カカオの国、メキシコへ!
2018年8月。カカオとチョコレートに会いに、メキシコへ行って来ました。
チョコレートを愛する方なら、きっと一度は訪れてみたい国「メキシコ」。その理由は
- メキシコは、カカオの栽培が始まった国とされているから
- カカオの歴史に深く関わるオルメカ、アステカ、マヤ文明などの発祥の地だから
があげられるのではないでしょうか。
カカオの歴史を紐解けば必ず登場するメキシコ。メキシコはカカオの故郷でありチョコレートの国。チョコレートのルーツはメキシコにあります。
ということで、行ってまいりましたよー、メキシコ! 毎日が新しい発見の連続で、私の感覚と脳は連日止まることなく動き回り、朝から晩までフル稼働。
ソコヌスコ地方のカカオ農園へ行こう!
「ソコヌスコ」と聞いて、ピンとくる方はチョコレート通ですね。メキシコへ行ってみたい、と憧れる方の中には、有名なソコヌスコのカカオ農園を訪れたい方が多いのではないでしょうか。 ヨーロッパのブランドが「Xoconuzco」のカカオを使った、シングルオリジン(単一産地)のチョコレートバーを販売していますね。「ショコヌスコ」と表記されることもあり「伝説のショコヌスコ」などと書かれていることも。とはいえ、意外と今、「ソコヌスコ=メキシコ」だと結びついた方も多いと思いますが、いかがですか? おぼろげにしかイメージがない方のために、まずは場所です。私の手描きですみませんが、地図を見てください。 メキシコの南部に、グアテマラの国境に面したチアパス州「タパチュラ」があります。その一帯が広ーくソコヌスコ地方です。
たとえばフランスワインでいう「ヴォーヌ・ロマネ村」の「ロマネコンティ」のようなものではありません。「ソコヌスコ=ひとつの村やその狭い範囲」ではなく、面積は約5,800km²で、現在はタパチュラを中心とする15の市町村が該当します。古い地名なので、例えると鹿児島県の「薩摩地方」という感じでしょうか。カカオを特産とし、その歴史は約2000年前に遡ります。
■ーーーーー■ ソコヌスコへ行く方法 ■ーーーーー■
メキシコシティ国際空港から国内便でタパチュラ空港へ(約2時間)。するともう空港に降り立った段階で、すでにあなたはソコヌスコにいます。タパチュラの市街地まで、空港から車で約30分です。
ソコヌスコのカカオ農園へGO!
農園は多数ありますが、大抵は市内から1時間半ほどかかります。私は現地在住のガイドさんに同行していただき、見学可能な農園へ、四輪駆動の頑丈なトラックで向かいました。ところで、先ほど「市内から車で1時間半」と書きましたが、日本とは随分と状況が違います。まず道が全然平らでなく、真っ直ぐでもありません。 1時間は比較的平らな道(といっても一定距離でゴトンゴトン、と揺れます。スピードが出すぎないよう道路に段差を作っているそうですが、それにより定期的に自分が座席からボン、と弾み上がります笑)、その後30分は、未舗装のガタゴト道を行きます。「あああああ」とか「えええええ」などと思わず口に出てしまうアドベンチャー感(笑)、大きな水たまりをばっしゃんばっしゃん豪快に突き進む様は、まるでテーマパークのアトラクションのごとし(車酔いしやすい私は酔い止め薬・キャンディを合計4種持ち込み、臨んでます)。
熱帯の地にあるカカオ農園
到着すると一転。農園は静けさに包まれています。農園内にある、小さなコテージへ。 少し休憩してから、農園内へ向かいます。歩き出すともう5分もたたないうちに汗がシャツに滲み出します。虫除け・怪我を防ぐために長袖を着ているのでなおのこと。 タオルは必需品。それにしてもふー、暑い。通常、日本の東京都内で仕事をし、冷房に慣れて甘やかされた私の体は、驚きます。
よく思うのですが、現地の方には当たり前すぎるせいか、「感覚」は本やレポート等に意外と書かれていません。カカオの消費国・日本(東京)を離れ、カカオ農園を訪れると私は真っ先に「こんなに暑い地なのか」と強く感じます。カカオが元気に生きる国は、私たちと違う国。赤道のそばの、蒸し暑い国です(タパチュラ地方の平均最高気温は年間を通して34度、最低気温が21度)。 カカオ農園を歩くと、私の腕や顔に、木洩れ陽がちらちらとあたります。カカオは直射日光を嫌う植物。半日陰で育つので、背の高いシェーディングツリー(ここではバナナやセドロなどの木です)がカカオの木を覆い、農園にはやさしい光が差し込みます。
