過去最少の小学6年生人数だが、中学受験者数は増加
2018年の小学6年生の人数は過去最少の約32万8000人。それにもかかわらず、中学受験者は約5万7000人と2015年以降、一貫して増加傾向にあります。この要因としては、大学入試改革への不安から、人気大学付属校への志向が高まったことが考えられます。大学付属中学へ入学すれば、まだ中身とその対策がはっきりしない大学入学共通テストの勉強をすることなく、付属大学へ内部進学できるからです。
また、受験トレンドはその年のブームにも左右されます。
2017年は書籍『下剋上受験 両親は中卒 それでも娘は最難関中学を目指した』がドラマ化され、マンガ『二月の勝者』が話題になり始めた年でもありました。
それまで中学受験を考えていなかった層が、小学6年生から準備をしても合格できる私立中学を受験したことも中学受験者数の増加に影響していると考えられます。
公立中高一貫校受験者が増加に転じ、適性検査型試験を採用する私立も増加
大学入試改革の目玉である大学入学共通テストの導入による影響は、公立中高一貫校の受検者増にも表れています。大学入学共通テストのサンプル問題が、公立中高一貫校の適性検査に共通する点が多いからです。
公立中高一貫校は近年連続して受検者が減少していましたが、2018年度入試では昨年度よりも受検者が増加に転じました。
また、宝仙学園理数インターのように、「その場で考え、表現する力を問う」タイプ、いわゆる適性検査型の入試を採用する私立中学が136校へと激増しています。公立中高一貫校の模擬試験として、適性検査型の入試を採用する私立中学を受験する層も多くなっています。
受験回数を増やした学校が大幅な受験者数増に
受験者数を大きく増やしている学校の特徴として、- 受験回数を増やしている
男子校では巣鴨がそれまでの2回入試から3回入試へ、女子校では午後入試を取り入れた実践女子学や品川女子学院、三輪田学園、そして3回入試にした女子美大付属などで受験者が増えました。
帰国枠受験者も増加傾向
帰国枠入試の受験件数は2017年度の約6000件から2018年度の約7000件へと増加しました。ただし、海外に駐在する日本人児童数が増える一方、現地に駐在し続けるケースも増えています。したがって、帰国生数自体はあまり変化がなく、一人当たりの受験校数が増えていると考えられます。海外に駐在する日本人が増えていることを受け、帰国枠受験制度を設ける学校が増えているからです。英語入試を採用する私立中学が急増
2017年度入試では、英語入試の応募者が前年度の約3倍になりました。2018年度の英語入試の応募者は約1800件となり、2017年度とほぼ同数でした。英語入試を採用する私立中は2017年度入試の95校から、2018年度入試の136校と急激に拡大しています。
英語入試の出題は、エッセイなどを書かせる高度な英語力が要求される入試と、中1後半から中2の学習指導要領の範囲内から出される初歩的な英語力があれば通過できる入試の二極化が進んでいます。
2019年度入試では、慶應湘南藤沢、新たに開校予定の市立大宮国際中等が英語のテストを導入することになっています。今後、英語入試を採用する私立中が拡大していくのは間違いないようです。
「1教科入試」の増加、2教科入試の教科比重を変える動きも
1教科入試の応募者数は2017年度の約1200件から2018年度の約1400件へと増加しています。大妻中野、実践女子学園、品川女子学院、文化学園大杉並などが新たに1教科入試を導入しました。また、2教科入試で算数の得点の比重を高める入試が、昭和学院秀英、東京都市大等々力で導入されました。
「新傾向入試」の増加
公立中高一貫校の適性検査型の私立中入試の応募者も2017年度の約6300件から2018年度の約8200件へと増加しています。特に埼玉県の私立中の適性検査型入試応募者は約7割増という大幅な増加でした。4教科や2教科の従来型の中学受験勉強が不十分であっても、都立中高一貫校の適性検査のために教科横断型の学習や記述対策をしてきた受験生にとっては、積極的に検討したい選択肢なのでしょう。
また、今春、開成が「大学入学共通テスト」のような出題をして「開成ショック」として話題になりました。このように私立トップ校の入試問題にも変化が起きています。大学入試改革を先取りしたような「思考力」「判断力」「表現力」を問う問題が増えているのが大きな傾向として挙げられます。
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