台風による強風が原因の損害は補償される?
2018年は例年よりも多い29個の台風が発生しました。特に被害が大きかったのが、9月初旬に近畿を直撃した台風21号、そして同月末に再び直撃した台風24号でした。台風21号では、暴風によって大阪など都市部で車の横転が多発したのが、記憶に新しいところです。では、台風による強風が原因の損害について、代表的なケースを挙げてみましょう。
(1) 強風で車が横転した
(2) 強風で飛んできた物が車にぶつかり、車が損傷した
(3) 強風にあおられて他人の車と衝突し、車が損傷した
結論からいうと、これらの損害は車両保険で補償されます。車両保険にはいくつかタイプがあり、保険会社の多くは「一般型」と「エコノミー型(車対車+A)」の2つのタイプを用意しています。
「エコノミー型(車対車+A)」は補償の対象となる状況が一般型より限定されており、「電柱への衝突などの単独事故」や「他車との接触で相手が不明の当て逃げ事故」は補償されません。自転車との接触で自分の車に損害が生じた場合も対象外です。一方、台風による強風が原因の損害は、「一般型」でも「エコノミー型(車対車+A)」でも補償の対象になります。
なお、(3)のケースで、相手方の車の損害に対する賠償は、台風のみを直接の原因とする場合には自動車保険で補償されません。このようなケースでは、法律上賠償する責任がないことが理由です。
洪水による損害は補償される?
2018年7月3日から8日にかけ、台風7号の接近や梅雨前線の停滞により、西日本や東海地方の広範囲で長時間の記録的な大雨となった「平成30年7月豪雨(西日本豪雨)」。長時間の豪雨により、河川のはん濫や土砂災害が多発した結果、車の損害も多発しました。大雨により水が河川や湖などからはん濫して起こる災害、あるいは雨水を河川に排水できず堤防の内側に滞留して起こる災害を「洪水災害」と呼びます。では、車が損害を受ける具体的なケースを挙げてみましょう。
(1) 近くの河川がはん濫して車が浸かった
(2) 車を停めていた機械式駐車場ごと水没した
(3) ガード下の冠水に気づかず車で突っ込んだ
(4) 土砂災害に車が巻き込まれた
このように洪水によって車が浸水・水没したケースは、車両保険の補償対象になります。洪水というと広範囲の浸水をイメージしがちですが、ゲリラ豪雨などにより局所的に雨水が溜まったことによる車の損害も補償対象になります。また、大雨などによる土砂災害も同様に補償されます。前述の「平成30年7月豪雨(西日本豪雨)」では、車両保険の事故受付件数が26,739件※にも達しています。
車両保険が「一般型」、「エコノミー型(車対車+A)」のどちらでも洪水による損害は補償対象になりますが、一部の保険会社では車両保険の補償範囲をより細分化して選べるため注意が必要です。例えば、ある保険会社では「自宅・車庫での水災」を外すという選択ができ、それにより保険料を下げることができます。しかし、車の通常保管場所における浸水・水没などの損害が補償されなくなることはきちんと理解して選ぶべきです(店の駐車場など通常保管場所以外に駐車している場合は補償されます)。車両保険が「一般型」、「エコノミー型(車対車+A)」のどちらでもないという人は、一度、補償範囲を正確に把握しておきましょう。
※参考:(2018年9月12日時点、日本損害保険協会ニュースリリース「2018年6月から9月に発生した地震・風水災に係る各種損害保険の支払件数・支払保険金等について」
津波による損害は補償される?
同じ「水」による損害でも、注意が必要なのが津波による損害です。地震の震源が海底下の浅いところの場合、海底面が持ち上げられたり、押し下げられたりして海面も上下に変化します。このような地震による海水の変化が周囲に波として広がっていく現象を津波といい、洪水とは区別されています。津波で車が流された場合や水没した場合など、津波によって生じた損害は、自動車保険では基本的に補償されません。津波は一度に巨大な損害を発生させる可能性があり、適切な保険料設定が困難なことが理由として挙げられます。ほぼすべての保険会社が地震、噴火、津波を原因とする損害を免責事項としています。
ただし、地震、噴火、津波によって車が全損となった場合、一時金が支払われる特約を「地震・噴火・津波危険車両全損時一時金特約」などの名称で用意している保険会社もあります。 また、全損の場合、車両保険金額が全額支払われ、全損時以外(一部損壊)も補償される特約を付帯できる保険会社も、ごく少数ですがあります(2019年1月時点)。
次のページでは、「地震、大雪による車の損害」について解説します。