アントワープの「デルレイ 本店」へ行こう!
「デルレイ」。この言葉を聞いたらチョコレートファンなら、あの「ダイヤモンドショコラの!」となることでしょう。 本店がアントワープにちなんだダイヤモンド型のチョコレートや、ショーケースに並ぶボンボンショコラの数々、そして大人気のソフトクリームを思い出す方も多いかもしれませんね。私ももう、ずいぶん前から「デルレイ」を知っています。銀座に初めてブティックがオープンしたのは2004年のこと。当時は東京に高級チョコレート店が次々とオープンし、中でも「デルレイ」にはひときわ高級感がありました。
日本上陸から14年。すっかり人気が定着した「デルレイ」ですが、意外とみなさんは、デルレイの本店はどんなところなのか、ご存知ないのではないでしょうか?
実は私がそうでした。よく知っているようで知らないかも……。デルレイが創業70周年を迎える、というタイミングが私の背中を押しました。よし、アントワープへ出かけよう。
そうと決めたら情報収集。ところが日本語のまとまった媒体記事はなかなか見つかりませんでした。もしかしたら、今回は初かもしれません。本店最新の様子をシェアしたいと思います。
アントワープの有名店「デルレイ」
ベルギー、アントワープ州の州都「アントワープ」。欧州を代表する港を持つ大都市であり、世界のダイヤモンド取引の中心地。
首都ブリュッセルから電車で40分くらいです。私はブリュッセルの中心部に滞在していたので、「ブリュッセル中央」駅でチケットを買って、いざアントワープへ。
美しいんです。とにかく。ドーム型のガラス天井。重厚な石造り。ゴールドの装飾が施された時計が、静かに時を告げています。私はしばらく駅構内に立ち止まっていました。
デルレイは駅から歩いて5分。すぐにお店が見つかりました。
初めて訪れたデルレイ本店!
格調高い佇まい。この辺りだけ、なんだか眩しいです。クラシカルでありそしてモダン。外からでも多くのお客さまで賑わっているのがわかりました。
ドアを開けて、お店に入るとうわあああーっとまた幸せに。
振り返ると、あぁ、ケーキも美味しそう……。
ケーキの精巧な作りに見入ります。ベルナール・プルートシェフによるケーキですから、美しさ以上に「美味しさ」に期待が高まります。すぐにあぁ、どれをいただこうかしら、と悩みはじめました。でもお隣には、マカロンや私の大好きなクッキーたちも……。気持ちが溢れそうになりながらショーケースに釘付けになっていたら、シェフとご家族が私を迎えてくれました。 「こんにちは。ご機嫌いかがですか?」
やさしい笑顔のベルナール・プルートシェフ、そして奥様のアンナさん、そして長男のヤンさんです。
ベルナール・プルートシェフはご存知のとおり、ルレ・デセールの会員でもある、有名なパティシエ・ショコラティエです。お隣で微笑むアンナさんは赤いジャケットがお似合いでジュエリーもおしゃれ。そばにいるだけで心が和むような素敵な方です。ヤンさんは、今年からデルレイで本格的に仕事を始めた、次世代のパティシエ・ショコラティエです。
デルレイ の成り立ち
デルレイはアントワープで1949年に創業しました。オープン当初はビスケットとチョコレートだけを販売するお店でした。そのスペースを拡張し、商品を増やし、発展させていったのがベルナール・プルートシェフです。
プルートシェフは、1975年にデルレイで仕事を始めてシェフパティシエとなり、その後1983年にはオーナーシェフに。マダムのアンナさんと二人で大切にお店を守り続けています。
<デルレイの歴史は公式サイトを参照>
美しいショップスペース
写真でご覧くださいね。店内はこんなに明るくてモダンです。
チョコレートはもちろん、クッキーやケーキ、マカロンやチョコレートドリンクのテイクアウト販売も。チョコレートは2階のアトリエで作られます。トラディショナルなプラリネを始め、新作コフレやタブレットも並び、品揃えは壮観です。
デルレイ本店「チョコレートラウンジ」
ショップ併設のカフェは、1993年に「チョコレートラウンジ」としてオープンしました。
高級感と特別感のある空間です。今までに私が体験したことのないコスモポリタンな雰囲気。あらゆる国の方が集まっていて、一瞬「私いま、どの国にいるんだっけ」という感じ。
理由は、そう。ここがアントワープだからです。アントワープはダイヤモンド取引に携わる人が世界中から集まる街。ダイヤモンドジュエリーの店舗も多く、なんと9000人近い「ダイヤモンド関係者」がいるといわれます。そういう方々が毎日のようにデルレイを訪れるのです。
今回、お店に結構長い時間いてわかったのですが、お客さまから漂う雰囲気が違います。簡単に言うと生活レベルが高く、高価なものを知る方々のように感じました。
ラウンジでいただけるケーキ
本店だけで販売されているケーキはラウンジでいただけます。
写真の真ん中が人気の「フォレワール」(ミルクチョコレートとくるみを使い、生クリームを合わせたドイツ風ではないフォレノワール)、右のドーム状のケーキは「カライブ」(オレンジが香るクレームブリュレにビターチョコレートをあわせて)、手前は「マロニ」(ミルクチョコレートのムースと栗のババロア)、左のお花のようなチョコレートをあしらったケーキは「ノワゼット」(ヘーゼルナッツの風味が高いプラリネとチョコレートムース)、一番奥は「ピスターシュ」(ミルクチョコレートクリームに香り高いピスタチオのムースをあわせて)。ケーキは人気が高いので、午後に売り切れる種類も多いそう。 ホットチョコレートも人気です。種類は日替わりのようですが、チョコレートやクッキー、マカロンやアイスクリーム、クリームなどがセットとなって沢山添えられてきます。
ベルギー料理ランチも人気!
