介護

老後を楽しむ「老活」の始め方…資金・健康・趣味

【看護師FPが解説】定年退職後、子育ても終えて自分の時間が増える老後。一方で年金支給の繰り上げや老後資金の不足などから働き続ける方や、貯蓄があっても日々に張り合いがなく嘆く方もいます。老後資金や健康、生きがいで困らないためには、現役時代からの準備が大切。セカンドライフを楽しむための早めの「老活」のすすめとポイントを解説します。

藤澤 一馬

執筆者:藤澤 一馬

在宅介護と生活設計ガイド

終活はまだ早い? 老後の生活に向けて準備する「老活」とは

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今までとは違う環境を体験してみてはいかがですか 出典:amana

近年よく耳にするようになった「終活」。人生における最期の局面では、体の自由がきかなくなったり、自分での判断が難しくなったりする可能性もあるため、身辺整理をしたり、後に残される方に手紙を書いたり、医療・介護・葬儀・財産分与などについての希望を書面などを準備したりする方は少なくありません。エンディングノートや尊厳死宣誓書といったものも登場し、これらの活動を支援する団体も数多くあります。

しかし、一方でまだまだ元気なシニア世代。元気な時に最期の準備に入るには抵抗があるという方も少なくないでしょう。

私たちは例外なく、誰しも年をとります。年齢を重ねるごとに考え方や物事の捉え方が変わり、若い時には分かり得なかったことも知ることになります。年齢を重ねるごとに一人一人違う経験をし、他人にはない知識や技術を会得します。自分らしい老いを考え、老いることで得られることを活用し、人生をより良くしていく活動を「老活」といいます。今や年金だけで生活することにも不安を感じ、貯蓄や投資をしたり、定年後も働いている方が多くいます。豊かなセカンドライフを過ごすために、必要な準備の仕方、ポイントについて詳しく解説していきます。

幸せな老後生活のために「40代からの老活」を勧める理由

晩婚化が進み、30代から結婚や子育てを始められる方が増えています。40代というと現役世代真っ只中で、仕事に子育てに忙しい方ばかりでしょう。しかし、定年を迎える60代まで、40代には20年程度の準備期間しか残されていないのです。仕事や育児に気を取られているうちに、あっという間にセカンドライフ目前まで突入してしまいます。そのため、忙しい40代のうちから、できる準備を進めることが大切です。

老活に関連してよく相談を受けるのは、第二の人生に必要な老後資金と、健康を維持する方法です。以下で順に解説していきたいと思います。

幸せな第二の人生に必要な老後資金の目安・貯め方

まずは老後資金について解説しましょう。現在、国民年金、厚生年金に入っていて、満額受け取れた場合を仮定しても、老後を過ごすためには3.000万円程度が不足すると言われます。3.000万円を準備することは平均的な収入では容易ではなく、単純に貯金するだけでは難しいのが現状です。そのためお金を準備するためには、「手元に入るお金を増やすこと」と「必要なお金を減らすこと」の2つを意識して実践していく必要があります。

1. 手元に入るお金を増やす方法……趣味と実益を兼ねた副業は魅力
手元に残るお金を増やすためには、収入を上げる必要があります。堅実に昇給したり、うまく転職したりできればベストですが、なかなか難しいのが現実かもしれません。また、資産運用などで増やす方法もありますが、こちらも大きく増やすことを考えると逆に資産が減ってしまうリスクも伴うため、安易にはお勧めできません。

まずは手軽にできる方法として、副業は一つの選択肢になるでしょう。働き方改革で副業をする人は以前よりも増えています。インターネットを活用することで容易に始められる副業も増え、仕事の行き帰りや、ちょっとした休憩時間を副業の時間に充てている方も少なくないようです。例えばフリマアプリやオークションでのせどり、ホームページやロゴなどの作成代行、写真を投稿して使用料を徴収など、趣味などの楽しみも兼ねられるような多様な副業があります。これらは定年退職後の趣味などにつなげられる可能性もあるので、その点でも魅力があります。

私自身も本業の看護師とは別に執筆や行政評価委員などの副業をしており、毎月数万程度の副収入があります。ほかには専門資格を取得し、独占業務で副業をする方法もあるでしょう。定年退職後に本業へ転換することもでき、安定して収入を確保する方法の一つになります。

2. 必要なお金を減らす方法……老後の医療・介護費を抑える健康管理

若いうちは忘れがちですが、老後の必要資金として、医療費・介護費も忘れてはいけません。これらだけで月に数十万円の支出になることもあります。負担の高い医療費・介護費を減らすことは、老後の必要費用を抑えるためにも非常に重要です。

先にできることとして、生活習慣病の予防が挙げられるでしょう。特に代表的な疾患である糖尿病は、知らず知らずのうちに病気が進行します。症状が出た時には重症化していたり、高血圧を始めとする様々な病気を引き起こす原因にもなります。また認知症の発症リスクも高まり、医療費に加え介護費もかさむことにもなりかねません。意外と知られていませんが、生活習慣病は10代から見られるケースもあり、少しでも早い段階から予防の意識を高めておくことが大切です。

病院に行く時間がないという方は、薬局で行っている糖尿病の簡易検査などもよいでしょう。簡易検査ではありますが、約10分程度、500円ほどの費用で健康状態をチェックできます。健康診断を定期的に受けることももちろん大切ですが、自分らしい老後を過ごすためにも、健康に対する意識を高め、できるところから改善していきましょう。

人生100年時代を健康に楽しむ老後の生きがい・趣味探し

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今まで出来なかった分野や新しい知見を広げることも趣味の一つです 出典:amana

老後の過ごし方に関連して相談を受けていると、女性の方が友人との旅行やお茶会、カルチャースクールなど、いくつかの趣味を持っていることが多いと感じます。一方で男性の場合は、高校・大学を卒業して就職してから40年以上働く中で、自分の趣味や余暇の過ごし方を確立していない方は珍しくありません。

特にいわゆる「仕事人間」と言われるような、仕事に情熱を注いで、毎日勤しまれていた方ほど、定年退職後に何をして時間を過ごせばよいのかが分からず、悩みをご相談されることが多いです。

仕事が忙しい時には、趣味に時間を割くのは難しいかもしれませんが、第二の人生である老後を楽しく過ごすためにも、楽しめる趣味を見つけることは大切です。私は相談いただいた方の生活をお聞きした上で、具体的なご提案をさせていただくこともあります。例えば今まで興味のあった分野の勉強、資格取得、ゴルフやボーリングなどのスポーツ、新しく始める仕事の仕方、ご夫婦で行える趣味など。ご相談をいただく方は、今までの経験を活かした趣味や生きがいを希望されることが多いように感じます。老後の人生を充実感を持って楽しむことは、毎日の生活に張りを与えてくれ、結果的に健康的な暮らしにもつながります。

「老活」はこの時からがスタートという明確な始め時はありません。年を重ねていく中で、徐々にライフスタイルを変えていき、充実した第二の人生を迎えるのが理想的です。私たちの過ごす毎日は途切れることなく続き、毎日を積み重ねた先にいつか最期が訪れます。まずは充実した老後を過ごすための「老活」からスタートし、その中で必要性を感じたものから「終活」も進めていくと、納得のいく老後の準備ができるのではないでしょうか。一度きりの人生をより楽しく、より良いものに変えるために、ぜひこれからの自分の過ごし方を考えてみてください。
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