しく考えず、1回だけ素直に砂糖を入れるのが正解かもしれませんね。
また、甘みがほしくならない好みのフレーバーのコーヒーを探すほうがいいような気がします。私も自宅で気に入った豆を使って入れるコーヒーは砂糖もミルクも入れませんが、外でいただくときは、「これはミルクがほしい」と思うときがありますので。
コーヒーは1日何杯までが適量か
コーヒーの健康への影響を考えた適量については、論文によって差があります。3~5杯程度までが健康にいいと書かれていることが多いような気がします。インスタントコーヒーや缶コーヒーでも健康リスクは心配しなくていい?
通常のドリップコーヒーではないスティックコーヒーやインスタントコーヒー、また、コンビニや自販機でも手軽に買える缶コーヒーやペットボトル入りのコーヒーを愛飲している方も多いでしょう。これらに関しても特別健康を害するといった報告はありませんので、通常のコーヒーと同じように考えていいと思います。ただし、缶コーヒーやペットボトルのコーヒーは砂糖やミルクが多めに入っているものも散見されます。カロリーには注意するようにしましょう。
砂糖・ミルクはほどほどに、安心してコーヒータイムを
以上、今回はコーヒーの健康リスクについて解説しました。コーヒーが好きな人も普通に楽しむ分には問題がないと思いますのでご安心ください。また、コーヒーに含まれるクロロゲン酸は、コーヒー独自のポリフェノールで健康効果が高いと考えられていますが、上記の論文などを見てもやはりコーヒーを飲むのが不安だという方は、もちろん無理をしてまでコーヒーを飲む必要はありません。緑茶や紅茶などにも別のポリフェノールがたっぷり含まれていますので、それらの飲料をコーヒーの代わりに楽しめばいいのです。コーヒーを愛飲している方は、砂糖やミルクの使い過ぎには注意してくださいね。■参考文献
※1 三崎 文夫, 林 恭平ら:
消化性潰瘍のリスク•ファクターに関する疫学的研究, 日本消化器病学会雑誌, 1983 年 80 巻 12 号 p. 2504-2511
※2 種村 一識, 松永 哲郎ら;コーヒー摂取が胃運動および自律神経活動に与える効果の検討, 日本栄養・食糧学会誌, 2012 年 65 巻 3 号 p. 113-121
※3 中村万理子;大学生の心身健康状態と睡眠状況の臨床心理学的研究,臨床教育心理学研究, 2004年, 30(1), 107-122,