収入も支出も増加するも、貯蓄率も大幅UP

平均貯蓄額、平均収入といったお金に関するデータは、各省庁が発表する統計データのほかに、金融機関や調査会社などによる独自調査データが多くあります。こうしたデータを見ると、「現実離れしている」という声が挙がります。確かに平均値はあくまでも平均で、自分の生活実態にそぐわない面もあります。それでも、統計データを自分事としてとらえることが、マネー管理の面では役に立つことも多いのです。

 
勤労世帯の貯蓄率をチェック

勤労世帯の貯蓄率をチェック




この記事で紹介する、総務省の『家計調査』は毎月の速報のほか、4半期、年間でデータが公表されています。その中に、年収別、年代別、都市別など細分化してまとめられているデータがあります。より自分に近いプロフィールではどうなのか、といった観点で数字を見るといいかもしれません。

まず、二人以上世帯のうち、勤労者世帯の家計収支がどうなっているのか、見ていきましょう。データはすべて年間の数値を月額平均にしたものです。
 
二人以上世帯のうち勤労者世帯の家計収支(月額平均)

二人以上世帯のうち勤労者世帯の家計収支(月額平均)



昨年の同調査と比較すると、平均収入は昨年の55万8718円から58万6149円と約2万7000円の増加となっています。消費支出は昨年の31万5314円から32万3853円と約8500円の増加に抑えられています。税金や社会保険などの非消費支出が約6000円増加しているため、支出全体では約1万4450円の増加となっています。
 
家計収支の黒字額は、昨年より1万3000円程度増え、15万2792円。月額平均の貯蓄純増額も、昨年の12万1135円から約2万8000円増え、14万9704円という結果になっています。可処分所得に対する貯蓄割合を示す平均貯蓄率は、26.6%から31.4%に上昇しました。

消費支出は増えましたが、支出の内訳を見ると、消費支出全体に対する各項目の支出割合は、さほど変化していません。収入が増えた分、食費や教養娯楽費が極端に増えるということはなく、家計管理上は変化なく、支出増を抑えながら、貯蓄に回している、という構図が見て取れます。
 
2019年は企業業績が好調でベースアップや夏のボーナス増額などの恩恵を受けた世帯も多かったのでしょう。10月に消費増税がありましたが、調査データ全体に影響が及ぶほどではなかったことも、支出が増大しなかった要因かもしれません。
 
ただ、2020年に入ってからのコロナ禍により、収入の大幅な変化、消費動向に大きな変化が起きていますので、来年の調査データがどうなるのか、気になるところです。
 

年代別では20代、30代の貯蓄率が高い

では、年代別では、どうなっているか見ていきましょう。まずは、20代、30代。
 
二人以上世帯のうち勤労者世帯の家計収支(月額平均)

二人以上世帯のうち勤労者世帯の家計収支(月額平均)



収入は、20代で昨年から約6万円の増加で46万2411円。30代では約2万2000円の増加で、55万7585円。一方の支出は、20代で約6000円の増加にとどまり、30代でも約8000円の増加で、両年代とも収入増に対して、支出増は抑えられています。
 
貯蓄純増は、両年代とも昨年より増加しており、20代の貯蓄純増は昨年から約4万4000円も増え、17万7920円。これは、全年代を通して、一番多く、平均貯蓄率も44.4%と、最も高くなっています。30代の貯蓄純増は約1万5000円増の15万9406円。貯蓄率は34.4%と、20代についで高い貯蓄率を示しています。
 
収入が40代以降と比べて低くても、貯蓄をしっかりとしているというのは、心強いものです。この傾向は例年同じで、貯蓄率は、20代、30代とも昨年から大幅に上昇しており、堅実な世代と言うことができるかもしれません。実際、ライフプランのなかで、結婚して子どもが生まれる、または子育てが一段落し、子どもが高校に上がるまでの期間は、お金を貯められる時期でもあります。この期間に貯蓄のベースを作っておくことが、20年後、30年後に生きてきます。
 
収入が上がった分、消費を増やすのではなく、貯蓄にしっかりと回すこと、貯蓄グセをつけることが大事です。
 

子どもの教育費負担が重くなる40代、50代

40代では、収入が昨年から約2万3000円増の62万4344円。50代では約3万8000円増の68万2131円。消費支出はともに約1万円の増加に抑えられています。
 
