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金融庁は、かねてより、銀行のあまりに営利的な勧誘営業を、批判してきましたが、今回は、銀行(投信を販売する金融機関)に対して、顧客の運用損益や、投信のリターン実績を、公表することを求めました。その伏線として、冒頭の「半数が損」説を流したのです。「貴行が顧客本位であるなら、実績を公表してみろ」というワケですね。
調査結果が生む3つの憶測
この「半数が損」説は、さまざまな憶測を生みそうです。1、投信とは、もうからない商品だ?
2、銀行は、もうからない投信を売っている?
3、個人は、もうからない運用をしている?
一つの結論だけで、すべてを判断してしまうのは、思考停止です。一つの数字から、典型的なパターンしか想像できないのは、想像力の欠如であり、だまされやすい人であることの証明です。あなたは、この発表を見て、どう解釈しましたか?
300人の投資実績は?
先ほどの憶測が間違っているという反証を、書かせていただきます。私が知っている300人以上の個人投資家の実態です。1、投信を長期積立で買って、損をしている人はほぼいない。
2、13年も毎月購入を続けている人の運用利率は年7.5%。
3、良い投信を、2倍3倍に増えるまで、保有し続けている。
同じ投信を買っているのに、何が違うのでしょうか?
金融庁調査が誤解される理由は?
前者の銀行顧客の個人投資家は、投信の保有が、1~2年と短いです。したがって、少し利益が出ると、すぐに売ってしまっているということが想像できます。ということは、保有中の含み益が少ないので、今回の調査では、良い成績として捕捉されていません(たとえ、増える投信を買ったことがあったとしても)。持っているのは、塩漬け銘柄ばかりという実態だからです。そもそも、投信という商品に、罪はありません。どんな商品にも、ダメなものと優れたものがあります。「半数が損」というひどい発表から、個人的な憶測で、軽々に結論を導き出すのは、誤解の元です。銀行が悪いのか?投信が悪いのか?という、安直な犯人探しをしてしまいがちだからです。資産運用で大切なことは、そのどちらでもありません。
一番大事なことは、投資の方針なり!
投資で資産を増やすために必要なのは、金融機関の選択なのか?商品の選択なのか?実は、どちらでも、ありません。もっとも大事なことは、投資の方針を適切に定めることであり、それを長期にわたって維持し続けること。それを妨害するのは人間の感情ですから、投資家自身が感情を制御して、理性的、合理的に振る舞うことが肝要。投資にまつわる感情と、どう付き合っていくかを、問うべきなのです。
・お金を失う恐怖心を、どう乗り越えているのか?
・お金を増やす辛抱を、どこでしているのか?
・その思考法を、どこで学ぶのか?
何を提供しているかという商品の問題よりも、商品をどう扱うかという、利用方法の方が、圧倒的に重要です。リスク商品との付き合い方を、どう啓蒙していくか?そこに、日本人の投資文化が成長するためのカギがあります。悪質な勧誘や利益相反行為を追求するだけの取り締まり行政では、この国の投資音痴がいつまでも治らないと、私は思っています。
「貯蓄から投資へ」の流れを、失速させないためにも、誤った方法で行う投資の失敗事例を喧伝するネガティヴキャンペーンよりも、正しい投資で、当たり前にもうけることができる成功事例をこそ、世に広めて欲しいと切に願う次第です。