ランチメニューはお客さまからのリクエストによって生まれ、年々メニューの種類が増えています。私がオーダーしたのは小エビを使った3種のバリエーションランチ。最高でした!ベルナール・プルートシェフ インタビュー
デルレイのオーナーシェフ、ベルナール・プルートさんにお話を伺いました。バレンタインシーズン来日時にお会いした方もいらっしゃるかもしれませんね。
ーデルレイの本店では、何人くらいが働いていますか?私たちの従業員は主に30人。全てのチョコレートやケーキ、クッキーなどのお菓子は併設のアトリエで作っています。繁忙期は研修生、派遣の人も増えてもっと多くなります。
ー日本の印象はいかがですか?
私が初めて日本へ行ったのは北海道で、1995年の冬。日本は美しいと思いました。2004年10月30日に東京のお店がオープンしました。東京はまた北海道と全然違う雰囲気ですね。アントワープもどんどんきれいになっていますよ。日本のみなさんはアントワープがどういうところかをご存知ないかもしれませんね。
日本の方と関わって気づいたのは、日本人はいつも新しいものを探している。「次のシーズンの新しいクリエーションは何か」と言われる。これは嬉しいことで、日本のために何か考えることが、私たちの発展につながります。
ルレ・デセールは、フィロソフィーを共有できる人物だと承認されると会員になれます。ルレ・デセールの一番の目的は継承、フィロソフィーが継承されたということ。技術も認められる必要があり、彼はデモンストレーションを含む実技試験をパスしました。私の息子だからといって、彼に全くアドバンテージはありません。
ーヤンさんが継承することは、賛成していたのですか?息子が18歳のとき「将来、パティシエ、ショコラティエをやりたい」と私に言ってきたんです。私は「まずは学卒の資格を取りなさい。人生何があるかわからないから、学歴を持ってるほうが役に立つのでは」と話しました。それで彼はマーケティングの学位を取ったのですが、それが終わったらまた「お父さん、やっぱりお菓子作りをやりたい」といってきたんです。まだまだ、とその時は言いました。しかし、しばらく一緒に仕事をして3年経ってまた「本当にやりたいです」と私にいってきた。それで「本物だな」と思いました。
今、ですか?息子はお菓子作りのセンスは私よりいいですよ。腕もいいんじゃないかな。私は今や、製造以外にも携わるべきなので、現場で手を粉につっこんでいる、ペーストをさわっている、というようなことが減りましたからね。トラディションを大事に、独自のものを作っていくのがヤンの役割です。
アンナ・プルートさん インタビュー
「デルレイの歴史で一番大事なのは、妻のアンナが私と二人三脚で続けてきてくれたことです」。プルートシェフは心をこめて、こう話してくれました。「アンナはお客さまとコミュニケーションし、スタイリュッシュ、コンフォタブルな空間を作り出してくれます」。アンナさんにお話を伺いました。 ー昔ながらの常連のお客さまは、どんなチョコレートがお好きですか?
トラディショナルなバロタン(好みのチョコレートを入れた箱詰め)がみなさん大好きなんです。私たちは「常連のお客さまのお好みのチョコレートリスト」を持っているんですよ。よくいらっしゃる方のお好みは、メモに書き取って残しておくんです。
そしてその方がお店にいらしたら、リストをもとにチョコレートをご用意します。それから、私たちの常連のお客さまにチョコレートをプレゼントしたい、という方もいます。その場合はリストに従ってバロタンをお作りするんですよ。チョコレートを通じてあたたかな交流があります。
ーどんな方がいらっしゃいますか?
