『ボス・ベイビー』ムロツヨシさん直撃インタビュー
人気俳優のムロツヨシさんがドリームワークスの新作アニメーション映画『ボス・ベイビー』で初の声の出演を果たしました。
声優の仕事が初めてとは意外ですが、この映画の主役は”赤ちゃんだけどおっさん”という珍キャラ。大いに笑わせてくれます。そこでムロさんに初の声優仕事のこと、役者・ムロツヨシについて伺いました。
貴重なムロさんのアフレコ映像はこちら!
サービス精神旺盛なムロさんの軽快なトークに、取材現場は終始笑いが! その一方、好きな映画に関する質問では喜劇に対する強い思いも感じられて、実に熱いインタビューとなりました。
アドリブのチャンスはボス・ベイビーが背中を向けたとき!
―映画『ボス・ベイビー』では赤ちゃん役ですが、このキャラクターについて聞かせてください。
ムロツヨシさん(以下、ムロ):ボス・ベイビーの魅力はやはり“赤ちゃんなのにおっさん”というところですね。絶対に他では演じられないキャラクター(笑)。
僕は赤ちゃんにはなれないので「どう演じようか」と考えるのはおもしろかったし、本作では逆にそれがやりがいになりました。
―吹き替えの仕事は、様々な制約があると思います。ムロさんはアドリブでの演技もできる方という印象がありますが、声優の仕事で大変だったことは?
ムロ:僕が出演している映画、ドラマ、時にはアドリブに見えることもあるかもしれませんが、ちゃんと台本通りなんですよ~(笑)。
やはりアメリカ映画なので、キャラクターの口の動きは英語。そこを日本語版のスタッフの方が、口の動きを日本語で違和感ないように合せて、かつ、内容も違和感ないように脚色しているのです。だから僕はまず、口の動きを忠実に合わせることを考えて演じました。そこに遊びは入れられないですからね。
演技で遊べる箇所があるとしたら、叫んだり、アクションシーンで痛がったり、そういうところです。まあ、半分採用、半分不採用みたいな感じでしたけど(笑)。特にボス・ベイビーが後ろを向いて背中を見せるシーンは「チャンス!」と、演技に遊びを入れたりしました(笑)。
―声優のお仕事は難しかったですか?
ムロ:例えば痛がるシーンなどは、お芝居の場合、実際に体を動かしてやるから、自然に声が出るのですが、吹き替えは違いますね。自分の体を動かしてやってみましたが、口の動きを合わせながら体を動かすのは難しかった。
どうしても合わせるタイミングが若干遅れてしまうんですよ。スタッフの方が「少し遅れても大丈夫だから」と言ってくださったけど、まだまだ技術が足りないなと思いました。やはりこれは経験を積むことが必要ですね。
映画初主演作で類を見ないキャラクターに抜擢される、僕の引きの良さ!
―実はムロさん、本作は映画初主演ですよね! 今回、声の吹き替えのお仕事依頼が来たときのことなど教えてください。
ムロ:はい、初主演がまさかのアニメ作品です(笑)。
声優さんが声の吹き替えをやるのが当たり前の時代から、役者や芸人が吹き替えなどをやるようになってだいぶ経ちますが、僕はこれまで声の吹き替えのお仕事と縁がなく、初めてオファーをいただいた日本語吹き替え版の仕事がドリームワークスのアニメーション映画『ボス・ベイビー』なんです。それも主演! すごくうれしかったですね。
おっさんみたいな赤ちゃんという、かなり個性的なキャラクターをいただけたのも引きの良さかなと(笑)。
―声優のお仕事を経験されて、学んだことなどありますか?
ムロ:僕は19才から役者をやってきて、いろんな方から多くことを教えていただきながらも、俳優になるまで時間がかかったんです。そんな中、実は声だけのお芝居はできるだけ避けてきたんですよ。
それは僕が演劇をメインにやってきたことが影響あるかもしれません。例えば映像の仕事だと顔だけのクローズアップがあれば全身が映ることがありますが、演劇は常にお客さんに全身が見えていることを考えながら演じないといけないのです。
お客さんは、顔を見ているかもしれないし、または足だけを見ているかもしれないので、演劇は自分の全身の状態を作ることが重要なんです。だから声だけのお芝居を経験しちゃうと頭でっかちになってしまいそうで避けてきたんです。
でも今回『ボス・ベイビー』で声だけのお芝居を経験し、正直、力不足を感じました。声だけで伝え切れただろうかと。今まで、役者としてセリフを言うとき、どういう声でどう言おうとかあまり考えてこなかったんですよ。
でも、声だけで何かできることがある。それは見た目が僕ではないからこそ必要であり、できることなんだと。今回は本当に勉強になりましたね。
人間じゃないキャラと良いお父さん役の吹き替えをやってみたい
―いろんな学びを得た吹き替えの現場だったようですが、また吹き替えのお仕事やりたいと思いましたか? 次にやるとしたらどのようなキャラクターがいいでしょう。
ムロ:もちろんやりたいです。これまでやってきた役者の仕事とは違う表現力が求められるし、挑戦したいですね。
やりたいキャラクターは、『シュレック』みたいな感じの人間じゃないキャラクター。役者の仕事では絶対にできないキャラクターを演じてみたい。
あとは、ありえないくらい良いお父さん役もいいな。全然オファーされない役なので……あれ? 笑ってる~。なんで否定してくれないんですか?(笑)。
―すみません! これからお父さん役が来るかもしれませんよね!