40代、50代は子どもの教育費などにお金がかかり始める年代。収入も増えるが支出も増えるという状況のなか、貯蓄純増も昨年より増えており、貯蓄率は40代、50代ともに32.3%と、昨年から大幅に改善されています。
 
年代別 二人以上世帯のうち勤労者世帯の家計収支(月額平均)

年代別 二人以上世帯のうち勤労者世帯の家計収支(月額平均)




この年代では、子どもにかかるお金は教育費だけではなく、食費、被服費、通信費など、生活全般で大人と同じかそれ以上のお金がかかってきます。また、住宅購入で住宅ローンの返済を抱えている世帯も多くなります。可処分所得は20代、30代に比べると多いように見えても、実際に自由に使えるお金は少なく、貯蓄に回す余裕もなくなってきます。
 
50代は貯蓄をしながら、子どもの大学進学費用などでまとまったお金が出ていく時期であり、並行して老後に向けた資金作りもしなければなりません。このことを念頭に置けば、20代、30代のうちから、将来に向けての貯蓄を始めておくことが大事であるとわかるでしょう。
 

定年後も働くことで、家計に余裕ができる60代、70代

60歳で定年。住宅ローンを完済し、子どもは独立。定年後は悠々自適に暮らす。そんな時代は、遠い昔に過ぎ去りました。60歳以降も、再雇用や再就職などで働けるうちは働き、年金で不足する分を貯蓄から取り崩すのではなく、働いて収入を得ることで、その後の本当の老後生活を安心して迎えることができるのです。

60代以降も46万円も収入がある、というこの結果は、少々現場感からすると、驚きの数字ですが、60代の平均年齢は63.7歳なので、65歳までは働く、ということが定着しつつあるのでしょう。働いて収入を得る、少なくとも公的年金の受給開始年齢まで働くという考え方自体、これから重要なテーマになるでしょう。

 
年代別 二人以上世帯のうち勤労者世帯の家計収支(月額平均)

年代別 二人以上世帯のうち勤労者世帯の家計収支(月額平均)



注目すべきなのは、消費支出のなかで、教育費がガクッと減るのは当然として、これだけ収入があるからなのか、食費などは子どもが独立する前と後で、それほど変化がないことです。働いて収入を得ることで、現役時代の生活レベルを維持するのもいいことですが、生活のダウンサイジングを心がけ、この先のリタイア生活に向けた準備をしておきたいものです。
 

平均は平均だからではなく、自分の消費傾向をチェックする

今回のデータでは、全年代を通して、すべての数値が増加していました。特に、貯蓄に関しては、昨年からの収入増以上に貯蓄を増やしている格好です。今年に入ってからのコロナ禍で、特別定額給付金などもありましたが、外出自粛などで、使いたくても使えない、貯蓄として残しておく、という世帯も少なくありません。今後は、収入の見通しが立たない、冬のボーナスの減額が見込まれるなど、家計状況は一層厳しくなります。各家庭では、消費傾向に変化が表れてきているでしょう。
 
家計は世帯それぞれに事情があり、ほかの世帯と比べることに、あまり意味はありません。しかし、こうしたデータから消費支出の割合をチェックし、我が家の家計と比較し、使いすぎている費目はないか、それは削ることができるのか、今は無理でも子どもが成長したら減らせるのか、または、これからどのくらい増えるのか。そうした家計チェックに使うことができます。コロナ禍での家計の変化も、再度チェックしてみるといいでしょう。
 
とかく、家計は近視眼的に、毎月のやりくりに目が行きがちです。また月によっても変動があります。年間でかかったお金を月平均にならし、昨年と変わったところはないか、来年はどうなるか、そうした結果の確認と予測を立てることも大事なことです。
 
数字の見方はいろいろありますが、「こんなに収入ないから」、「平均の数字は高すぎる」というばかりではなく、うまく活用して、健全な家計管理に役立たせて欲しいと思います。

※データ出典/総務省統計局「家計調査 家計収支編 2019年」より、二人以上世帯のうち勤労者世帯のデータより抜粋して、筆者作成

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