お金の悩みを解決!マネープランクリニック/マイホーム購入・住宅ローンで悩むファミリー世帯

32歳貯金930万円。住宅を現金購入するデメリットはありますか?(2ページ目)

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、マンションを現金で購入するため、無駄のない家計管理で貯蓄に励む32歳の会社員女性。しかし、ローンで買った方が得なのか、子どもができたらどうかなど、不安も多いとのこと。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

あるじゃん 編集部

執筆者:あるじゃん 編集部

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アドバイス1 現状では現金購入によるデメリットは皆無

最初は「住宅を全額キャッシュで購入するデメリットがあるか」というご質問について。もっとも大きなデメリットとしては、購入後、手持ち資金が大きく減ることで、その後の教育資金が不足したり、突発的なコストやトラブル(病気や失職)に対応できないという可能性が考えられます。そこでまずは、現金で購入した場合のキャッシュフローを試算してみましょう。
 
マンションの購入費用を、諸経費込みで3500万円とします。また、購入後に残すべき手持ち資金を生活費の半年分とすると、約200万円。つまり、手持ちの貯蓄が3700万円に達すれば、それ以降は現金購入の可能時期となります。現在の貯蓄ペースは、年間240万円。これが増減しないまま継続されれば、ご夫婦が43歳のとき、手持ち資金が目標額に達します。
 
このタイミングで購入したとすると、その後の生活費として、新たなコストはマンション維持費(管理費、修繕積立金、固定資産税)、なくなるコストは家賃となりますから、差し引きで生活費は今より5万~6万円下がります。さらに奨学金の返済も終了しているでしょうから、その他の生活費が変わらなければ、貯蓄額は年間で80万~90万円、さらにアップします。それを60歳まで続けると、手持ち資金は5700万~5800万円。退職金を加えると、少なくとも6200万円が老後資金となるわけです。
 
60~65歳まで、貯蓄はできなくとも赤字にならない程度、夫婦とも働いて収入を得るとすれば、実際に生活費として老後資金を取り崩すのは65歳から。公的年金の受給額は不明ですが、月5万円不足(2人以上の高齢無職世帯の平均的な不足額)なら、25年間で不足額は計1500万円。夫婦が90歳まで生きるとして、その時点でまだ手元に4700万円が残る計算になります。資金的に困ることはほぼないと考えられますし、60歳以降の働くペース(期間や収入)をもっと下げても問題ないはずです。現金購入によるデメリットはまったく影響しないということです。
 

アドバイス2 高い家計管理能力が大きな強み

では、賃貸に住み続けた場合はどうか。今と同じ、年間240万円の貯蓄ペースが60歳まで28年間続くとすれば、6720万円。今ある貯蓄と退職金を加算すれば、60歳の時点で約8100万円になります。
 
コストについての違いは、ずっと家賃が発生すること。住宅購入した場合より、住宅コストが月5万~6万円高いとすると、その他の条件(60歳以降の収入や老後の生活費)が購入した場合と同じなら、90歳の時点でまだ3200万円ほど、手元に残ります。これも資金的に問題ないでしょう。
 
そして、お子さんを出産した場合。教育費やその他の子どもにかかる費用、さらに出産と育児による減収分もコストに反映させるとして、やや多めですが子育て費用の総額を2000万円とします。住宅購入の場合、90歳の時点で手持ち資金は4700万円、賃貸の場合は3200万円(ともに年金の不足額は月5万円)が残っていますから、先の子育て費用を差し引けば、それぞれ2700万円と1200万円となります。
 
老後資金は、基本的な生活費以外に、持ち家なら住宅のリフォーム費用、健康面では医療費や介護費用の発生が考えられます。さらに、長生きリスクにも対応しておきたい。その上で、この金額で足りるかどうか。もちろん、断言はできませんが、それらコストが一般的な金額だとすれば、賃貸の場合でもそう大きく心配することはないと考えます。
 
