アドバイス1 このままリタイアしても資金的な不安はない
病気のため、このまま退職してもマネープランにおいて問題はないかというご相談ですが、大丈夫です。安心してリタイアされ、治療等に専念されればいいと考えます。試算してみましょう。まず、相談者のなつがあきさんが基本的に現在と同じ生活を継続するとします。したがって、生活費は月40万7000円(便宜上、教育費1万5000円は差し引く)。これに、今までボーナスから捻出していた保険料の年払いと旅行費用を月割りにして加算すると、約44万円。
収入はご主人だけになりますので、収支では毎月およそ24万2000円の赤字となります。また、これとは別に、下のお子さんの今後かかる教育費を考慮する必要があります。進路によってもその額は異なりますが、ここでは一応1000万円としてみます。
現在の金融資産は、貯蓄と投資商品の合計で5380万円。これに、なつがあきさんの退職金を加えると7180万円。ここから、ご主人が定年となるまでの6年間の生活費の赤字総額1740万円を差し引きます。さらに、教育費ですが、予算1000万円に対して、学資保険の満期金180万円と養老保険の満期金100万円×2本をその原資に充てると、実質、貯蓄から捻出するのは620万円。したがって、ご主人の60歳時に手元に残る資金は4820万円ということになります。
次に、60歳以降の収支ですが、ご主人はこの年齢でフルリタイアするとします。収入は公的年金と保険からの年金になりますが、生活費も60歳以降は保険料が月割りで4万円ほど下がりますので、月40万円。5年間で2400万円。これをすべて貯蓄から捻出すれば、手元に2420万円が残ります。
そして、一部前倒しの試算となりますが、ここに個人年金保険の受給額を足してみます。受給期間確定のものが夫婦合算で3820万円。終身タイプのものが仮にともに90歳まで生きたとして、およそ2900万円。合わせて6720万円の受給額になりますから、ご主人65歳のとき、計算上、トータル9140万円の金融資産があることになります。
公的年金の受給額は夫婦で331万円。月額27万6000円ですが、税金と社会保険料を差し引いた実際の手取額を24万円とすると、毎月の赤字は16万円。90歳まで生きたとして25年間で4800万円。つまり、90歳の時点で手持ち資金が約4340万円まだ残るということになります。長生きリスクや医療、介護費用を考慮しても、資金的には心配する必要はないと金額だと言えるでしょう。
アドバイス2 生活をダウンサイジングする必要なし
先の試算ですが、おそらく、普段の生活費も高齢になれば自然と低くなるでしょう。また、ご主人の退職金が不明だったため、加算していません。さらに言えば、毎年、ご夫婦の親御さんからの計200万円の暦年贈与も、試算から除いています。仮にあと5年続けば、さらに1000万円、資金的余裕が生まれます。ともあれ、住宅コストを下げるなど、生活をダウンサイジングする必要もありません。旅行費用も年間5万円しか計上していませんが、もっとお金をかけても何ら問題はありません。
アドバイス3 保険を減らし、家計をスリムにしてもいい
家計についても、取り立てて見直す必要性はありません。ただ、保険の掛け方については多少無駄を感じます。保障が大きくないと不安で仕方がない、あるいは仕事との関係で加入せざるを得ないという理由なら、このままでも構いません。しかし、そうではないなら、現状で保険料を支払っている保険のうち、個人年金保険と医療保険、火災保険以外はすべて解約されてもいいと思います。死亡保障は万が一のとき遺族の生活が困らないよう備えるものです。しかも、3人のお子さんに金融資産を遺す考えはないとのこと。であれば、小学生のお子さんが社会人になるまでの資金が用意できればいいので、現状の貯蓄だけで十分足りるはずです。
医療保障も、夫婦とも加入している医療保険で必要最小限の保障は確保しています。それ以上かかる医療費は、浮いた保険料を貯蓄に回し、そこから捻出した方が合理的だと言えます。
負担で言えば、それでも1万円程度の軽減です。家計全体から見れば大きなプラスではありませんが、家計をスリムにするという点でも、見直す意味はあるでしょう。
相談者「なつがあき」さんより寄せられた感想
我が家は妻である私のほうが給与が多く、私が退職した場合、夫一人の給与で生活していけるのか、特に夫が強く不安を感じておりました。深野先生に的確なアドバイスをいただけたことで、夫も安心し、私は治療に専念することができます。ご指摘いただいた保険の見直しも早速検討したいと思います。本当にありがとうございました。マネープランクリニックのネットラジオ番組『2020年の家計防衛』を始めました!
ぜひご視聴ください!
教えてくれたのは……
深野 康彦さん
取材・文/清水京武
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