かくいう僕もまだ28歳。個人投資家の多くは50代以降に集中していますから、まだまだ若輩者だと言えるでしょう。年齢が若いだけに、「こんな若モンに、投資の何が分かる?」的な眼で見られることも少なくありません。
しかし、日本証券業協会の調査結果(1)では、「年輩の人ほど投資が上手!」という考えは、間違っているんじゃないか? という結果が得られました。むしろ、「若者のほうが投資が上手だぞ!」とさえ読み取れる結果があります。
ですから、僕としては全国の若者たちにこそ、「自分に自信を持って、投資を始めてはどう?」と、提案したいところです。
なぜ「若者」ほど投資が上手なのか?
僕が「若者ほど投資が上手!」というのには理由がありまして。日本証券業協会の調査によると、「年輩の人ほど近視眼的(短絡的)な投資行動が目立つ」ことが分かったのだとか。これは、行動経済学でいう「時間割引率」を測定するテスト結果から分かりました。調査結果によると、年輩の人のほうが「将来的に大きな報酬」よりも「今もらえる小さな報酬」のほうを好む傾向が見られることが分かりました。
年輩の人が近視眼的な行動をとる主な理由としては、「死に対する意識」が影響を与える可能性が高いと思います。「自分の寿命は、あと◯年くらいだろう」と考えることによって、長期的な立ち回りがニガテになっていくのでしょう。これは生物学的にいえば、正しい立ち回りだと思います。
しかし、その一方で「近視眼的な行動」は投資に悪影響があることが、経済学者の間でも明らかにされています。歳を取ると「経験が豊富になる」という強みがある一方で、「近視眼的になってしまう」という大きな弱点が現れることになるのです。
近視眼的な行動は、投資の失敗につながる
近視眼的な行動は、短期的な取引につながると考えられます。「短期的な取引は運用成績の悪化につながる」なんて研究も報告されているので、年輩の方は注意が必要です。経済学者のブラッド・バーバーとテランス・オーディーンらの研究(2)によると、「頻繁に取引をする投資家ほど、運用成績が悪い」ということが分かっています。
頻繁に取引をすると、そのぶん取引手数料が高くつきます。そのうえ、キャピタルゲイン税などの支払いを先回しにすることにもつながります。結果として、投資の成果が落ち込んでしまうのだと言えるでしょう。
近視眼的な思考がストレスを生み、資産形成も失敗してしまう
短期的な取引の悪影響は他にもあります。日経マネー誌のアンケート結果を調査した論文(3)によると、「短期集中投資をしている人は、長期分散投資をしている人よりも成績が悪く、ストレスも大きく、資産形成にも失敗しやすい!」なんて結果が得られています。短絡的な思考は、少なくとも投資の世界においては「百害あって一利なし!」と言えるでしょう。なお、この調査結果はおもに「投資期間」と「リスク分散」の2つが大事だ! という観点で話をしています。ただし、短期取引をしている方ほど集中投資を好むようなので、「時間感覚が投資の成功を決める重要な要素なんだ!」と考えておいて、今のところは問題ないと思います。
まとめ
何にせよ、「若者ほど長期的にものごとを考えられるから、投資には向いている!」と言えそうです。若い人たちは、「投資のことがよく分からなくて自信が無いから、今は止めておこう」と考えがちです。しかし、「自信が無い人ほど投資が上手!」とも言われるぐらいですから、勇気を出して、一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
一方、年輩の方は「年を追うごとに近視眼的な行動をとっていないか?」に注意しておく必要があるでしょう。短絡的な行動が投資によくないことは、ほぼ間違いないです。死への恐怖を拭い去ることは難しいですが、子どもや孫、年下の友人に相談するなどして、自分が近視眼的になっていないか? を確認する習慣を持つとよさそうです。
【関連記事をチェック】
【参考文献】
- 調査:日本証券業協会, 2018, "個人投資家の証券投資に関する意識調査報告書"
- 論文:Brad M. Barber and Terrance Odean, 2000, "Trading Is Hazardous to Your Wealth: The Common Stock Investment Performance of Individual Investors", The Journal of Finance, 55(2), pp. 773-806
- 論文:川西諭, 田村輝之, 功刀祐之, 2012, "長期分散投資vs短期集中投資 日経マネー誌アンケートから見えるネット投資家行動の実態", 行動経済学, 5, pp. 152-156