お金の悩みを解決!マネープランクリニック/40代独身の人のお金の悩み

46歳一人暮らし。少ない貯蓄、病気、毒親と、いろいろ不安(2ページ目)

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、昨年正社員になれたものの、貯蓄がなく、家計から多くを貯蓄する余裕もないという46歳の会社員女性。しかも、健康面で不安がある上、一人暮らしの母親がいわゆる「毒親」で、将来の介護や経済的支援に頭を悩ませているとのこと。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

あるじゃん 編集部

執筆者:あるじゃん 編集部

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アドバイス1 英語教室の再開が今後の貯蓄につながる

いろいろご心配されていますので、整理して考えてみましょう。まず、貯蓄法と家計の見直しについて。家計管理については大変よく頑張っていると思います。家賃負担がありながら、手取り17万円で毎月1万5000円を貯蓄(と投資)されているのは立派です。では、家計を見直し現状からさらに貯蓄額を増やすにはどうすればいいか。

いただいたデータでは、毎月の収支は2万3000円の黒字。貯蓄分が1万5000円ですから、残り8000円の行方が不明です。おそらく支出が何か抜けてしまったと思いますが、それも含めて家計を洗い出し、絢子さんにとって優先順位の低いものから削る。それ以外、貯蓄額を上げる有効な方法はありません。それでも、金額にして1万円が限界だと思います。
 
また、逆に家計支出は増えてしまいますが、節約のためにやめてしまった英語教室は再開すべきです。日頃節約に気を使い、少なからず我慢を強いる生活を続けていく必要がある中、生活の楽しみや息抜きがなくては、節約自体が続きません。唯一の趣味であるという英語教室に要する月5000円は、今後もしっかり家計管理をしていくための大事な必要経費なのです。
 
したがって、見直しで月1万円節約できて、英語教室に5000円負担するとすれば、貯蓄額はプラス5000円となり、計2万3000円となります。微増と思われるでしょうが、現状これで十分と考えてください。今後、昇給があれば、それに合わせて貯蓄額も増やしていけばいいでしょう。
 
それよりも、貯蓄を増やしていくには、ボーナスが有効です。夏のボーナス25万円からは20万円を貯蓄できたわけですから、冬のボーナスも同様に仮定すれば年間40万円は可能でしょう。これに月2万3000円で年間約28万円となりますから、計68万円。正社員に昨年なられたとのことですが、このボーナスを考えると、絢子さんに「稼ぐ力」が備わったことがわかるはずです。厚生年金加入も含め、正社員のメリットは本当に大きいと言えます。
 

アドバイス2 iDeCo活用で効率的に老後資金づくりを

では、今後の貯蓄法はどうすべきか。基本は定期預金など、リスクを取らない貯蓄商品で構いません。また、現在、すでに投資信託を積み立てで買われていますが、それをiDeCo、もしくはつみたてNISAに切り替えて、資産をより効率的に増やす(ともに売却益や配当などの利益が非課税)ことを考えていいと思います。
 
ただし、節税効果(掛金が全額所得控除となる)も考慮すると絢子さんにはiDeCoの方がメリットは大きいかもしれません。また、iDeCoは原則、掛金の引出しが60歳以降でなくてはできませんが、そもそも老後資金づくりのための制度ですし、定年までの14年間は「増やす」期間として必要な長さとも言えます。掛金は月5000円から。注意点は口座開設や管理等のコストです。金融機関によってその額は異なりますので、事前に調べておきましょう。上限は、勤務先に企業年金制度がなければ月2万3000円ですが、当初は5000円でもいいと思います。
 
定年までこの貯蓄、投資ペースが継続できれば、今ある金融資産を合わせて、1100万円ほどになります。これに退職金を加えれば、それが老後資金です。そして、少なくとも公的年金受給となる65歳まで、できれば 70歳まで働く目標を持ってください。それがもっとも確かな老後対策です。そして、そのためには健康に留意して、長く働くことを意識することが大切です。
 
ちなみに、「年金受給の見込額9万円」は「ねんきん定期便」で確認されたのでしょうか。だとすれば、その額はあくまで現在までに払い込んだ保険料から算出している額(50歳から本来の見込額が記される)なので、今後さらに保険料を払い込み、それに合わせて受給額も増えていくことになります。
 

アドバイス3 保険の見直しは貯蓄が増えてからでもいい

次に保険について。持病を現在抱え、自律神経失調症で通院もされている。将来、医療保障を使う可能性も低くないとのことですから、「安心料」という意味も含めて、現在加入の保険は必要かもしれません。
 
ただし、客観的に見ると、加入されている終身保険は必要ありません。まず、保険料が収入に対して割高なこと。また、保障内容から類推して、主契約部分の保険料が低く、特約部分に保険料が充てられていると思います。結果、60歳時の解約返戻金も大きく元本割れしていて、貯蓄性はありません。しかも、独身ですので死亡保障も必要ないのです。おそらく、医療保障部分を重視しての加入だと思いますが、共済で必要最小限の保障は確保しています。
 
したがって、すぐに払済保険にして、浮いた保険料1万円を貯蓄に回すべきと、通常ならアドバイスします。60歳の時点で、それだけで解約返戻金の倍の168万円が貯まります。もしも医療費が発生すれば、そこから捻出する。そういう発想がより合理的だからです。
 
しかし、独身で頼れる家族もなく、かつ手持ち資金もさほど多くはない。しかも病気をいくつか抱えているという不安を考えると、今は現状のままでもいいかもしれません。数年後、家計が貯蓄体質になり、貯蓄が増えてきたら、保険の見直しを検討してもいいでしょう。

また、現時点で割安な共済保険に新たに加入できるなら(加入が可能か、問合せが必要)、医療に特化したものに加入し、医療保障を厚くした後に、終身保険を払済保険にするという方法もあります。
 
最後にお母さんについて。どういう関係性かは、相談文から判断するしかありませんが、私は経済的に支援する、介護のために同居することはどちらもすべきではないと考えます。

経済的には共倒れになり、絢子さんはおそらく精神的に健康を害するはずです。何のメリットもありません。最近、お母さんが受けられた生活保護は、国の制度です。充分に受給資格があるのなら、堂々と受ければいいですし、そのことで家族が後ろめたさを感じる必要もありません。そして、お母さんにはその生活保護の中で生活費をやりくりしてもらう。それが大原則です。
 
また、介護が発生したら、最寄りの地域包括支援センターなどに相談してください。絢子さんがすべきはそこまでです。それ以上、関わる必要はありません。具体的な支援は公的介護保険の範囲内で、専門職の方に任せます。

それでも親子ですから、顔を合わせる必要も今後あるでしょう。そのときは、一切お金の話はしないこと。身なりも質素にしてください。そこまでと思うかもしれませんが、相手に頼らせる隙を与えないことも、自身の身を守る術として必要だと認識してください。
 

相談者「絢子」さんから寄せられた感想

とても丁寧で細かいアドバイスをいただき、大変感謝しています。色々ひとりで考えても先の見通しがたたず落ち込むばかりでしたが、具体的な道筋を示していただいて希望が出てきました。家計は月によって変動もあり正確に把握しきれていない部分もあるので、見直しして、できる範囲で節約に努めます。迷っていた保険の件も助言をいただけたので、2、3年後をめどにある程度貯蓄ができたら払い済みにしようと思います。iDeCoについても名前を聞いたことがある程度だったので、調べてみようと思います。


 教えてくれたのは……
深野 康彦さん
 
 

 


マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。近著に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など




取材・文/清水京武
 
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