胎動カウントをつけ、妊娠中の不安軽減を
胎動カウントとは、母親が感じる胎動の回数を数えることで、「10回胎動カウント法」が一般的
胎動カウントとは、母親が感じる胎動の回数を数えることで、いくつかの方法のうち、10回の胎動を感じるのに要した時間を記録する「10回胎動カウント法」が一般的です。
胎動カウントは、母親の不安を軽減させることが分かっています。胎児突然死の予防に役立つこともあります。どうやって胎動を数えるの?と思うかもしれませんが、やってみると難しくありません。
胎動カウント Index
・胎動カウントとは
・胎動カウントはいつから始める?
・胎動カウントの方法 時間帯・体勢・数え方
・胎動が少ない・動かないと感じたとき
・胎動カウントを付ける意味
胎動カウント(キックカウント Kick Counts)とは?
胎動カウントとは、母親が感じる胎動の回数を数えることで、いくつかの方法のうち、10回の胎動を感じるのに要した時間を記録する、10回胎動カウント法が一般的です。アメリカでは胎動を「キックカウント(Kick Counts)」と言い、「赤ちゃんが蹴った」と表現するように、実際には「蹴る」だけではなくて、赤ちゃんの「回転」「伸び」「パンチ」など母親が感じた胎動を区別しないで数えます。
よく経産婦さんが、上の子の時と比べて「この子は胎動が激し(おとなし)くて……」とか、「この子は、いつもこの辺りばかり蹴って……」というように、胎動は一人一人違います。10回胎動カウントに正常値はありませんが、毎日記録することで、いつもの胎動パターンを知ることが重要です。
妊娠後半期に、妊婦1000人に1~2人の割合でおこる胎児突然死は、妊婦健診や診断機器での予測は難しく、多くの場合、原因の特定もできません。このような少ない頻度で起こる現象の予防に、「いつもの胎動と違う」、「いつもより胎動が鈍い」という妊婦の訴えが役に立つことがあります。
胎動カウントはいつから始める?
アメリカ産婦人科学会は、28週からの胎動カウントが有意義であると勧めていますが、日本では、多くの方が産休に入り、自分の時間を確保しやすい妊娠34週0日から始めるのも良い機会です。まずは気楽に始めてみましょう。胎動カウントの方法 時間帯・体勢・数え方
・ゆったりと落ち着く時間に胎動カウントは、赤ちゃんとの絆を感じる大事な時間です。家事などの用事は済ませ、誰にも邪魔されない時間を確保しましょう。毎日続けると、母親になる幸せを感じる安らぎの時間にもなります。医師や助産師に指示されたから胎動カウントをするのではありません。
・胎動を感じやすい体勢
左下の横向き(左側臥位)やソファーに座ると、リラックスできる姿勢になります。赤ちゃんの向きや胎盤の位置などの影響で、胎動の感じやすい姿勢は異なるので、カウント中に胎動を感じやすい姿勢に変えてもかまいません。仰向け姿勢(仰臥位)は、母体低血圧や子宮収縮をおこす方もあり、お勧めしません。
・胎動の数え方
最初に動いた時刻から10回動くまでの時間を計ります。初めは、どんな胎動を1回にカウントするのか迷うかもしれませんが、実際にやってみると難しいことではありません。目安として、30分以内に胎動が10回と思って始めてみると、数日のうちに胎動時間が早い人で2分~3分、分かりにくい人でも20分前後に収まるようになります。
胎動が少ない、動かないと感じたとき
日によって胎動の強さや感じる位置が変わることはよくあります。10回動くのに30分以上かかるなら、少し時間(30~60分)を空けて、もう一度測ります。母親の脱水状態で胎動は鈍くなる傾向がありますので、コップ1、2杯の水分を摂取してみてください。胎動カウントを始めようとしたが30分で全く胎動がない、10回動くのに2時間以上かかるなど、胎動の異常(胎動減少)を感じたときは、担当施設に連絡しましょう。
胎動カウントの意味
■毎日記録することの意義昔は、おむつやベビー服を作ったり、お産や産後の準備をしている間に、いつの間にかその日はやってきたのですが、今は、用意する物はお店で手に入り、生活も便利になり、少し時間を持て余している人も少なくありません。
毎日、同じような時間に掃除、買い物、食事を作る、洗濯物をたたむなどの家事と同様に、胎動カウントを行うことは、生活のリズム作りに役立ちます。毎日の何気ない作業が不安を和らげてくれます。
■胎動カウントの医学的意義 20年前に行った10回胎動カウントの検討ですが、1年半の間の分娩数が約3000人で、その間に胎動減少を訴えて来院された方が24人、そのうち2人が胎児心拍数検査の結果、緊急帝王切開となりました。
胎動が心配で来院しても9割以上の方は異常はありませんが、もし胎動カウントをしていなければ、胎児突然死を起こしていた方もおられるということです。
私の勤務する施設では、1989年から約30年間、妊娠34週以降の全ての妊婦さんに胎動カウントを勧めてきました。その間の分娩数は約5万人、その中で「胎動カウントをつけていたおかげで子供が助かった」、「もし、胎動減少に気がついていなかったら、この子は……」などと思っている母親が、おそらく20人程度おられると推定しています。
これは約2500分娩に1件の割合です。年に平均250件のお産を担当して、10年間で1件経験するかしないかの頻度ですので、胎動カウントはあまり意味がないと考えている医師もいますが、年間5千~1万人出産がある海外の周産期センターでは、胎動カウントの有用性は支持されています。
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