ニンテンドースイッチのゲームは足りていないのか?
先日、経済系メディアから今後のニンテンドースイッチのタイトル不足を懸念する報道がなされました。さて、タイトル不足と言うと、みなさんどんなイメージを持たれるでしょうか。ゲームユーザーの視点であれば、自分が遊びたいゲームがなくてつまらない、ということを思い浮かべるかもしれませんし、あるいはニンテンドースイッチが人気がでてみんなのスタンダードになるか、ということを気にする人もいるかもしれません。しかし、おそらくはそのどちらも違います。なぜなら、その報道が経済系メディアから発信されているからです。このタイトル不足の懸念は、任天堂が2018年度に掲げる販売目標全世界2,000万台に対して、タイトルが不足しているのか、不足していないのか、不足しているのであれば株価が下がるから警戒しろ、というようなことを表現しているのです。
こういったソフト不足とか、人気が出てる出てないというのは、誰がどの立場で言っているかということで、言い方や、あるいは結論までが違うことが起こります。国内の話をするのか、全世界の話をするのか、総タイトル数のことをいうのか、目玉タイトルの話をしているのか。
ゲームユーザーが気になるのは、今後国内市場でニンテンドースイッチが盛り上がりそうか、ということですよね。というわけで、ニンテンドースイッチの現状やこれからについて、国内市場の盛り上がりを中心に考えてみたいと思います。
今、遊ぶゲームは足りているのか?
まず、現状。ニンテンドースイッチのゲームは十分に供給がされて満足度が高い状態になっているでしょうか? これはなかなか難しい話です。それは人によるからです。人によっては遊びたいゲームが無いからニンテンドースイッチは欲しくないという人は当然いますし、逆にスプラトゥーン2だけをずっと遊び続けて、それで満足である、という人もいるでしょう。しかし、初期から購入しているような任天堂ファンのユーザーにとっては、遊べるゲームの質と量は、かなり高い満足度で充実しているように思います。1つは、この後詳しくご紹介しますが、任天堂の代表的なタイトルが初期から発売されていることが真っ先に挙げられます。「1-2-Switch」「ARMS」「Nintendo Labo」といった挑戦的なタイトルが発売されていることももう1つ。そして最後に、インディーゲームや追加ダウンロードコンテンツといった、ダウンロード専用のゲームが非常に充実しているということが挙げられます。
また、見落としがちですが意外と大事なタイトルに「マインクラフト」があります。マインクラフトは、もともとはPC向けに発売されたインディータイトルで、コアゲーマーが注目して遊ばれていましたが、今や、PCやスマートフォン、そして主だったゲームハードではほとんど遊ぶことができ、しかも、おもちゃ売り場でグッズのコーナーができるほど、子どもに人気のタイトルとなってしまいました。
色んなハードで遊べはするんですが、子ども達が使いやすいハードというと、それなりに選択肢が限られています。かつてはPSVitaが子ども達がマインクラフトを遊ぶハードとして売れていきましたが、発売から時間がたったPSVitaの勢いがなくなっていく中、今度はニンテンドースイッチ版マインクラフトが毎週ジワジワと数字を伸ばしています。任天堂コア層から子ども達へ広げていくタイトルとして、マインクラフトがかなり機能しているようです。
目玉タイトルは足りているか?
