介護防止にもつながる床ずれ防止
介護の現場は、施設や病院から自宅へと移ってきています。周囲で介護を経験された方がいれば、「床ずれ」について聞いたことがある方もいるかもしれません。床ずれは、ある一定の場所に、長時間圧力がかかり続けることが原因で発生します。体の状態にもよりますが、早い場合は1時間以下のごく短い時間でも床ずれになってしまうことがあります。
床ずれは、痛みや出血を伴うことがあります。発生した場所にもよりますが、痛みが強すぎて座れなくなったり、横になるのも辛くなったりすることもあります。痛みが強すぎるために、ちょっとした段差につまずいて転ばれた方もいらっしゃいました。また外出や近所の方に会いにいくことすら苦痛になり、床ずれの痛みが原因で、要介護状態になってしまった方もいます。床ずれは介護を必要とされる方だけに発生するものでなく、誰にでも発生しうるものです。床ずれの原因や要因通し、適切な予防方法について詳しく説明していきます。
床ずれの原因は介護力不足だけはない! 床ずれに絡む複雑な原因
皮膚には多くの機能があり、私たちの体を守っています。例えば、温度管理のために汗をコントロールしたり、外からの細菌や紫外線を予防したり、弱酸性に保つことで細菌の増殖を防いだりしています。大切な役割を持つ皮膚にも、栄養や酸素は欠かせないものです。しかし、皮膚に栄養を送る血管は細く、少し強い圧力がかかると血流が止まってしまうことがあります。長時間横になっていたり、車椅子に座っていたりすると、ある一定の場所に圧力がかかります。血流がとまってしまった皮膚は、赤く充血し、そのまま血流が再開しない場合死んでしまいます。この状態が「床ずれ」と呼ばれるのもので、医療用語では「褥瘡(じょくそう)」と言います。
一般的に床ずれは、圧を抜く除圧の間隔が短いことや介護の手が足りないことが原因とされます。しかし、長時間の圧迫のみが原因ではありません。脱水や低栄養、排泄物や汗により、皮膚自体が弱くなっていることも要因となります。皮膚が弱くなると機能が低下し、容易に皮膚がめくれ、感染を起こしてしまいます。床ずれを防止するためには、日頃の生活リズムを整えることも必要となってくるのです。
動いて、食べて、入浴して……生活リズムを整えることも効果的な床ずれ対策
床ずれ予防は、要介護度に応じて細かい違いはありますが、概ね共通した予防方法があります。床ずれ予防に特化、短期間で予防できるものはなく、毎日の生活に取り入れていくことが大切になります。また介護者だけが予防法を知り、半ば強制して床ずれを予防することは難しいです。高齢者の方に、床ずれを予防する必要性を理解していただき、一緒に予防することが大切です。
■できやすい場所の圧を抜く「除圧」
床ずれを作らない一番の方法は、長時間同じ体勢を取らないように、しっかり動くことが必要です。日頃から運動を行い、外出の機会を増やし、活動と休息のバランスを保つことが大切です。動くことができない方や動く機会が減少した方には、真っ先に取り組む必要があるのは除圧だと言えます。床ずれは一定の箇所に圧がかかることで発生をするため、介護保険で利用できる体圧分散マットレスが予防には効果的です。活動できる範囲に応じて、硬い物から柔らかい物まであります。ケアマネや専門員と相談し、適切なものを選ぶことが大切です。ほかには圧が分散できるビーズ枕に替えたり、膝や足首が重ならないようにクッションを挟むなどの方法もよいでしょう。
寝たきりの方は2~3時間、少なくとも4時間に一回は体勢を変える必要があります。飛び出ている場所が好発部位と言われ、踵やお尻、肩、耳などがあげられます。数時間に一回体勢を変えるのは、時間的にも体力的にも難しいものです。体勢を変えずとも、手を差し入れ少し浮かすだけでも除圧はできます。レジ袋などのビニール製の袋を手にはめると、スムーズに背中に手を入れることができ、介護者も高齢者も負担が少なくなります。
■一食を少なく、三食以上に分けて栄養補給
高齢者の方は、体の外から見える機能だけでなく、内臓機能も低下してきます。消化器系の機能の低下は、多くの方が自覚します。今までの感覚で食事を摂っていると、胃もたれや逆流になり、食事を摂ることさえも苦痛になります。苦痛になると栄養の吸収自体も悪くなり、栄養が足りず、床ずれだけでなく脱水、低栄養の心配も出てきます。
三食で栄養を補うことができない時は、間食をうまく使いましょう。一日で必要な栄養を摂ればよいと考え、10時や15時に間食をして栄養を補います。一食の量が少なくなるので、比較的簡単に栄養を摂ることができます。しかし、間食の量が多すぎて基本の三食が食べれなくなることは避けなければいけません。あくまで補助的に間食を使い、栄養補給をしてください。
■湿気を取り除き保湿を徹底
ベッドとの接地面や車椅子との接地面、オムツの中、靴の中などは湿気が高い状態になっています。湿気は皮膚を柔らかくしすぎてしまい、細菌が繁殖しやすい環境になってしまいます。また汗や排泄物が長時間付着すると、皮膚は刺激を受け乾燥が進みます。汗や排泄物を拭き取る時には、こすることは厳禁です。汗は硬めに絞ったタオルで押し拭きをし、排泄物は微温湯(37~38℃)で流しましょう。それに加えて保湿を行い、水分を含ませることが大切です。入浴後や排泄物を交換した後に、市販の保湿クリームなどを使い保湿します。不快な湿気は取り除き、快適な保湿に努めていきましょう。
共働き世帯の増加や核家族化が進み、介護にあてられる時間は多くありません。ですが自宅にいたいという被介護者の思いに寄り添って、在宅介護を選ばれた方は多くいます。時代によって価値観や考え方は異なり、以前の経験や固定概念は通用しないこともあります。現在使える社会資源や介護用品を上手く使い、介護負担を減らすとともに快適な生活を送ることができるように活用していきましょう。