妊活・子作り・妊娠準備

出生数が過去最少の中、45歳以上で産む人が増えている背景

厚生労働省の平成30年人口動態統計によると、出生数は91万8400人で過去最少を更新しました。一方、母の年齢(5歳階級)別でみると、15~44歳の各階級では前年より出生数が減少しているものの、45~49歳及び50歳以上では増加しています。その背景には不妊治療や周産期医療の技術の進歩が考えられます。

清水 なほみ

執筆者:清水 なほみ

産婦人科医 / 女性の病気ガイド

出生数が過去最少を更新する中、45歳以上の出生数は増加

厚生労働省の平成30年人口動態統計によると、出生数は91万8400人で、前年の94万6146人より2万7746人減少、3年連続で100万人を割り、過去最少を更新しました。

これを母の年齢別(5歳階級)にみると、15~44歳の各階級では出生数が前年より減少している一方、45~49歳と50歳以上では増加しています。10年前、20年前と比べても増加傾向が明らかです。
母の年齢別出生数では、45~49歳、50歳以上の出生数が増加 出典:厚生労働省「平成30年人口動態統計」

母の年齢別出生数では、45~49歳、50歳以上の出生数が増加 出典:厚生労働省「平成30年人口動態統計」

 

40代後半、50歳以上の出生数が増えている背景

40代後半や50歳以上の出生数が増えている大きな理由として、不妊治療や周産期医療の技術の進歩が考えられます。45歳の時点で自然妊娠する確率は200分の1と言われています。つまり、何も治療しなければ40代後半以降で妊娠・出産に至る確率はとても低いのです。

また、医療技術が不十分であった時代には助けられなかった命が助けられるようになったことも、「出産」までたどり着けるようになった要因と言えるでしょう。

下図の不妊治療の年次推移をみると明らかなように、不妊治療の件数は急増しています。(※下記は少し古いですが、日本産科婦人科学会が実施する生殖医学の臨床実施に関する調査 ARTデータブックでは「2007年から2016年の 年齢別 治療法別 詳細」も紹介されています)。
 
不妊治療の年次推移

1985年~2010年の不妊治療の年次推移
不妊に悩む方への特定治療支援事業等の あり方に関する検討会 参考資料より(厚生労働省)


中でも注目すべきは「凍結融解胚」の件数です。凍結融解胚とは、受精卵を凍結しておいて、使いたいときに体外受精に使うという方法です。例えば、42歳の時に不妊治療を行って、凍結胚が5個保存できた人が、1回目の体外受精で妊娠すると、残りの4個は数年間保存しておくことができます。卵子の年齢は、凍結した時の年齢ですから、42歳の時の卵子を使って45歳以上で妊娠することが可能になります。
 

高齢出産のリスク・メリットを理解して、今が私の適齢期と言えるように

高齢妊娠には、母体側にそれなりのリスクが伴いますから、一概にすすめることはできません。しかし、「人生70年時代」と「人生100年時代」では、もしかしたら、妊娠の適齢期も異なってくるかもしれないのです。

高齢で妊娠・出産をするメリットは、経済的余裕や精神的余裕があげられます。ある程度仕事のキャリアも積んだ後であれば、産休や育休時の仕事のブランクもそれほど支障にならずに済みますし、部下に仕事を任せることによって仕事の融通も利かせやすくなるかもしれません。

人生の折り返し地点で新たな命に出会えるということが、自分にとってどのような意味を持つのか。高齢であるリスクを「見て見ぬふり」をするのではなく、それらときちんと向かい合ってこそ、「今が私の適齢期」と胸を張って言えるようになるのではないでしょうか。

【参考情報】
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