「フリーアドレス」、実は日本独自の言葉
総務が行う働き方改革。フリーアドレス導入企業が増えている
その手段の一つとして注目されているのが「フリーアドレス制」。フリーアドレスとは、社員が個々の自席を持たず自由に働く席を選択できるオフィスのこと。一人ひとりに与えられていた自分の席がなく、空いている席や自由な場所で働きます。
フリーアドレスという言葉、実は日本生まれ。
海外では「ノンテリトリアル・オフィス」(領土を持たないオフィス空間)といいます。同じように、社員が携帯電話やPCを片手に、自由なデスクで仕事をするスタイルです。
では、このフリーアドレス。そのメリットとデメリット、導入時のポイントについて見ていきましょう。
<目次>
フリーアドレスのメリット
- 1 社内コミュニケーションの活性化
自由に席が選べるので、部署や役職に関係なく、現在の業務やプロジェクトに応じて、近くに座る人を決められます。部署を横断するチームやプロジェクトの編成も容易になり、コラボレーションが促進されます。周りに座るメンバーが日替わりなので、新鮮な気持ちで仕事ができるでしょう。
自ら目的を持って日々の座席を決め、必要性によって周囲とコミュニケーションを取るスタイルなので、社員の主体性、自律性を伸ばすことも期待できます。
- 2 スペースコストの削減
自席でミーティングを行うことが増え、会議室の数も減らすこともできるでしょう。私物を座席に放置しないため、一人当たりのスペースを減らすことができます。
さらに、社員の増減や部署異動時にも、レイアウト変更や電話回線、電源、LAN設備等の移設工事が必要なくなり、その分のコストも削減できます。
- 3 整理整頓、ペーパーレス化の促進
この個人用ロッカー、さほど大きくないケースが多く、仕事道具や書類を減らさないと収納仕切れません。結果、多くの書類を所持できなくなり、書類を少なくする意識が芽生え、ペーパーレス化が進みます。
フリーアドレスのデメリット
- 1 所属部署内のコミュニケーションの希薄化
- 2 集中作業が困難に
ある調査によると、日本人の6割は内向型であるとされており、あまりにもオープンすぎる空間や、他者との距離が近すぎることにストレスを感じる人もいるようです。自社の社員の特性も踏まえた上でフリーアドレス導入と範囲を決めましょう。
- 3 席の固定化
フリーアドレスに向く部署・向かない部署
作ったら終わりではなく、固定席にならない運用が大事
- 向いている部署
- 向かない部署
一部に限定した「グループアドレス」制も
完全なフリーアドレスではない、「グループアドレス」というスタイルもあります。部署ごとにエリアを決め、エリア内でフリーアドレスとするスタイルです。働く場所を選べ、チームとしての一体感も保ちつつ、他部署との交流もできます。マネジメントもしやすいため、最近フリーアドレスを導入する企業は、この「グループアドレス制」を採用することが多いようです。
フリーアドレスには設備投資が必要
フリーアドレスにでは、どこでも仕事ができるようにするための環境づくりが欠かせません。- モバイルPC
- 携帯電話
- 社内のネットワーク環境整備
- 社外からのネットワークアクセス整備
- 無線LAN
- 会議室のモニター/プロジェクター
- 社員カード認証式でどこからでも使えるプリンタ
- 私物や仕事道具をしまう個人ロッカー
フリーアドレス・グループアドレス・従来型の固定席……。
ワークスタイルを変更する前には、対象部門にアンケートを取るなどで使う側の意見をしっかりとヒアリングし、全社一律ではなく、個々に最適なオフィススタイルを提供することが重要です。
オフィスに導入後の運用がカギ
フリーアドレスは、自ら席を選び、毎日異なる人とのコミュニケーションをするので、社員がそこに意味を見出せないと、かなりストレスフルな環境になります。フリーアドレス導入の失敗の多くが「私物がおかれたまま」「特定の席に特定の社員が座る」等々で、「結局固定席になってしまった」ことが原因です。
フリーアドレス導入は、使う側の社員がそのメリットを実感できるかどうか、つまりは物理的なレイアウトではなく、運用面に成功するかどうかが掛かっているのです。
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