個人年金保険は保険の節税機能を考慮してみると…
個人年金保険は、運用利回りだけで考えれば年利1%あるかないかという程度で確かに魅力はありませんが、保険の「節税機能」を考慮すれば、安定した利回り商品になります。ご存知の人も多いと思いますが、保険に加入すると保険料控除が受けられ、所得税と住民税が削減されます。平成24年1月1日以後に締結した保険契約については新制度が適用され、それ以前に契約したものは旧制度での申告となり計算が異なるのですが、新制度では、一般生命保険、介護医療保険、個人年金保険の3区分があり、それぞれに年間8万円以上の保険料の払い込みで、最大で下記の所得控除(所得税の所得控除、住民税の所得控除)が受けられます。
一般生命保険料控除(所得税4万・住民税2.8万)
介護医療保険料控除(所得税4万・住民税2.8万)
個人年金保険料控除(所得税4万・住民税2.8万)
つまり年間の払込保険料が合計24万円以上で所得税で最大12万円、住民税で最大7万円(住民税は3種類合わせても上限7万円)の所得控除が受けられます。
年収500万円~600万円で、家庭がある一般的な会社員の場合、所得税率はおおよそ10%、住民税は一律10%なので、節税できる(サラリーマンの場合は年末調整で還付される)金額は、
所得税:120,000円×10%=12,000円
住民税:70,000円×10%=7,000円
所得税12,000円+住民税7,000円=19,000円
となり、最大で19,000円の節約を受けられる計算になります。(所得税率は他の収入や家族構成によっても変わります。復興特別税もここでは無視)
これらを掛け捨てではなく、満期返戻金がある貯蓄型のタイプで、返戻率(払い込んだ保険料に対し、満期や中途解約で戻ってくる金額)が高い保険に加入するのです。
保険料をクレジットカードで払えば
ポイント付与分の利回りが上がる
たとえば、私が加入している生命保険は、60歳まで払い込み65歳で受給すれば返戻率が110%を超えます。個人年金保険は65歳以降の受給で120%超です。ただし、各々年間8万円以上を払い込んでも税制上のメリットは小さくなる一方ですので、年間の保険料支払額が各々8万円を超えるギリギリの金額で加入すれば(月々7,000円程度)、最小の支出で最大の控除を受けることができます。
さらに、これらの保険料はクレジットカードで支払うことができるものが多いですから、カードのポイントもつきます。
私自身も生命保険を月9,000円、医療保険7,000円、個人年金保険1万円で年間312,000円の保険料をカードで払い込んでいて、ポイント還元率は1%なので仮に所得税率と住民税率がそれぞれ10%とすると、約7%の利回りということになります。
こうして最大控除の最小金額で加入すれば、まずまずの高利回り商品となり、これが保険料を払い込んでいる期間ずっと続きます。低金利の今、これほどの利回りが取れる商品はなかなかないですし、仮に金利が上昇したとしても、定期預金などで7%を超える利息がつく可能性は現実には考えにくいでしょう。
それに、節税による利回り効果は景気変動の影響を受けず、株価や為替レートがどうなろうと変わりません。さらに本人の努力や才能も運も一切関係なく、一律に恩恵にあずかれます。
ただし、自分が必要とする保障内容を得るには、貯蓄型保険では保険料が高すぎて払えないとか、貯蓄で代替できるほどの経済的余裕はなく、将来解約せざるを得ない状況に陥るかもしれないと思っている人には向かない方法です。途中解約は元本割れになりますから。
そしてもちろん、毎年7%以上で安定運用できる手段を持っている人には「個人年金保険なんかに入ってはいけない」「保険は安価な掛け捨てで十分」という指摘は正しいということになります。
公的な制度は民間の保険より利回りがアップする
ちなみに、iDeCoと呼ばれる個人型確定拠出年金は、これら民間保険のような控除額に上限がなく、掛け金全額が所得控除となりますから、もっと利回りがアップします。たとえば、所得税率10%の人は住民税と合わせて20%の節税効果となり(住民税の計算はもう少し複雑なのですが、単純計算)、しかも60歳まで引き出せませんから老後資金が強制的に貯められます。
定期預金といった元本確保型の商品で運用すれば元本が目減りするリスクもなく、受け取るときは一時金方式なら「退職所得控除」、年金方式なら「公的年金等控除」の適用を受けることができるなど優遇されており、弱点はどこにもありません。
自営業者や企業経営者の場合は、経営者の退職金制度である小規模企業共済が利用でき、確定拠出年金と同じく掛け金全額が所得控除となります。
また、倒産防止共済にも加入可能で、これは掛け金全額が損金扱い(経費として落とせる)です。
小規模企業共済は最大7万円/月まで、倒産防止共済は最大20万円/月までで、総額が800万円になるまで払い込みが可能です。いずれも運用利回りはゼロに等しく解約時には収入として課税対象になりますが、ほぼ掛け金全額が戻ってきます。
というわけで私はこれらすべてに満額加入しているのですが、目先の利回りだけでなく節税効果と合わせて検討すれば、個人年金保険など確定給付型の保険商品は運用手段として有力な選択肢になることがわかります。
「専門家の言うことは正しい」、「みなに当てはまる」とは限らないので、安易に迎合したり短絡的に反発したりするのではなく、「本当かな?」とつねに疑い、自分でウラを取る習慣が大切です。