アドバイス1 2000万円+退職金が老後資金
まずは、待機ママさんが退職した場合のキャッシュフローを試算してみましょう。待機ママさんの育休制度では、2020年4月までは有給。つまり、それまでは今の世帯収入を維持できる(ただし、お子さんが3歳になれば、児童手当は1万円に減額)わけですから、この正社員の権利はフルに活用すべき。決して悪いことではありません。
そして、その間は年150万円貯蓄ができますから、育休制度の有給期間が切れるまでに、手持ち資金は計740万円(投資商品の評価額は変わらないとします)に増えます。そして、お子さんが幼稚園に通い始めるタイミングで、待機ママさんはパートを始めたいとのこと。仮に月8万円の収入があれば、お子さんにかかる費用を考慮しなければ、毎月2万円は貯蓄可能、ボーナスからの貯蓄分(30万円×年2回)と合わせて年間84万円となります。ご主人定年までの30年間で2520万円。先の手持ち資金740万円と合わせると3260万円となります。
さて、ここからお子さんにかかる費用(教育費、その他被服費、食費など)が、大学卒業までに1500万円とします。先の3260万円から捻出すれば、残りは1760万円。学資保険の満期金をこれに加えると2060万円。これに退職金を加算した額が、老後資金となるわけです。
アドバイス2 今は妻の健康回復が最優先事項
この老後資金で大きく困ることはないでしょうが、足りるかどうかはわかりません。不確定要素が多いからです。そのひとつが、待機ママさんが試算どおりに働いて、継続して収入を得られるかどうか。ましてや、現在体調を崩している。無理に働いて、さらに体調を悪化させることは避けなくてはなりません。待機ママさんが最優先すべきは、健康を取り戻すことです。あるいは、希望されていかどうかは不明ですが、もし第2子が生まれれば、待機ママさんが働くことのできる期間が減り、逆に教育費等は倍にアップします。
そういったことへの有効な対策として今からできることは、家計の見直しによる貯蓄ペースの底上げです。例えば、趣味娯楽費、家族の小遣い、雑費で計10万5000円。さらに、データに表記されているもの以外に支出もある(データ補足の(3)参照)ようですから、実質13万円くらいはあると考えていいでしょう。これを3分の2に減らすだけで毎月4万3000円が貯蓄に回せます。年間50万円ほど。一度には無理でも、最終的にはこのくらいのコスト減は目指してほしいと思います。
アドバイス3 繰上返済は妻の収入が安定してから
あと、悩まれていることとして、住宅ローンの繰上返済があります。完済時期はこのままであれば、ご主人62歳のとき。言われるとおり、できれば繰上返済(期間短縮型)をして、完済時期を定年前にしたいところです。また、貯蓄額だけを見れば、すぐにでもできると言えるでしょう。しかし、私は賛成しかねます。少なくとも、待機ママさんがパートで働き始め、家計の見直しによりしっかり貯蓄ペース(年間80万円程度)が維持できるようになってからでも遅くはありません。今はまだ、手元に現金を置いておきたいと考えます。
もちろん、育休中に健康を取り戻し、その後、正社員に復帰できれば、世帯収入の観点からはそれがもっとも望ましいわけですが、ご相談の文面からはその意思は何となく弱いように感じます。気持ちがそうであれば、職場復帰は体調にいい影響を与えないはず。今後、意識の変化がある可能性もありますが、今の気持ちのままなら退職を選択してもいいと考えます。
相談者「待機ママ」さんより寄せられた感想
深野先生ありがとうございます。今回、やはり保育園に落ちて待機となってしまいました。頂いたアドバイスのもと、まずは雑費の見直しから始めてみます。主人だけの給料でもやっていけるとわかりましたが、今回数字を出してもらったことで、私が正社員で働くことの重要さがわかった気がします。なるべく続けられる方向で、無理をせずやっていきましす。ありがとうございました。教えてくれたのは……
深野 康彦さん
取材・文/清水京武
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