お金の悩みを解決!マネープランクリニック/60代以上の人のお金の悩み

61歳貯金1億1000万円。20代の娘がニートになりそうで不安です(2ページ目)

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、昨年定年退職をした61歳の男性。20代のお子さんがアルバイトのままで、親の資金的援助が必要な状態。このままではニートになってしまうのではと不安とのこと。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

あるじゃん 編集部

執筆者:あるじゃん 編集部

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 アドバイス1 海外旅行をしても資産は十分に遺せる

ご相談はお子さんのマネープランについてですが、ペトロさんご夫婦の今後のキャッシュフローによってそれはほぼ決定されると言えますから、まずはそこから試算してみます。
 
収入については、公的年金が支給されるまで、投資商品の配当のみ。税引後の額で年間170万円あるとのことですから、年間生活費およそ310万円に対して、不足額は140万円。63歳になるまでの2年間では280万円。

63歳以降は公的年金の支給が始まり、65歳までは報酬比例部分と思われますが、それが年間140万円。これが額面であれば、手取りは110万~120万円。これに配当が加わりますから、年間の不足額は20万~30万円。2年間で50万円前後となり、65歳までは生活費として貯蓄から330万円程度取り崩すことになります。
 
65歳以降は公的年金と終身の個人年金保険から年金が支給されますので、世帯収入としては手取りで340万~350万円といったところ。生活費が今と変わらなければ、月3万円程度の貯蓄ができる計算になります。このまま変わらず収支が推移すると、ご夫婦90歳のときに今の金融資産より600万円程度、100歳900万円程度増えています(投資商品の評価額、配当金額は変わらないとする)。
 
ただし、普段の生活費以外の大きな支出として、ご夫婦で年1回、2週間のヨーロッパ旅行を希望されています。予算は書かれていませんが、内容によって100万~200万円と費用は幅広く、ここでは便宜上中間の150万円とします。何歳まで旅行をされるかは不明ですが、あと10年であれば1500万円。
 
あとは住宅のリフォームとクルマの買い替え費用でしょうか。ともにコストに幅がありますが、とくにリフォームに関しては木造で築30年ということですから、水回りだけでは済まない可能性があります。バリアフリーの仕様にする必要性も考えられます。さらに、お子さんが住んでいる自宅も修繕、リフォームについても考慮しておくべきかもしれません。

しかし、これらは予算に応じて調整できる部分でもありますので、ここではまとめてざっと1000万円と、やや多めに設定しておきます。
 
したがって先の旅行費用と合わせて2500万円。これを貯蓄から差し引きます。それでも、計算上は90歳の時点で9000万円程度の金融資産が手元に残ることになります。お子さんに金額的にどれだけ遺したいのかは不明ですが、これに不動産もあるのですから、一般的に十分と言える範囲だと考えます。
 
ちなみに現在支払われている、ペトロさんの終身保険と個人年金保険の保険料。資金的に十分余裕はありますから、ともに一括前納してしまっていいと思います。
 

アドバイス2 暦年贈与がもっとも手軽で効率的

では、具体的にどのようにこの資産をお子さんに遺すか。ペトロさん自身、いろいろ思案はされていると思いますが、税金が抑えられるという観点でいえば、もっとも手軽に、かつ効率的に遺すなら、暦年贈与の利用となります。贈与の基礎控除額に該当するもので、受贈者1人当たり、年間110万円まで贈与税が発生しません。

ただし、これを定期的に継続すると、まとめて贈与したとみなされる(連年贈与)ケースがないわけではありません。信託銀行ではそれを防ぐ、「暦年贈与信託」という商品もありますが、コストが発生する場合があります。多少手間はかかりますが、ご自身で暦年贈与が継続できるよう工夫(贈与契約書の作成など)すれば大丈夫でしょう。
 
また、もしも結婚が決まれば「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」が利用できます。結婚・育児費用として1000万円(結婚費用は300万円)までの贈与が非課税となりますが、制度は現時点で2021年度末までとなります。
 
生前贈与に課題があるとすれば、大きな点では2つ。

まず、現実問題として、有利に生前贈与を進めても、残る資産は相続となります。株式等の配当収益を将来お子さんが得られるようにするなら、現在の投資商品は基本的にそのまま手をつけずに相続という形になりますから、評価額が変わらなければ、それだけで確実に相続税が発生します。これに現金や不動産もあります。仮にお子さんへの相続財産が評価額で5000万円なら、発生する相続税は160万円。7000万円なら480万円。当然、相続財産が増えれば額は大きくなりますが、これはある程度仕方がないと割り切るしかないと考えます。
 

アドバイス3 生前贈与が「プラス」かどうかは親子で判断

もうひとつが、先に示した「贈与」による資産の譲渡がお子さんにとってプラスかどうかも、考慮すべき部分かもしれません。お子さんの方向性として望ましいのは経済的な部分も含めての「自立」だと、おそらくペトロさんもお考えだと思います。今のうちからまとまった資金を与え、それが果たして自立を阻害しないだろうか。その資金が浪費に終われば、お子さんのためになるとは考えにくい。心配されているニートを助長することも否定できないでしょう。
 
生前贈与の是非については、ご家族が判断するしかありません。お子さんがどのような生活をし、どういう意識を持っているのか。
 
ただ、正社員を目指しているものの、上手くいかずコンビニでアルバイトをされているとのこと。しかし、コンビニは仕事の幅が広く、アルバイトであっても生半可ではできません。しかも、家賃はかからないものの、その他の生活費は自分の稼ぎから捻出しているのですから、一概にニートとは言えない面もあると感じます。
 
正社員に固執して、それによってストレスや負い目を感じるより、どういう働き方であれ、長く働き続ける、継続的に収入を得る形を自身で確保していく方が、お子さんとっては望ましいかもしれません。もちろん、それについては親として、あるいはお子さん自身の考えがあるはず。まだ、時間的な余裕はありますし、選択肢もいろいろあります。すぐに正解を見つけようとせず、とりあえず暦年贈与を続けながら様子を見る、あるいは親子で対話しながらベストな形を模索されてはどうでしょう。
 

相談者「ペトロ」さんから寄せられた感想

子どもとはいっても他人であり、将来のことですので、考えが全くまとまりまりませんでしたが、アドバイス頂きましたお陰で整理できました。本当にありがとうございました。ご賢察のとおり、私は節約して娘に沢山遺すことを考えていた一方で、生前の贈与が自立の妨げになることを懸念していました。できるだけ良い生活をするには正社員と考えていましたが、コンビニのバイトもちゃんとした仕事であり、娘が無理なく続けられるなら良いとして考えを改めます。

煎じ詰めれば娘の老後のお金の問題になりますので、資金的サポートはこのためとします。暦年贈与は将来への投資につながるのが良いのですが、まずは娘と生き方も含めて対話してみます。彼女は疲れている様子ですので、あせらずじっくりですね。相続は老後の配当生活に必要な投資資産と不動産だけにして、相続税は私の生命保険で充当してもらうことにします。残りは自分達の長生きのために使えそうで安心しました。

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教えてくれたのは……
深野 康彦さん
深野康彦


マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。近著に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など


取材・文/清水京武

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