若い人からお年を召した方まで。3世代のお客さまもいます。オランダからの常連さんも多いです。そして比較的生活レベルの高い方々が多いですね。ここにはダイヤモンド商が集まっているので、ビジネス関係者、アントワープの港はヨーロッパ第二ですから港湾関係の方も。あとは著名人、皇室の方も多いんです。
近くに大きなコンサートホールがあるので、世界的なアーティストにコンサートの主催者がプレゼントにするとか。以前、デボラ・ハリーさんが「いただいて美味しかったから」って突然お店にいらしたんです。すごくエキサイティングでした!
デルレイの後継者、ヤン・プルートさんに聞きました
ヴィタメール、オーバーバイズでのインターンシップで学び、現在32歳。後継者のヤン・プルートさんにお話を伺いました。 ーいつからお仕事を?2008年にデルレイで仕事をし始めました。ルレ・デセールの試験を受けて今年(2018年)私も会員になり、お店を継いでいます。
ー今はどんなお気持ちですか?
ーデルレイ のチョコレートやケーキをどのように変えていきたいですか?
私はクリエイティブでいたいし、新しいものを作り、常にトップレベルで認められるようなものを作っていきたい。新作はお菓子のほうが発信しやすいですね。ペストリーは新しいものを作り、変えていきます。私たちのお店はチョコレートにたくさんの長年のファンがいるため、基本の味や品揃えはあまり変えませんが、いつかチョコレートを自家製にしたいと思っているんです。
「ビーントゥバー」は、すぐにできるものではなく、スペースの問題もあり投資も必要なので、今は勉強中です。近くに設備を持っているところがあるので、70周年にあたる2019年に少量からトライしてみます。
ーなぜカカオからチョコレートを作りたいのですか?
「自分たちだけのチョコレート」を作れるからです。長年チョコレート店としてチョコを扱っているから……やりたいんです。(「このプロジェクトのリーダーはヤンですよ!」と横からベルナールシェフの声)
ー2019年のバレンタインは日本に来るそうですね。
日本に行くのが今から楽しみです。6年前に行った時、日本の女性はチョコが大好きなんだ、とわかりました。
ーサインの練習しましたか?(笑)
はい、しました(笑)(ぜひみなさん、バレンタインシーズンはサインしてもらいましょう!)
来年のバレンタインにはプルートシェフ、ヤンさん揃っての来日が予定されています。2世代ルレ・デセール会員の親子来日は初めてのこと。楽しみですね。
ラウンジにシェフやアンナさんがいると、すぐにお客さまから声がかかります。そしてちょっとした近況報告に始まり、笑顔がはじけます。
経済誌『The Financial Economic Time』(※現在は『The Time』)の記者が書いたコラムにこんな一説がありました。
「私は、お気に⼊りであるアントワープ⼀番のパティスリー、デルレイのラウンジでヨーロ
ッパ情勢について分析していた。デルレイはダイヤモンド地区にあり、"the most multicultural place"、多⽂化が友好的に交わる⼼地よい場所。地元の⼈や様々な国籍の人たちが、パティスリー、チョコレートやクッキーにアイスクリームも付いているコーヒー・紅茶などを楽しみに集まってくる。⽿を澄ませば、アントワープの言葉やフランス語、イディッシュ語、英語、パキスタン語など、多くの⾔語が⾶び交っている。ここはアントワープで唯⼀、異なる全ての⼈々が⼈類共通の欲望=⽢いもの、に惹かれて集まる場所なのだ」
チョコレートやお菓子を通じて、70年もの間、世界中から集まる人たちが笑顔になっている。デルレイの本店は世界の人気店です。私は日本でデルレイのチョコレートに会えることが、今まで以上に愛おしく思えています。
■DATA
DelReY
(デルレイ ベルギーアントワープ 本店)
APPELMANSSTRAAT 5
2018 ANTWERPEN
KINGDOM OF BELGIUM
Tel. +32-3-233.29.37
デルレイ 本店公式サイト http://www.delrey.be/2014/
デルレイ 日本公式サイト https://www.delrey.co.jp/
<日本の2019年のバレンタインシーズン販売情報!>
2019年バレンタインに向けて、日本でも「デルレイ」の新作が販売されます。
●ダイヤモンドショコラ 2019年新作
ダイヤモンドショコラの新作は2種です。
- ブルーダイヤモンドダーク:ダークチョコレートの中にアップルフレーバーのキャラメルガナッシュ
- ホワイトダイヤモンドダーク:ダークチョコレートの中にカカオのガナッシュ
話題のルビーチョコレートを使った新作も登場します!