ESGは環境・社会・統治の3つの頭文字を使った造語!
Environment(環境)、Social(社会)、Governance(統治)の頭文字を組み合わせた造語が「ESG」です。この3つの基準を使用して企業活動を分析し、より優れた企業に投資を行うというものがESG投資です。たとえば、「環境」であれば、工場などから排出される二酸化炭素(CO2)を削減する、水資源を枯渇させないような取り組みが評価されます。「社会」は、女性の活躍推進や人権への配慮が行われているか。「統治」は、社外取締役の設置、かつ社外取締役がきちんと機能しているか、企業の情報開示が積極的に行われているかなどが評価されるのです。
簡単にESG投資を見てくると、かつて話題になった投資スタイルに「SRI(社会的責任)投資」、「エコファンド」などを思い出す個人投資家がいると推測します。しかしながら、そのブームは長続きしませんでした。SRI、エコを名称に用いている投資信託の組入銘柄は、時価総額の大きな銘柄ばかり。TOPIX(東証株価指数)連動のインデックスファンドやTOPIXをベンチマークとするアクティブ運用の投資信託と組入銘柄に差異が見られなかったこと、環境問題への対応が企業業績や株価にあまり影響を与えなかったことなどを背景に、一過性で終わってしまったわけです。
運用履歴が1年を超えるのはCAM ESG日本株ファンドのみ!
個人投資家がESG投資を行うには、ESGの取り組みに熱心な個別企業の株式へ直接投資する方法、投資信託やETFを購入する方法などがあります。個別企業の取り組み状況は、企業のHPなどで調べることができますが、上場企業数は今や3600を超えています。すべてを調べるのはかなり骨の折れる作業となるため、投資信託あるいはETF(上場投資信託)を活用するのが実際的と言えるでしょう。投資信託を活用するのが実際的とはいえ、E・S・Gの3つの側面全てをカバーする投資信託、かつ運用履歴が1年を超えている投資信託は、キャピタルアセットマネジメント「CAM ESG日本株ファンド」1本しかない状況です。2018年5月25日現在、同投資信託の純資産総額は8.23億円と少ないですが、騰落率はTOPIXや日経平均株価などの代表的な株価指数10%以上上回っている好成績です。
E・S・Gの3つの経営目標と態勢整備状況等を定量的に分析して、経営力、成長力で優位のある企業に投資が行われます。グットバンカー社から提供を受けたESGスコア(非財務情報)と、キャピタルアセットマネジメント独自の財務スコア(財務情報)を組み合わせて運用することが、好成績を生み出している要因と考えられます。
その他には、三井住友アセットマネジメントが「三井住友・日本株式ESGファンド」、ニッセイアセットマネジメントが2018年2月に新規設定というように、E・S・Gの全てをカバーする投資信託は2本しかない状況です(2018年5月31日現在)。
E・S・Gのいずれかをカバーする投資信託などは複数あり!
E・S・Gの全てをカバーするのではなく、いずれかをカバーする投資信託は存在しています。E(環境)であれば、日興アセットマネジメントの環境関連企業を投資対象とする「エコファンド」。S(社会)は、大和証券投資信託委託の女性の活躍で成長可能な企業を投資対象とする「女性活躍応援ファンド」、朝日ライフアセットマネジメントの事業を通じて社会貢献している企業を投資対象とする「朝日ライフSRI社会貢献ファンド」。G(統治)は、アムンディ・ジャパンの株主還元などの余力がある企業を投資対象とする「アムンディ・ターゲット・ジャパン・ファンド」、スパークス・アセットマネジメントの対話で企業価値が向上しそうな企業を投資対象とする「スパークス・日本株式スチュワードシップ・ファンド」などがあります。いずれの投資信託も運用履歴は3年を超えているものの、純資産総額は数百億円から数十億円に過ぎません。ただ、女性活躍応援ファンドの3年騰落率(2018年5月末)は、2倍強の好成績となっています。話題になっているESG投資ですが、投資信託を含めて足下はまだ黎明期と言わざるを得ない状況です。エコファンド、SRI投資のように一過性の投資スタイルにならないことを願うばかりです。
なお、記載した投資信託は日本株型で、海外株を投資対象とする商品もあります。また、女性活躍など日本株のESG指数に投資するETFも上場されていることを付け加えておきます。