学費・教育費

新たな民間の給付型奨学金「キーエンス財団」に注目!

2018年新たな民間奨学金として「キーエンス財団」が設立されました。多くの学生に門戸を開き、月間8万円を4年間給付といった手厚い支援内容です。今回は、奨学金に関する民間の動きとキーエンス財団の詳細について見てみます。

久米 忠史

執筆者:久米 忠史

大学生の奨学金ガイド

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急増している民間奨学金

日本学生支援機構は公的な奨学金の代表例ですが、企業やその創業者の寄附金などを基にした民間奨学金も数多くあります。
 
民間奨学金は、財団法人などの公益団体、医療機関、営利企業などに分けられますが、日本学生支援機構の調査によると、公益団体と医療機関による奨学金が急増していることがわかります。
 
<奨学事業実施団体数>
公益団体 386団体(平成25年度) → 729団体(平成28年度)
医療機関 199団体(平成25年度) → 460団体(平成28年度)
※出所:日本学生支援機構「平成28年度奨学事業に関する実態調査報告」
 
わずか3年で、公益団体が1.9倍医療機関は2.3倍という増加率です。
ここで気になるのが、返済不要の給付型奨学金の割合です。
 
同調査によると、公益団体が実施する奨学金制度の70.2%が返済不要の給付型である一方、医療機関では92.8%が返済の必要な貸与型奨学金となっています。
 
医療機関の奨学金の大半が貸与型である理由は、看護や福祉分野でよく見られるように、卒業後に一定期間就業することで返済が免除となる、いわゆるお礼奉公型の奨学金制度であるためだと思われます。
 
奨学金の返済負担が社会問題になるなか、公益団体による民間奨学金の7割が返済不要の給付型というのは大きな魅力です。
 
それでは、いくつかの民間奨学金の内容を見てみましょう。

 

 民間奨学金の応募条件

民間奨学金では、実施団体それぞれに応募条件を設けています。
学生の立場からすると、果たして自分が対象となるのかどうかが一番気になるポイントだと思います。
 
電通育英会
一般と芸術枠がある。月額7万円の奨学金を給付。
さらに受験等助成金10万円、入学一時金30万円も給付。
【募集人数/対象条件】
・一般枠(70名程度)、芸術枠(5名程度)
・財団が指定する国公立高校の出身であり、財団指定の大学・学問領域への進学者
 
JT奨学財団
高校推薦、大学推薦枠がある。
入学金相当(30万円)と授業料相当(年額54万円)を給付。
さらに月額奨学金(自宅生5万円/自宅外生10万円(東京23区内在住12万円))を支給。
【募集人数/対象条件】
・高校推薦(40名)、大学推薦(10名)
・財団が指定する国公立大学の1年次の学生
 
三菱UFJ信託奨学財団
月額3万5000円を給付。
【対象条件】
・財団が指定する大学の2年次以上の学生
 
これらの奨学財団では、対象となる高校や大学を指定しているため、指定外の高校や大学の学生は申請することができません。しかし、これは決して珍しいことではなく、民間奨学金の一般的な形といえます。
 
次に、財団などの公益団体ではなく、企業そのものが奨学金に取り組んでいる例を見てみます。

 

奨学金の返済支援に取り組む民間企業

大学在学中に奨学金を支給するのではなく、入社後に社員の奨学金の返済支援に取り組む民間企業の動きが広がっています。
 
ブライダル・レストラン運営の㈱ノバレーゼ(東京都)では、若者世代の奨学金問題に早くに注目し、2012年には社員の奨学金返済支援を始めています。勤続年数に応じて最大200万円を支給するというものです。
 
2018年には、あおぞら銀行と大和証券グループが、若手社員の奨学金返済支援制度の創設を発表し、複数のメディアで報道されました。
 
検索エンジンで「奨学金返済支援」と入力すると、数多くの企業が取り組んでいることがわかります。
 
就職戦線では大学生の売り手市場が続くなか、人材の獲得と定着のための重要手段として、奨学金に着目する企業が急増しているのでしょう。
 
ここまでは、一般的な奨学財団の特徴や民間企業の動きを紹介してきました。
 
続いて、手厚い支援内容とオープンな応募条件が注目されている新たな民間奨学金を紹介したいと思います。

 

多くの大学生にチャンスを開く「キーエンス財団」奨学金

 
2018年6月、キーエンス財団が設立されました。
設立者である㈱キーエンス(大阪府)は、世界中に拠点を持つ精密機器のグローバル企業です。
イメージ画像

㈱ キーエンス本社ビル

キーエンス財団の特長は、在籍する大学を指定せず、卒業後の進路にも制限のないオープンな応募条件です。しかも、月額8万円(年96万円)の奨学金を最長4年間(384万円)給付するという手厚い支援内容となっています。
 
キーエンス財団
【奨学金の種類】返済不要の給付型
【給付額】月額8万円を最長4年間給付(合計384万円)
【募集人数】全国で125名程度
【対象】学部系統を問わず4年制大学の新入生
 
ポイント(1) 他の給付型奨学金との緩やかな併用条件
キーエンス財団奨学金は、他の民間や大学独自の給付型奨学金との併用は不可ですが、日本学生支援機構や自治体などの公的な給付型奨学金との併用は認められています。
また、大学独自のものでも、給付型奨学金ではなく授業料減免制度については併用を認めています。
 
ポイント(2) 財団への直接応募
キーエンス財団奨学金への応募条件は、大学や学部系統を指定しないオープンなものとなっています。そのため、申込みも在籍する高校や大学が窓口となるのではなく、希望者が財団に直接応募するかたちとなっています。
 
イメージ画像

キーエンス財団HP


2018年度から導入された日本学生支援機構の給付型奨学金(最大月額4万円)とキーエンス財団奨学金(月額8万円)と合わせると、給付月額は12万円(年間144万円)にもなります。
 
かりに貸与型奨学金との併用であっても、キーエンス財団の奨学生に採用されると、経済的負担は大きく軽減されるでしょうし、学業に向き合う励みにもなると思います。
 
広く門戸を開くキーエンス財団
経済的に厳しくとも、意欲のある学生には是非チャレンジしてほしい民間奨学金です。
 
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