ニンテンドーラボのポテンシャルとプログラム
付属のダンボールキットで様々なコントローラーを作って遊べます
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もともと、Nintendo Laboは、同梱されているダンボールキットを組み立てて遊ぶだけではおさまらず、ダンボールを使い、自分で考えたオリジナルのコントローラーを作って遊べるということは前々から言われていましたが、どうやらソフトの方もオリジナルで作れてしまうようです。言ってみれば、プログラムができてしまう、ということです。
プログラム、なんて聞くとなんだか難しそうですね。しかしもちろん、プログラムの勉強をする必要は全くなく、ゲームの中で簡単に命令を組み合わせるだけで色んな遊びが作れてしまうようなのです。そしてこれがダンボールと組み合わさることで、Nintendo Laboはその名の通り任天堂のラボのようになると思われます。
Nintendo Laboでできるプログラムとはどんなことなのか、そしてそれはどんな遊びを生み出すのか、お話してみたいと思います。
可能性の塊 Toy-Con Garage
何をしたら、何が起こるのか、を組み合わせて自分で遊びを作ります
Toy-Con Garageでできるプログラミングとはどんなことでしょう? 簡単に言えば「入力」と「出力」の簡単な動作を組み合わせて命令を作ることです。例えば、入力に「タッチ」、出力に「しんどう」を選んで組み合わせると、タッチパネルをタッチしたらニンテンドースイッチのコントローラーであるJoy-Conがふるえる、という命令が出来上がります。
簡単にイメージできる例として、楽器を考えてみましょう。入力に振る、出力に太鼓の音を鳴らす、と命令を組んでおけば、Joy-Conを振ると音が鳴る打楽器ができあがりです。簡単ですね。太鼓の代わりにギターの音が鳴るようにしておけば、Joy-Conをピックにしたギターができるでしょう。
出力と入力の間にさらに条件をはさんでおくこともできます。例えば、「AND」という条件をはさんで、入力を2つつなげると、2つの入力が同時に行われた時だけ、命令が実行されます。例えば、ただ振った時には太鼓の音だけど、Aボタンを押しながら振ればシンバルになる、ということが可能になるでしょう。
ダンボールのことを忘れてはいけない
本体のタッチパネルや、Joy-Conなど、ニンテンドースイッチ独特の構成がここにきて大活躍し、ダンボールと組み合わさります
任天堂は、Toy-Con Garageの紹介動画第2弾として、リモコン戦車の作り方を公開しました。これは、大変に面白い仕組みです。
まず、タイヤの代わりに2つのJoy-Conを装備した戦車を作ります。ボタンを押せば対応したJoy-Conが振動するように命令しておくと、その振動で右に左にまっすぐと戦車を進めることができます。といっても、このリモコン戦車は「Nintendo Labo Toy-Con 01: Variety Kit(バラエティ キット)」に同梱されたダンボールキットのリモコンカーの使いまわしです。リモコンカーに戦車の気分を出すために、ペンを砲台っぽく張り付けておしまいです。
さらに戦車で倒すマトとして手作りの怪獣も作ります。トントン相撲のような紙細工で、背中にはJoy-Conを、顔にはIRマーカーをつけておきます。IRマーカーというのは、Toy-Conに搭載されているIRカメラという、赤外線カメラが捉えることのできるマーカーです。戦車のタイヤ替わりとなっているJoy-ConのIRカメラに、怪獣のマーカーが映っている状態でボタンを押すと、怪獣につけられたJoy-Conがふるえるように設定しておきます。
振動で走る戦車を操作して、IRカメラで怪獣をとらえ、ボタンを押すと、怪獣がぶるぶるとふるえながら振動で倒れます。砲撃の音もあわせれば臨場感抜群。
見えてきた、Nintendo Laboの楽しみ方
最初は、付属のキットから始めて、仕組みを学んでいきます
これでかなり、Nintendo Laboというゲームの楽しみ方が見えてきた気がします。まず、購入したら同梱されているダンボールキットでToy-Conを作って楽しむことができます。これは、最初からダンボールに切り込みが入ってますし、細かなパーツも揃っていて、ゲーム内で作り方も解説されていますから、誰でも安心して作って遊べます。そして、同梱されているダンボールキットによって、遊びの仕組みを理解します。
その次はオリジナルのToy-Conを作る……手前があると思います。多くの人はいきなりオリジナルのToy-Conを作るのではなく、Toy-Conを作る動画を楽しむという段階に入るでしょう。任天堂が今すでに公開を始めているオリジナルToy-Conの作り方動画は、発売後、工作やプログラミングになれた人達、アイデアのある人達が、自作のToy-Con次々作り動画化する流れを促していると言えます。おそらく、そういった動画を見るだけでも相当楽しいんじゃないでしょうか。
そしてそういった動画の中から、自分でも作れそうだと思うものを真似して作ればさらに楽しいでしょう。前述したリモコン戦車なんかは、リモコンカーの流用なので簡単にできてしまいそうです。
そして最後の段階として、それらのアイデアをアレンジして、自分なりのToy-Conを作り始めれば、Nintendo Laboにどっぷりハマったと言えるでしょう。もっとも、子ども達はそれほど難しく考えず、大胆にテキトーに色々作ってしまうかもしれません。
まるで任天堂のラボのように
Nintendo Laboによってニンテンドースイッチの可能性が発掘されていきそうです(イラスト 橋本モチチ)
ただし、そういったゲームとNintendo Laboには決定的な違いがあります。それはToy-Conです。ダンボールでコントローラーを作って遊ぶというコンセプトがこれまでのゲームの枠組みから大きく逸脱しています。
これはつまり、ハードとソフトの両方を組み合わせて遊びを作る、という作業です。まるで任天堂が新しいゲーム機を世に送り出す時のような試行錯誤をみんなでやってみよう、というものです。見方を変えれば、任天堂はこのゲームによって、ニンテンドースイッチという、タッチパネルがついていて、本体とコントローラーが合体したり分離したりする変な形のゲームハードの可能性を、ユーザーみんなで徹底的に掘ってみようと、そういう提案をしているように思えます。つまり、Nintendo Laboはご家庭に任天堂のラボを作る仕組みになっているのです。
インターネットが発達してきたとき、ユーザー・ジェネレイテッド・コンテンツという言葉が流行りました。UGCなんて言いますね。それまでの本とかテレビなんかのメディアは制作者側が全てのコンテンツを作り、消費者はそれを享受するという一方通行でしたが、インターネットによって気軽な双方向が可能になると、ユーザー自身にコンテンツを作ってもらう仕組みによって大量のコンテンツを提供することが可能になります。YouTubeなどの動画配信サイトはまさにこれです。今では珍しくもなんともない話ですが、Nintendo Laboはニンテンドースイッチとダンボールを組み合わせ、電子玩具でUGCをやろうとしているように思います。
Nintendo Laboが発売された時、全国にラボが開設され、ニンテンドースイッチの可能性がどこまで広がるのか、今から楽しみでしかたがありません。
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