ムロ:ですよねえ。その言葉が欲しかったんです(笑)。
―ムロさんがお仕事の依頼を受けるとき、何か基準はありますか?決め手とか。
ムロ:基準はないです。頂いたお仕事は基本的に受けるようにしています。スケジュールさえ重ならければどんどんやっていきたいです。
ときどき依頼される役のタイプが偏りつつあるかな……と思うこともあるので、逆にまったくこれまで演じたことのないような役のオファーが来るとすごく興味が沸きますね。そういうオファーには応えたい!と思います。
あとは脚本を読ませていただいて「面白い!」と思ったら引き受けますし……。ただ福田雄一監督の作品は特別で、必ず出ると決めています。
福田監督と僕は戦友みたいなものなので、通行人でもいいんです。ちょっとだけでも福田作品には出続けようと思っています。
―ちなみに『ボス・ベイビー』を見た感想はいかがでしたか?
ムロ:良かったです。僕が好きなシーンはボス・ベイビーとティムの喧嘩のシーン。子供同士の喧嘩がゆっくり動くように見える、あのシーンを見て「そういえば子供時代は時間の流れがゆっくりしていたな」と思い出しました。
子供同士のやりとりで、いろんなことを思い出すし、こんなに純粋で、こんなことに怖がっていたんだと、子供時代を振り返ることができる映画だなと思います。
あと、兄弟のいる人は共感度が高いとも思いますよ。弟や妹が生まれると「パパとママを取られちゃう」と、赤ちゃん返りする子がいるらしいですね。スタッフがそんな話をしているのを聞いて、まるで『ボス・ベイビー』みたいだなと。
この映画は、子供の成長、兄弟が通る道を描いた映画で、僕は基本的にいい話が好きなので、とても好みのストーリーでした。
いい話が大好き! 喜劇を作ることにこだわっていきたい
―オールアバウト映画サイトでは、皆さんに好きな映画を伺っているのですが、ムロさんの好きな映画を教えていただけますか?
ムロ:ジャック・ニコルソンとモーガン・フリーマン共演の映画『最高の人生の見つけ方』ですね。余命短い男二人が病院で出会って、死ぬまでにしたいリストを実行していく物語。
僕はこの映画がリメイクされたら、ニコルソンの秘書役を演じたいんです。ユーモアのセンスが良くてすごく魅力的なキャラクターなんですよ。そして、もっと年を取ったらニコルソンが演じた役をやりたいです。
この映画の魅力は、余命を告げられた男ふたりが、残りの人生をどう過ごすかという話を明るく描いていること。人生を振り返り、良いことも悪いこともいろいろあったけど、すべてを良かったことにしようとしているところが好きです。
失敗したこと、ダメなことすべて含めて“自分の人生でした”と句読点をつけるところがいいですね。
さきほども言いましたが、僕はいい話が好きなので、そういう映画をたくさん見たい。
最近は悲劇の種類ばかり増えていくでしょう。時代とともに様々なことが起こり、悪の形が増えて、悲劇の種類も増えていく。だからこそ喜劇を増やしていきたいんです。
僕はそういう話が作れる映画人が好きですし、その人たちが作り上げる喜劇作品に関わっていきたいと思っています。
ムロツヨシ(むろつよし)
1974年1月23日、神奈川県生まれ。大学在学中に役者を志し、99年に独り舞台で活動を開始。2005年『サマータイムマシン・ブルース』をきっかけに舞台だけでなく映画、ドラマと活動の場を広げていく。
主な作品は2009年映画『大洗にも星はふるなり』2010年『踊る大捜査線THE MOVIE 3ヤツらを解放せよ!』2013年『HK 変態仮面』2015年『明烏 あけがらす』2016年『ヒメアノ~ル』2017年『銀魂』など多数。最新映画は『空飛ぶタイヤ』(2018年6月15日公開)『50回目のファーストキス』(2018年6月1日公開)舞台はmuro式.10「シキ」(2018年4月3日より、よみうりランド内muro式らんらんホールほか)
・ヘアメイク:灯(ROOSTER)
・スタイリスト:森川雅代(FACTORY1994)
『ボス・ベイビー』
(2018年3月21日より全国ロードショー)
パパとママの愛を受けるティムのもとにひとりの赤ちゃんがやってきます。目の前に現れた赤ちゃんは、黒いスーツにサングラス。赤ちゃんらしからぬ姿は会社の重役風で、まさに「ボス・ベイビー」。そしてある日、ティムは知ってしまったのです。赤ちゃんが「ベイビー株式会社」からある秘密の任務を負って派遣されたことを!
監督:トム・マクグラス
声の出演:アレック・ボールドウィン、スティーヴ・ブシェミ、ジミー・キンメル、リサ・クドロー、トビー・マグワイア、マイルズ・バクシ
日本語吹き替え版:ムロツヨシ、芳根京子、宮野真守、山寺宏一、乙葉、石田明(NON STYLE)、山寺宏一ほか
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