加えて、ゆうこさんの現在の家計がとても計画的で、無駄がまったくありません。保険の掛け方も満点です。これだけ家計管理が優れているなら、今後、必要であれば無理なく節約や家計の工夫ができるはず。そういった強みも考え合わせると、お子さんが生まれても老後の不安は低いといえるでしょう。
 

アドバイス3 住宅ローン控除が必ずしもメリットとは限らない

家計に対してアドバイスをするとすれば、老後資金づくりについては、勤務先に企業型の確定拠出年金の制度がないなら、住宅購入後、iDeCo(個人型確定拠出年金)を利用すればいいでしょう。ご存知かと思いますが、掛金が全額所得控除となりますので、現役時代には継続的に節税ができます。売却益や配当に対しても非課税です。ただし、口座開設時や運用期間中にコストが発生します。その額は金融機関によって異なりますので、事前に調べておきましょう。金額としては、夫婦で上限の2万3000円(勤務先に確定拠出年金のない会社員)ずつ積み立ててもいいと思います。
 
もうひとつ、もし奨学金が利息の発生するタイプなら、残高を一括返済してしまってはどうでしょうか。まとまった貯蓄もありますし、貯蓄ペースも高いので手持ち資金が減るのは一時的。住宅購入時期が後ろにずれても短期間でしょう。
 
最後に、ゆうこさんも気にされていた、現金購入により住宅ローン控除を受けられないことはデメリットになるか、という点。それを考えるには、現金購入によって支払わなくて済んだローンの利息分の合計額と、住宅ローン控除によって還付される税金の合計額を比較しなくてはいけません。
 
例えば、ゆうこさんのケースを想定して、借り入れ2500万円(自己資金1000万円)、25年返済、全期間固定・金利1.5%とすると、支払利息の合計は約500万円。対して、住宅ローン控除は、購入から10年間、年末のローン残高の10%が税額控除額となりますが、このケースで控除される税金の合計額は、最高でも約200万円。したがって、明らかにキャッシュ購入の方が得ということになります。
 
また、資金的に余裕のある人によく見られるのが、住宅ローンを組み、最初の10年間、住宅ローン控除を目一杯活用して、11年目に残高を一括返済するという方法。ただし、それも一概に得とは言い切れません。
 
先の借り入れ内容で11年目に残高(約1500万円)を繰上返済すると、軽減される支払利息は170万円ほど。つまり、ローン開始から当初10年間で支払った利息は330万円。やはり、還付される税額200万円より高くなります。
 
ただし、変動金利で借りて、適用金利が0.5%ならば、当初10年間の支払利息の合計は110万円ですから、それだけを比較すれば90万円ほど、住宅ローンを借りた方が得となります。とはいえ、実際はローンを組む際に発生する手数料等のコストを差し引く必要がありますし、購入時の金利にも大きく左右されます。また、変動型の場合、購入後の金利上昇リスクも考慮しなくてはいけません。加えて、住宅ローン控除とiDeCoによる税額控除は併用が可能ですが、その結果、所得によっては住宅ローン控除によって還付される税金が少なくなる可能性もあります。
 
ともあれ、あくまで現金で買う方向で貯蓄を進め、購入時期が近くなってきたら、金融機関等に試算してもらってから判断しても遅くはないでしょう。
 

相談者「ゆうこ」さんから寄せられた感想

今回お答えくださるFPの先生が深野先生だと嬉しいと思っていましたので、ご本人にご回答をいただけるなんて感激です!そして内容についても、2人にしては食費や雑費が高めだろうかと危惧していましたので、家計管理や保険のかけ方などを褒めていただき本当に嬉しいです。今後も、無理をせず貯蓄はしっかりと続けていきたいと思います。本当にありがとうございました。


教えてくれたのは……
深野 康彦さん
 
 

 


マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。近著に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など




取材・文/清水京武

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