それでも、雇用した以上は離職を防ぎつつ、彼らを戦力にしていかなければなりません。そこで、最近の若者気質を紐解きつつ、どう接していけばよいかについて提案したいと思います。
今の若者は、リーダー世代とどう違う?
最も特徴的なのが、異常なまでの承認欲求の強さです。自分を見てほしい、自分を認めてほしいという感情が、今の中高年世代よりはるかに強いといえます。そして、こうした承認欲求の強さの裏返しに、承認されないこと、つまり自分を否定されることを極度に恐れます。周囲からの評価が高くないといけないというプライドから、叱られること、失敗することは自分の評価を下げることになり、それが我慢できません。
それに加え、叱られた経験自体が少ないために、打たれ弱いのも大きな特徴の1つです。「何でその程度のことで落ち込むんだ」という軽い叱責であっても、耐えがたいほどの苦痛に感じます。
それくらいナイーブで、「叱られる=自分を否定される」と受け止めてしまうのです。ちょっとキツく言われただけで精神的に大きなショックを受け、ひどく落ち込むことがあります。
自己を正当化するのは、自尊心を保つため
あるいは逆の反応を示す人もいます。無価値でないと思われたくない、見下されたくないという思いが強いために、叱られると過剰な自己正当化行動、保身反応が現れる人がいます。たとえば、ちょっと注意すると反抗的な態度を示したり、言い訳したり、すねたり、謝らなかったり、自分のせいじゃないと責任転嫁したりするのはそのせいです。彼らはそうやって自分を守らなければ、自尊心が維持できないのです。
さらに、それが高じて「パワハラだ」などと、人事や総務に駆け込んだりする人もいます。何かあるとすぐにネットにさらされ炎上し、売上や株価などにも影響する時代ですから、企業はパワハラやセクハラには神経質で、各種ハラスメント対策の管理職研修などを行っています。
こういった背景もありリーダーは、何がセクハラと言われるかわからずにビクビクし、だったらあまり話しかけないほうがよいと考え、女性社員と距離ができてしまうのです。
今どきの若者気質を踏まえた育成を
いずれにせよ、バブル崩壊後の就職氷河期に入社した人たちは、比較的ストレス耐性があります。一方、近年の売り手市場で入社した人たちは、挫折を味わった経験が少なく、非常に打たれ弱いという側面を持っています。そのため、仕事でミスをしたり叱責されたりすると、周囲が思う以上に傷つき、落ち込みます。彼らは自分の実力のなさが露呈し、評価が下がるのが怖いのです。 草食系と言われるのもそのためで、最近の若者はほぼ「傷つきたくない病」にかかっているといっても過言ではありません。だから、今の中高年世代が受けてきたような叱り方をすると、すぐに会社を辞めてしまうのです。
ただしこれは、一般的な若手社員のおおよその傾向をわかりやすいよう、ちょっと誇張した表現ですから、もちろんそうでない若手もいます。とはいえそんな部下は、育成で頭を抱えさせられる場面などほとんどなく、勝手に育ってくれるものです。
最初は仕事の責任など、わかっていないもの
ちょっと残業が続いただけで「ブラック企業だ」と騒ぐことがあります。ブラック企業に対する報道、そしてバッシングが後を絶ちませんから、ちょっとしんどい扱いを受ければ、「ブラック企業だと言ってもいいんだ」と思って自分を守ろうとします。あるニュースでは、20代の3人に1人は自分が勤めている会社を「ブラック」「どちらかというとブラック」と思っているそうです。
しかし、これもやむを得ないのです。学校の先生はみな優しく、手取り足取り教えてくれたからです。でもそれは当然で、学校や教師にとって、生徒は客だからです。学生時代はお客様扱いで、守られた世界しか知らずに社会に出て、いきなり8時間、10時間と仕事を強いられるわけですから、心身ともに耐える力がないのです。
さらに、学校で自己責任を迫られる場面は少ないですから、義務を果たさず権利を主張することに何の抵抗もないのでしょう。アルバイトの経験すらなければ、仕事をするという責任、対価として給料をもらうことを理解することもありません。
叱られたときに「自分だってがんばっています!」と逆ギレするのもこういう人で、仕事の評価は自分でするものではなく、周囲にされるものだということがわからないのです。
部活などをやっていなければ、努力して能力を高めるという経験が少なく、「上達には努力が必要」ということを実感していない場合もあります。運動部出身の社員のほうがガッツがあるのは、そういう経験も役立っているのかもしれません。
そもそも、自分に負荷をかけなければ精神的にもスキル的にも、仕事の実力はつかないということが理解できず、努力することを面倒くさがる傾向があります。
仕事の意味を一つひとつ丁寧に説明する
また、昨今の若者は中学高校の頃から個性や自分らしさを求められ、大学に入ってもキャリアデザインとか好きなことを仕事になどと聞かされ、就職活動をしてきたため、自分のキャリアに貢献しそうな仕事や、やりたい仕事以外はやりたがらない傾向があります。彼らが言う「面白い仕事」というのは、どこか遊びやクラブ活動などで感じる面白さを期待しているようなところがあります。
しかし、現実はそうではないから「こんなはずじゃなかった」「こんなことをするためにこの会社に入ったのではない」と落胆し、辞めていく人も少なくありません。
社会に出ると上司は先生ではないし、会社は学校ではないことを理解しておらず、会社に入れば上司や先輩がいろいろ教えてくれ、会社が自己実現させてくれるものだなどと、過剰な夢を持って就職してきているため、現実にぶつかって戸惑います。
なかには、泥臭い地道な仕事をバカにするあまり、社外の勉強会や資格取得に逃げる人もいます。やる気はあるけれども、それが目の前の仕事に向かわないで、青い鳥を探してしまうのです。
半面、リーダー世代は、そこをぐっと耐えて働いているうちにできることが増え、いろいろ任せてもらえるようになり、仕事が面白くなってきたことを経験として体感しています。
また、さまざまな人間関係に揉まれ、自分が仕事の指示をするようになれば、社会や会社の矛盾や理不尽を理解し、受け止められるようになり、ごちゃごちゃ言わずにがんばることの大切さも実感しています。
リーダーは根気がない若手を「導く根気」が必要
しかし、今の世代に「黙って仕事しろ!」などと言っても、言われた方はむくれるだけでしょう。そこで、それをうまく言語化し、説明しなければなりません。たとえば、仕事の面白さは、しんどいことを乗り越えていく達成感、成長していく充足感であり、数日や数カ月程度でわかるようなものではありません。だから性急に面白さを求めていては、ジョブホッパーまっしぐらの危険性をはらんでいるといえます。
偏った仕事だけをしていては、視野が狭くなって仕事の総合的な実力がつかず、将来スキルニーズや環境変化によって、使いものにならなくなるリスクがあります。
企業の内外で発生する雑務を含む多くの仕事を経験することが、バリューチェーンやワークフローを含めた業務全体を把握・理解することにも役立ちます。
それに今の自分が想像できる範囲以外の能力は、やってみないと開花しません。そういったことを押しつけがましくなく、説教くさくもないよう、仕事の実力をつけるとはどういうことなのかを教えてあげる必要があります。
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