住まいのプロが提案「イエコト」

体が衰える前にしておきたい、老後の街選びの条件

年を経ても元気に暮らす基本の習慣は、「家事」「人付き合い」「運動」です。この3つの習慣が実践しやすい町の条件を考えてみましょう。

大久保 恭子

執筆者:大久保 恭子

これからの家族と住まいガイド

3つの習慣が実践しやすい町

年を経てもなお、ずっと元気に暮らす「老い活」の基本は、3つの習慣の実践と考えます。3つの習慣とは「家事」「人付き合い」「運動」です。
3つの習慣

「家事」「人付き合い」「運動」の3つの習慣が実践しやすい町とは?


「家事」
ができなくなれば、日々の暮らしは成り立たなくなります。

「人付き合い」を失うと、生きる張りをなくし、生活は硬直化し、やがて破綻することもあります。

「運動」により足腰の衰えを食い止めなければ、家事も人付き合いもできなくなります。

そして「家事」「人付き合い」「運動」はこのように繋がっており、どれか1つが欠けてもだめで、三位一体での習慣形成が鉄則です。この3つの習慣を続けていくには、しっかりした基盤が必要です。その基盤とは町です。町を積極的に住みこなすことで、習慣が実践しやすくなすのです。

では、どんな町が望ましいかを、見ていきましょう。まず、「家事」がしやすい町についてご説明します。

リサイクルに熱心な町

家事のなかでも最優先すべきは片づけです。筋力が衰えて重い物やゴミ袋が持てなくなると、誰もが片づけられなくなってしまいます。そうなることを見越して、早いうちから、余計な物は置かない暮らしを定着させることが必要です。そこでおすすめなのは、家の中に物をためこまないで済む町です。

定期的にリサイクル用品の回収業者が巡回してくる。リサイクルショップがある。バザーやフリーマーケットが定期的に開かれている。高齢者を対象とした玄関前ゴミ回収サービスがある等々。リサイクル関連の情報は、地域の広報誌、町内の掲示板、インターネットなどで情報を得ることができます。


商店街のある町

人は食べるもので、できています。料理は生きている限り必要な家事。料理がしたくなるのは、商店街のある町です。スーパーよりちょっと時間がかかるかもしれませんが、八百屋、魚屋、肉屋、乾物屋、パン屋、お惣菜屋などのお店が軒をつらねている商店街で買い物をしましょう。

全国の商店街が廃れる中、ところがどっこい! 今でも生きている商店街には、隠れた名店も。そんなお店の主と旬の野菜や魚、それらの調理方法についてやりとりするのは、ちょっとした楽しみとなります。食べたことのない食材やレシピに挑戦することで、料理への意欲も高まるというものです。

お店の人と顔なじみになれば、教えてもらって作った料理の感想を述べたり、世間話をしたり、ときどきおまけをしてもらったり。このやりとりこそが、日々の料理を継続する原動力となるのです。


人付き合いがしやすい町

人はひとりでは生きられません。人との関わりが、生活の張りや生きがいを生みます。残念ながら年を経るごとに、退職で仕事関係の付き合いがなくなり、徐々に遠出外出ができなくなって友人関係が疎遠になり、そのうち死亡通知が。そして伴侶の死と次々に人付き合いが消失していきます。

最期に残るのは、遠くの子より近くの隣人たちです。したがって、元気に老い活するには、ご近所付き合いがしやすい町がおすすめです。


「町内会・自治会」活動が活発な町

一番身近な近所づきあいは、町内会や自治会への参加です。町内の清掃、運動会、ハイキング、夏祭りなど、様々な活動を通して、親しいご近所さんができるはずです。

マンションの1階の掲示板や町中の掲示板にイベント告知のちらしやポスターが貼ってあるところは、町内会・自治会活動が盛んであるという、ひとつの目安になるでしょう。


ボランティア活動がさかんな町

身近なボランティアとしては、高齢者を対象とした食事サービス、見守り、訪問活動、交流の場づくり、車椅子などの移動の補助などがあります。こうした活動を通して親しい仲間をつくる。また、被支援者に自分を重ねることで、老いの先取り体験ができます。

他には、町の緑化、手話、子どもの通学路の安全確保、河川の清掃等々、自分の町をより良くしたり、そこで暮らす人々の手助けをする様々なボランティア活動が盛んな町なら、それらに参加することで、親しいご近所さんづくりが可能になります。その町にどんなボランティア活動があるかは、地元の社会福祉協議会に問い合わせると分かります


趣味の会が色々ある町

俳句、コーラス、歩こう会などに参加すれば、身近なところに、共通の話題を持つ仲間をつくる機会が得られます。自分より若い世代の仲間をつくることも大切です。若い世代との交流は、新しい事象に触れることで刺激を受け、気持ちも若やぎます。

同年代以上で固まると、病気や死去により徐々に寂しくなってきます。その町にどんな趣味の会があるかは、スーパーや町内の掲示板や地域の広報誌、インターネットなどで知ることができます。


近所に居場所がある町

喫茶店、食堂、居酒屋、図書館など、自分にとって居心地の良い場所がある町がおすすめです。店主の顔が見える小店が良いでしょう。

広くはない店に、週1回も通えば、店主や他の常連客と顔馴染になります。世間話から始まって、互いの自宅を行き来する仲に発展することもあります。


運動のしやすい町

体力水準、健康水準を反映するのは歩行能力です。体力・健康維持のために、1日8000歩・速歩20分を続けると、高血圧、糖尿病、癌、動脈硬化、骨粗鬆症、認知症、心疾患、脳卒中、寝たきり、うつ病など老化に係る様々な病気の予防となるそうです。

*青柳幸利氏(東京都健康長寿医療センター研究所)の中之条研究による
*中之条研究:群馬県中之条町の65歳以上の認知症、寝たきりになっていない人5,000人の1日24時間の生活を15年間追跡調査し、高齢者の体力・健康の要因を分析

1日8000歩の習慣を続けやすい町とは次のとおりです。

  • お気に入りのウォーキングコースのある町
川沿いのウォーキングコース、公園の遊歩道、さくら・銀杏並木道等々、気分良く歩けるコースがあるのと、ないのでは歩く気力に大きな差が生じます。また歩く時間も毎日午前6時というように決めると良いでしょう。そうすれば、決まった人に出会い、挨拶をかわすようになり励みになります。コースは自宅から徒歩20分圏内がいいでしょう。それ以上遠いと、行くのが億劫になり、歩く習慣が途切れてしまうかもしれません。

  • 毎朝ラジオ体操をやっている町
公園や広場で毎朝ラジオ体操会をやっていれば、ウォーキングのついでに、そこに参加することで健康増進につながります。顔馴染もできます。慣れ親しんだ人、場所ができれば、運動の習慣はとぎれにくいでしょう。

  • スポーツクラブ・イベントがさかんな町
「シニア向けのフィットネスクラブ」「ローンボウルズ」「ノルディック(ポール)ウォーキング」「太極拳」「登山」などのスポーツクラブ、行楽地へのハイキング大会等々。クラブ、イベントが盛んなところなら、運動仲間と切磋琢磨できます。どんなものがあるかは、地元の広報誌、町内の掲示板、スーパーの掲示板、インターネットなどで知ることができます。

若い時は、会社と自宅が生活の中心ですが、老い活の舞台は町です。町をうまく住みこなせば、楽しみながら3つの習慣が実践できます。これが、ずっといきいきと暮らす秘訣ではないでしょうか。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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