住宅ローン減税の注意点とは?
過去の話になりますが、2018年に国税庁が発表したことによると、住宅借入金等特別控除(以下:住宅ローン控除)に関して、平成25年分から平成28年分までの所得税の確定申告書を提出した人のうち、最大で約1万4500人について申告誤りの是正が必要であることが判明したのです。住宅ローン控除を適用するためには、いろいろな要件を満たさなければなりませんし、決まった方法により控除額を計算しなければなりません。そこで、どのような点でミスがあったのかについて、利用する側としても改めて確認をしておきたいものです。
【ケース1】「住宅ローン控除」と「贈与税の住宅取得等資金の贈与の特例」を受けた
「住宅ローン控除」と「贈与税の住宅取得等資金の贈与の特例」(以下、「住宅取得等資金の贈与の特例」とする)ついて、あわせて適用を受けた場合の住宅ローン控除額の計算誤りがあったようです。新築や購入等した家屋を居住の用に供した年分又はその前年分において、その家屋を取得するにあたり贈与を受け、その受贈額について「住宅取得等資金の贈与の特例」の適用を受け、かつ、その家屋について住宅ローン控除の適用を受けるときは、住宅ローン控除額の計算上、「住宅取得等資金の贈与の特例」の適用を受けた受贈額を家屋の取得価額等から差し引く必要があるにもかかわらず、誤ってその減算をしていなかったというものです(国税庁HPより)。
<例>
3500万円のマンションを購入した際に、親から500万円の贈与を受け、住宅ローンを3200万円(年末残高3100万円)組んだ場合。
親からの贈与がなければ……
購入金額3500万円 > 住宅ローン(残高)3100万円 のため、3100万円をもとに計算することになります。
ところが、親からの贈与があり、「住宅取得等資金の贈与の特例」を受けていると……
購入金額3500万円-親からの贈与額500万円=3000万円 < 住宅ローン(残高)3100万円となり、3000万円をもとに計算するほうが正しいということになります。
結果、100万円が過大となり、その1%の1万円が過大控除(還付)となっていることになります。
【ケース2】「住宅ローン控除」と「居住用財産譲渡の特例」との重複
「住宅ローン控除」と「居住用財産を譲渡した場合などの譲渡所得の課税の特例」(以下、「居住用財産譲渡の特例」とする)との重複適用があったようです。新築や購入等した家屋を居住の用に供した年分及びその前後2年分ずつの計5年分の間に、「居住用財産譲渡の特例」の適用を受けた場合には、その家屋について住宅ローン控除の適用を受けることができないにもかかわらず、適用を受けていたというもの(国税庁HPより)。これは、単純に、住宅ローン控除の適用ができないのに、適用してしまったケースなので、適用を受けた住宅ローン控除全額が過大控除(還付)となっていることになります。
なお、「居住用財産譲渡の特例」とは、主に以下の特例を指します。
- 居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例(措法第31条の3第1項)
- 居住用財産の譲渡所得の特別控除(措法第35条第1項※同条第3項の規定により適用する場合を除きます)
- 特定の居住用財産の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例(措法第36条の2、措法第36条の5)
詳しくは、居住用財産の譲渡の特例とは?持ち家を売ったときに節税できる? も参照してみてください。
【ケース3】年収2000万超の人が「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税の特例」の適用ミス
贈与税の「住宅取得等資金の贈与の特例」のうち、「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税の特例」(以下、「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税の特例」とする)の適用における所得要件の確認もれもあったようです。国税庁HPによると、「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税の特例」については、その適用を受ける年分の所得税の合計所得金額が2000万円超である納税者は、その適用を受けることができないにもかかわらず、誤って適用を受けていたとのことです。
これは、住宅ローン控除ではなく、贈与税の話です。
まとめ・住宅ローン控除で注意すべきは?
税金を計算する際には、さまざまな要件等が存在します。その要件を見落とすと、後々想定外の納税が発生してしまうケースも珍しくありません。贈与税の特例を適用した方がよいのか、贈与額や住宅ローンはいくらにした方がよいのかは、専門家に相談するなどしてタックスプランニングを十分に検討しておきましょう。【関連記事をチェック!】
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