とくにこの話は会社員の友人にウケておりまして。というのも、そもそも「会社員の自分にとって、節税なんて話は関係ない!」と思い込んでいるみたいなんですな。
しかし、最近はiDeCoやらふるさと納税やら。会社員でも使える節税制度が充実してきております。これを使わない手はありません。
特に、個人的にオススメなのがiDeCoでして。「iDeCoほど優れた貯蓄制度は無い!(多分)」なんてことを、そこかしこで話しております。
iDeCoの話をすると、「iDeCoって、自営業の人のためのものでしょ?」と思う方もいます。たしかに、自営業の方にとって、iDeCoの節税効果はとんでもなくデカいです。でも、会社員の方にとっても、iDeCoはお得な制度なんですよ。
iDeCoの制度に関する説明については分かりやすいシリーズ記事があるので、そちらをご参照いただけたらと思います。
今回は、会社員の方にも向けて、iDeCoの素晴らしさを知るために、「iDeCoを使うとどれだけ得なの?」か、試算してみました。
会社員じゃない!という方へ
「そもそも自分は会社員じゃない!」「自営業なんだけど?」という方は、過去に自営業向けの節税効果をまとめた記事を作成しました。こちらの方が役立つと思いますので、ぜひお役立て下さい。↓
【自営業向け】iDeCoは何百万円得?試算してみた
また、自営業の方が使える節税制度は沢山あります。iDeCoだけしか使わないのでは勿体無いので、複数を組み合わせて使うとよいでしょう。ぼく個人は、4つの節税制度を組み合わせることで、月々15万円ほど節税しています。具体的な方法は以下の記事でまとめてありますので、こちらもご参照下さい。
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【自営業必読!】毎月15万円を節税する方法
iDeCoは何万円得?(積み立て時の所得控除編)
さっそく、iDeCoがどれくらいお得な制度なのか、試算してみましょう。まず確かめたいのが、「積み立て時の所得控除」による節税効果です。iDeCoに加入すると、毎月の積み立て額が、所得税および住民税の控除の対象になります。それこそ、いつも所得の20%が税金で取られている人は、10万円の積み立てをすることで、2割の税金を支払わずに済みます(=2万円得!)。
そこで今回は、平均的な会社員が、どれくらいの控除を受けることができるのか、試算してみます。
まず、一般的な会社員の方は、iDeCoで月々最大2万3000円までのお金を積み立てることができます。企業年金がある方の場合は月々1万2000円までとなる方もいますが、ここでは毎月2万3000円を積み立てた場合をモデルとして、節税効果を確かめます。
積み立て時の節税額の大きさは、その人の所得の大きさによって変わります。今回は平均的な会社員を例にして、節税効果を確かめることにします。
転職サービスdodaの調査(1)によると、日本の会社員の平均年収は、年代別に見ると、下記のように推移するようです。
- 20代の平均年収:346万円
- 30代の平均年収:455万円
- 40代の平均年収:541万円
- 50代の平均年収:661万円
このとき、会社員が、毎月2万3000円、満額をiDeCoで積み立てた場合の節税額を算出しました。加入した年齢ごとの節税効果の大きさは、下記のとおりです。
●50歳でiDeCoに加入し、10年間、満額での積み立てを続けた場合
節税総額 = 積み立て額 × 積み立て月数 × 控除資金に係る税率
= 2万3000円/月 × 120カ月 × 15%
≒ 約40万円
●40歳でiDeCoに加入し、20年間、満額での積み立てを続けた場合
節税総額 = 積み立て額 × 積み立て月数 × 控除資金に係る税率
≒ 2万3000円/月 × 240カ月 × 15%
≒ 約80万円
●30歳でiDeCoに加入し、30年間、満額での積み立てを続けた場合
節税総額 = 積み立て額 × 積み立て月数 × 控除資金に係る税率
≒ 2万3000円/月 × 360カ月 × 15%
≒ 約120万円
●20歳でiDeCoに加入し、40年間、満額での積み立てを続けた場合
節税総額 = 積み立て額 × 積み立て月数 × 控除資金に係る税率
≒ 2万3000円/月 × 480カ月 × 15%
≒ 約160万円
ちなみに、15%の控除額は「非常に大きいのだ!」ということを覚えておくとよいです。最近の論文(2)では、株式投資の平均利回り(リスクプレミアム)は年率4~5%だ!なんて話もあります。15%の節税と言えば、3~4年分の利回りに相当する節税効果です。
個人投資家の運用実績は平均利回りよりも悪い!なんて話もありますから、実質的な効果は、もっと大きいでしょうな。
iDeCoは何万円得?(資産運用による売買差益編)