国内市場における今後の目玉タイトルはどうでしょう? 昨今の国内据え置きハードの立ち上がりは非常にゆっくりしたものになっています。その要因として、ハードの高性能化が進んでいるため開発が長期化、高コスト化していることが1点。また、国内の据え置きゲームハード市場そのものの縮小の為、その高い開発費を回収できる見込みがなかなか立たないのも、ソフトが揃いにくい要因となっています。PlayStation4を例にとれば、発売された2014年、最も売れたゲームは「グランド・セフト・オートV」でした。海外のゲームだったんですね。国内向けのキラータイトルがなかなか出てこない状況で、海外の大型タイトルが国内の年間ランキングの1位を獲得する状況でした。翌2015年の「Metal Gear Solid V: The Phantom Pain(以下MGSV)」が国内向けのキラータイトルとなりますが、MGSVはパッケージの累計が50万本に届かないぐらいの規模感です。その後、2016年ぐらいから、国内市場もタイトルが揃っていく流れができ、2017年の「ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて」、2018年に「モンスターハンター:ワールド」と、100万本を突破する、いわゆるミリオンタイトルが登場していきます。
ニンテンドースイッチはというと、発売年に「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」「マリオカート8DX」「スプラトゥーン2」「スーパーマリオ オデッセイ」が揃い、このすべてのタイトルが100万本をこえています。中でもスプラトゥーン2は250万本を突破してさらに本数を伸ばしています。翌2018年は「スーパーマリオパーティ」「ポケットモンスター Let's Go! ピカチュウ・Let's Go! イーブイ(以下ピカブイ)」「大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL(スマブラSP)」などが期待作となります。
プラットフォームホルダーの任天堂が国内で強いタイトルを保持していることで、この時期でも、大型タイトルがずらりと並んでいることが分かります。一方で、サードパーティーのタイトルに関しては、やはり非常にゆっくりとした動きになっているので、ここが今後の課題となるでしょう。
2018年後半のカギはポケモン
さあ、これでニンテンドースイッチは売れるのでしょうか? 2018年後半はスーパーマリオパーティ、ピカブイ、スマブラSPと確実に販売を伸ばせるタイトルが揃っているので、堅実に台数を伸ばしていくことが予想されます。夏休みの時期に毎週マインクラフトが伸びていることから、すでに子ども達の購入者が増えていることが想定でき、2018年後半のタイトルは、子ども層を一気に取りに行けるラインナップです。もし、予想以上の爆発的に加速する流れがくるか、という話をすると、キーになるのはピカブイで、これをどう評価するかがカギになるはずです。もっと正確に言うと、ポケットモンスターシリーズを起点とする流れについて考えるべきであると言えます。
従来で言うと、据え置きゲーム機で発売されたポケットモンスターシリーズは、スピンオフで、携帯機で発売した本編のような爆発力はありません。しかし、ニンテンドースイッチはちょっと状況が違います。なぜなら、携帯できるからです。
ピカブイはゲームボーイで発売された「ポケットモンスターピカチュウ」をベースに、よりライトに遊びやすく作り替えたタイトルです。いわば過去の本編のリメイク的なタイトルであり、しかも、ポケモンGOのように戦闘をせずにモンスターボールを投げるだけでポケモンが捕まえられるといった、よりライトな形に変更されています。さらに、2019年には「ポケットモンスターX・Y」や「ポケットモンスターアン・ムーン」の流れをくむ本編新作も投入されるということが明言されています。
ポイントは2つあります。ポケモンGOは、モバイル端末向けゲームアプリの歴史を塗り替えるほど多くの人が遊んだゲームです。ここでポケモンに興味を持った人たちが、これまでよりもライトに遊べるポケモン本編ということでピカブイを手に取るかというのが1点。
さらにもう1つは、従来のポケモンファンが、ニンテンドースイッチに流れるか、ということが言えます。ピカブイや、2019年の新作で、従来のポケモンファンがニンテンドースイッチに流れてくるということになれば、それはポケモンをキラータイトルとしてニンテンドースイッチとニンテンドー3DS(以下3DS)の市場を統合するという流れが作られます。
ニンテンドースイッチのこれから
3DSとの市場統合が進むとなると、ニンテンドースイッチはかなりの盛り上がりが期待できるかもしれません(イラスト 橋本モチチ)
ここでも重要になるのは、先ほどお話した、ポケモン関連の動向です。ポケモンのユーザーがニンテンドースイッチに流れ込むということは、3DSの市場を統合する流れができることになります。そうなれば、3DSが抱えてきた他のタイトルの続編も、ニンテンドースイッチで発売される可能性が非常に高いです。市場統合が進んだ場合、ソフト不足という心配はあまりいらなくなるかもしれません。
1つ良いニュースがあります。スクウェア・エニックスがニンテンドースイッチ用に発売したRPG「オクトパストラベラー」が、世界累計出荷とダウンロード販売をあわせて100万本を突破したという発表がありました。ニンテンドースイッチでサードパーティの新作RPGが売れたという事実は、多くのメーカーに良い影響を与えるでしょう。
さて、最初の話に戻りましょう。経済系メディアからニンテンドースイッチのソフト不足を危ぶむ報道がありましたが、それは任天堂が掲げる世界目標に到達できるかどうかの話であって、それをもって国内市場の盛り上がりを心配するのはやや性急かもしれません。国内市場に関して言うと、現在のニンテンドースイッチは、任天堂ファンにとっては、大型タイトルが次々と発売されて、かなり満足度の高いハードだと思います。そして、2018年は子ども層の取り込みが大きく進むことが予想できます。それらの流れが原動力になって、3DSとの市場統合むかどうかが、さらなる躍進のポイントとなりそうです。
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