貯蓄/平均貯蓄額などの気になるデータ

シングルの平均貯蓄率37.2%。男女でどう違う?

2019年2月に発表された総務省の「家計調査 家計収支編」から、単身世帯の家計収支を見ていきます。シングルは扶養家族がいない分、自由になるお金が多いと思われますが、賃金上昇が進まないなか、物価上昇、社会保障費の負担増が、家計にどのような影響を与えているのでしょうか。

伊藤 加奈子

執筆者:伊藤 加奈子

貯蓄ガイド

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シングルの平均貯蓄率は高く、堅実な家計管理をしている

2019年2月に発表された総務省の「家計調査 家計収支編」から、二人以上世帯のうち、勤労者世帯の貯蓄率について、「平均貯蓄率は26.6%。20代、30代の貯蓄グセがキモ」で書いたように、全体としては、可処分所得に対する貯蓄率は26.6%で昨年から4%以上の増加、貯蓄の月額平均は約10万2600円で昨年から約5600円の増加となりました。

一方、単身世帯の家計状況はどうだったのでしょうか。
単身世帯のうち勤労者世帯の家計収支(月額平均)

単身世帯のうち勤労者世帯の家計収支(月額平均)



家計収支を月額平均にしたのが上の表です。収入は昨年から約1万3300円の増加、消費支出は、約8000円の増加となりました。税金や社会保険料などの非消費支出が約3900円増加しているため、支出全体では約1万1800円の増加であり、結果的に、収入増の恩恵はわずかだったということになります。しかしながら、貯蓄純増額は昨年から約9000円の増額で、貯蓄率も37.2%と昨年の35.0%から増加しています。収入が増えたからといって消費を膨張させるのではなく、堅実な家計管理をしていると言えるでしょう。
 

独身男性の貯蓄率は42.1%、独身女性は26.7%

では、性別、年代別での違いがあるのでしょうか?まずは、男女別で家計の中身を見ていきましょう。単身世帯の集計数自体が少ないため、参考値程度ということになります。
 
単身世帯のうち勤労者世帯の家計収支(月額平均)

単身世帯のうち勤労者世帯の家計収支(月額平均)


収入に関しては、男性が昨年から約3万9000円もの増加に対し、女性は昨年から約2万3000円の減少、平均収入額は、男女で約12万1300円もの開きにあり、賃金格差は埋まっていません。

消費支出に関しては、全体では昨年から8000円程度の増加でしたが、男性は1万円以上の増加、女性は4272円の微増にとどまっています。貯蓄純増額でも男女差が出ており、男性は約2万4000円の増加に対し、女性は約1万2800円の減少となり、貯蓄率でも男性が42.1%(昨年37.7%)、女性が26.7%(昨年30.2%)と、収入差がそのまま貯蓄率となって示された格好です。
 

男性34歳未満の平均貯蓄率は、なんと48.9%にも!

男性シングルのうち、34歳以下と、35歳以上の2区分では、どうでしょうか?
 
単身世帯のうち勤労者世帯の家計収支(月額平均)

単身世帯のうち勤労者世帯の家計収支(月額平均)



34歳以下の貯蓄率が48.9%と、高い数値であることは、驚くべきことです。昨年の同調査でも、45.5%でしたから、今回だけ特別なのではなく、男性シングル、34歳以下の貯蓄行動には、目を見張るものがあります。収入は、昨年から約4万2300円の増加に対し、消費支出の増加は1万1800円程度に抑え、貯蓄純増額は昨年から2万5600円増えて、14万8181円となっています。

一方、35歳以上では、収入が昨年から約4万2000円の増加、消費支出は9000円の増加です。貯蓄純増額は約2万6900円の増加で貯蓄率も昨年の34.2%から39.4%に上昇しています。

調査データでは35歳以上と大きなくくりになっているため、40代、50代の消費傾向に引っ張られている可能性はありますが、34歳以下と収入差が約5万9000円ありながら、貯蓄純増額では34歳以下のほうが約2万円多いわけですから、家計管理を一度見直す必要があるかもしれません。
 

女性は貯蓄を増やすことを懸命に頑張っている

シングルの男女比較でも書きましたが、女性は男性ほど賃金の上昇が見込めず、そのなかで貯蓄をしていくことは、非常に厳しい状況が続いています。女性は消費の増加を最小限に抑えて貯蓄額を増やす努力をしているように見えます。これは34歳以下、35歳以上の2区分でも同じ傾向で、34歳以下では、収入が昨年から約1万4600円減少したのに対し、消費支出は約5000円の増加。貯蓄純増額は昨年から微減。しかし貯蓄率は41.2%と昨年の39.9%から上がっています。
 
単身世帯のうち勤労者世帯の家計収支(月額平均)

単身世帯のうち勤労者世帯の家計収支(月額平均)



35歳以上の収入は、昨年から約3万4800円の減少で、消費支出は3718円の増加に抑えられています。貯蓄純増額は昨年から約2万2900円の減少で、貯蓄率も21.1%と昨年の27.9%から大きく下げています。ただし、この階層は34歳以下よりも収入はわずかながら多いのに、貯蓄純増額は5万円近くも少ないことを見ると、家計全体での見直しが必要なケースもあるかもしれません。

女性の場合、勤労者=厚生年金加入者であっても、現役時代の報酬が男性より少ないため、結果、年金受給額でも差がついてしまいます。公的保障が薄い女性シングルは、老後をゆとりあるものにするためには、やはり自助努力で貯蓄を増やしていくしかないのです。

ただし、もちろん貯蓄は大事ですが、日常生活でのストレス発散や、将来に向けての学びなどを必要以上に減らしてしまうのは、お金には代えられない「精神的な豊かさ」までも減らしてしまう可能性もあります。家計はメリハリとバランスです。どこかにひずみがでない家計管理を目指してほしいと思います。

※データ出典/総務省統計局「家計調査 家計収支編 2018年」より、単身世帯のうち勤労者世帯のデータより抜粋して、筆者作成

 
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