通常、株式投資などで得られた売買差益は、約20%の課税がなされます。たとえば、100万円の利益が出たら、20万円は税金で取られてしまいます。しかし、iDeCoでは、資産運用で得られた売買差益についても非課税にすることができます。上記の例のように、100万円の利益を出した場合は、「20万円の税金を支払わずに済む(=20万円得をする)」計算です。
iDeCoの節税効果を最大限に高めたい方は、「積み立て資金をすべて株式の投資信託に回す!」のが効果的です。一般的に株式投資は預金よりも利回りが高く、平均利回り(リスクプレミアム)は年あたり4~5%と言われています。
預金として預けておくだけではお金は増えませんが、株式投資の場合は、長い目でみれば年利4~5%ほど成長すると期待できます。iDeCoではせっかく節税できるのですから、預金として預けておくよりも、株式の投資信託を買った方がお得では?と思います。(もちろん、リスクが伴うので実践する場合は自己責任ですが)
そこで、ここでは、仮に「積み立て資金のすべてを株式の投資信託に回し、平均的な利回り(年率5%)で運用することができたら、いくらの節税効果が見込めるのか?」を試算してみます。
資産が順調に年率5%のペースで増えた場合の節税効果を、加入した年齢ごとに試算しました。試算の結果は、下記のとおりです。
●50歳でiDeCoに加入し、10年間、満額での運用(年率5%)を続けた場合
節税総額 = (運用後の資産総額 − 積み立て総額)× 売買差益税率
≒ (356万円 − 276万円) × 20%
≒ 約16万円
●40歳でiDeCoに加入し、20年間、満額での運用(年率5%)を続けた場合
節税総額 = (運用後の資産総額 − 積み立て総額)× 売買差益税率
≒ (935万円 − 552万円) × 20%
≒ 約76万円
●30歳でiDeCoに加入し、30年間、満額での運用(年率5%)を続けた場合
節税総額 = (運用後の資産総額 − 積み立て総額)× 売買差益税率
≒ (1880万円 − 828万円) × 20%
≒ 約210万円
●20歳でiDeCoに加入し、40年間、満額での運用(年率5%)を続けた場合
節税総額 = (運用後の資産総額 − 積み立て総額)× 売買差益税率
≒ (3417万円 − 1104万円) × 20%
≒ 約460万円
※初年のみ、利回りは半分(年率2.5%)として算出
以上が、会社員の方が、満額を株式投資(年率5%)で運用できた場合の節税額です。本当にこのとおりの結果が得られるかは保証できませんが、「過去と同じ利回り」が実現できれば、これだけの節税効果が期待できるでしょう。
資産運用による節税効果は、長期投資による複利効果により、「若い人ほど節税効果が大きい!」とも言えます。ですから、若い人こそ、早くiDeCoを始めるべきなのでは?と思いますな。
まとめ
ここまでの話をまとめると、年代別の節税効果は以下のように計算できました。●50歳でiDeCoに加入し、10年間、満額での運用(年率5%)を続けた場合
節税総額 = 所得控除による節税額 + 売買差益分の節税額
≒ 40万円 + 16万円
≒ 56万円
●40歳でiDeCoに加入し、20年間、満額での運用(年率5%)を続けた場合
節税総額 = 所得控除による節税額 + 売買差益分の節税額
≒ 80万円 + 76万円
≒ 156万円
●30歳でiDeCoに加入し、30年間、満額での運用(年率5%)を続けた場合
節税総額 = 所得控除による節税額 + 売買差益分の節税額
≒ 120万円 + 210万円
≒ 330万円
●20歳でiDeCoに加入し、40年間、満額での運用(年率5%)を続けた場合
節税総額 = 所得控除による節税額 + 売買差益分の節税額
≒ 160万円 + 460万円
≒ 620万円
若いうちにiDeCoに加入して、上手に節税できれば、20歳や30歳から始めれば「高級車1台」、40歳から始めれば「世界一周旅行1回分」、50歳から始めれば「海外旅行2~3回分」くらいは浮きそうです。
ここでの計算では、投資信託の運営に係る経費や、iDeCoの運営費といった経費やら、受取時の詳細が反映されていません。ですから、楽観的な金額であることはご承知おき下さい。とはいえ、「会社員にとっても節税チャンスが大きい!」ことが、お分かりいただけたでしょう。
ちなみに、iDeCoの魅力が分かっても「毎月2万3000円も貯められるか、不安だなぁ…」と思う方は、オススメの節約術があります。この方法を使うことで、ラクラク貯金できると期待できますので、こちらも併せてご活用いただけたらと思います。
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リスクゼロで確実に不労所得を作る4ステップ
●参考文献
- ウェブサイト:転職サービスdoda, 2017, "平均年収ランキング2017【年齢別】", 2018年11月23日時点
- 論文:山口勝業, 2016, "株式リスクプレミアムの時系列変動の推計 --日米市場での62年間の実証分析", 証券経済研究, 93, pp. 103-111