カカオの大きな葉が地面に落ち、しっとり湿った足元。踏みしめるたびにカカオの葉は音をたて、土の香りが立ち上ります。 秋ではないのに枯れ葉の音。日本やパリではなく、赤道に近いカカオの国の音です。カカオ農園に身をおくたびに私は、私たちの国とは全く文化も気候も政治事情も異なるその国をリスペクトし、カカオを生産してくださっている全てに感謝します。
カカオの実を割り、フレッシュな果肉を味わう
本格的な収穫期は数ヶ月先なので、カカオポッド(カカオの実)はまだ小さいものがほとんどでしたが、熟したカカオポッドを収穫。ナタで割って中の種を見せていただきました。 カカオポッドをナタでパカッ、と割ると、中には白い果肉のついたカカオの種が数十個、ぎっしりつまっています。 果肉ごと口に入れると、ライチのようで甘酸っぱい! 私はこの果肉の味が大好きです。品種や時期により味は異なりますが、リンゴやローズを思わせる香りを持ち、これがチョコレートになるの??と初めての方なら間違いなく驚くでしょう。収穫したてのカカオの実を割り、フレッシュなカカオの果肉(カカオパルプ)を味わう。これは生産国へ行かなくてはできません。チョコレートに興味のある方は、いつかカカオ農園で生産者の方とお話をし「カカオが熱帯のフルーツである」ことを体験していただきたいです。 <注意>チョコレートを作るために果肉も種も重要な存在です。沢山食べてしまうのはもったいないことと心得ましょう。感謝しつつ少し分けていただく気持ちで。カカオ豆の発酵の段階で果肉は溶けて無くなりますが、チョコレートの風味付けに重要な役割を果たします。
ソコヌスコ地方のカカオ農家の存続のために
私が訪れた農園は個人所有ではなく、メキシコのカカオ関連企業が運営していました。メキシコで国内消費されるカカオを生産し、大手企業と連携して良質なカカオを育てるプロジェクトを行っています。中でも私が特に注目した活動は、良質な「カカオの苗」を接木によって増やし、地元のカカオ農家に提供していたことです。メキシコ政府の研究機関と連携、農家のために育てやすく、風味のよい苗を育てているのです。 ソコヌスコ地方は歴史あるカカオの産地ですが、かつては病害の影響でより簡単に栽培ができる作物への転作が進み、カカオ農家は減少の一途を辿りました。しかしソコヌスコは、16世紀に栄華を誇ったアステカ帝国の都「テノチティトラン」へカカオを納めていた地(都周辺ではカカオが穫れず、ソコヌスコはアステカ帝国の直轄地だったことから)。今はこの地のカカオ産業を守るための動きがあるのです。 サワサワと音をたてるカカオの葉。健全に育つカカオたち。私はここから農園へ運ばれ、大地に根付き、カカオが実り、いつか私たちのところへ届くチョコレートを思いました。
カカオ農園への訪問は、チョコレートのルーツを辿ること。カカオは南国で栽培される「フルーツ」だとわかること、生産に関わる方々とカカオを育てる大地と太陽に感謝すること。知識だけではありません。五感で感じる体験です。
メキシコへ行きたい、と思った方へのインフォメーション
チョコレート愛好家の方の中には、一度はメキシコへ行きたい、カカオ農園を訪れ、カカオにゆかりある場所へ行きたい、と考える方が多いと思います。ただ、理解しておくべきなのは、私たちが住む日本とカカオ生産国の事情は全く異なる、ということ。言語、治安、マナーや習慣、気候、政治事情、あらゆる点で私たちの当たり前が当たり前ではないと考えてください。メキシコでカカオ・チョコレート体験をしたい場合は、プロのガイドさんに相談したり、通訳や案内を依頼することをお勧めします。安全を第一に考え、時間を有効に使って楽しい旅にしたいですよね。特にカカオ産地では殆ど英語が通じません。
■参考・取材協力
メキシコ観光 http://pasela.mexicokanko.co.jp/index.html
※私が今回お世話になったのはこちら。日本人スタッフさんなので安心です。観光+カカオ農園1日ツアーなど色々依頼できます。連絡はコンタクト用アドレスから(日本語でOKです)
書き足りないので、さらにメキシコ記事をいくつか書くことにしますね。どうぞお楽しみに!