2017年秋にモデルチェンジしたX3、何が変わったのか
BMWでは、自車のSUVのことを「SAV(=Sport Activity vehicle)」と呼んでいます。その中堅モデルであるX3が2017年秋、モデルチェンジして3世代目に移行しました。一見すると、あまり従来の2世代目から大きく変わった感はなく、従来のイメージを色濃く残しているのは見てのとおり。これまでどおり、「Standard」、「xLine」、「M Sport」の3タイプが選べます。
ボディサイズは全幅と全高が従来とほぼ同じで、全長がやや伸びて4.7mを超え、ホイールベースも55mm拡大されています。これにより室内も広くなり、とくに後席の余裕が増しています。リアシートがリクライニングできるようになったのも新型の特徴です。
広くなっただけでなく、インテリアは質感が大幅に引き上げられていて、車格が上がったかのように感じられるほど。ダッシュ中央のワイド画面ディスプレイはビルトインではなく独立したタイプになり、新たにタッチパネルを採用したことで使いやすくなっています。
中身が一新され、全体的にドライブフィールがよくなった
外見の変化は小さくても、中身は一新されています。プラットフォームは非常に評価の高い現行7シリーズや5シリーズのものをもとに、このクラス向けに新規開発したものが、次期3シリーズや4シリーズに先立って新型X3に初めて採用されました。2代目もよくできていたところ、これにより全体的にさらにドライブフィールがよくなっています。乗り心地にやや硬さを感じるものの、挙動変化が小さくフラットな姿勢を保ち、攻めたコーナリングでも安定感はバツグン。ステアリング操作に対する応答遅れもなく、しっかりと路面をとらえる感覚が伝わってきます。
その走りのよさには、BMWから出された厳しい要求性能を満たし、横浜ゴムとして初めてBMWの市販車に純正装着となった「ADVAN Sport V105」も寄与しているようです。ドライでのハンドリングだけでなく、ウェットグリップが高いことも印象的で、小雨の中でも不安なく走ることができました。
エンジンは、2リッター直列4気筒ターボのガソリンとディーゼルが導入され、いずれも8速ATが組み合わされますが、まずは2代X3でも販売の約8割を占めていたディーゼルがひとあし先に日本上陸しました。ディーゼルは、従来からの変更点として排出ガスの後処理に尿素水を用いたことが大きなポイントです。最高出力190ps、最大トルク400Nmと、2リッタークラスのディーゼルでは最高峰のスペックを誇ります。
ドライブすると、ややトルク感が控えめな気もするものの、レスポンスがよく、ディーゼルとしては高めの5500rpmというレッドゾーン付近までよく回ります。吹け上がりがスムーズで、音や振動などディーゼルに付きものの弱点もあまり気にならず、車内の静粛性も高く保たれています。
さらには、部分自動運転を実現した先進安全運転支援システムなど、機能面でもいろいろとアップデートされています。これまでも高い人気を誇っていたX3の新型がどうなったか気になっている人は大勢いることと思いますが、このように見た目よりも中身が大幅に進化していることが、ご理解いただけたでしょうか。
X1、小改良され燃費性能と加速性能が向上した
また、BMWのSAVのエントリーモデルであるX1にも小変更がありました。2代目X1は、2015年秋より日本に導入されています。初代はFR駆動ベースだったところ、2代目は後席や荷室を広くするのに有利なFFベースとなったのはご存知のとおりです。そのエントリーモデルである、1.5リッター直列3気筒ガソリンエンジンを搭載する「X1 sDrive18i」のトランスミッションが、6速ATから7速DCTに変更されました。これについて、Mモデルのような高性能車を除いて、量販モデルにはトルコンATを採用することを是としていたBMWがなぜ?と思わずにいれられません。
それは、扱いやすさや軽量で耐久性に優れることなど、トルコンATには諸々なメリットがあり、BMWとしてはそれを重視していたからです。ところが今回、7速DCTを採用した目的は、さらなる燃費性能の向上と加速性能の向上にあります。
X1のエンジンのスペックはどう変わった?
エンジンスペック等も若干変わって、これまで最高出力100kW(136ps)/4400rpm、最大トルク220Nm(22.4kgm)/1250~4300rpmだったところ、最高出力が微増の103kW(140ps)/4600rpm、最大トルクは不変の220Nm(22.4kgm)/1480~4200rpmとなり、いずれも発生回転数が微妙に変わっています。そして、JC08モード燃費(日本仕様)は、従来の15.6km/Lから15.7km/Lへと0.1km/L向上し、0-100km/h加速タイム(ヨーロッパ仕様)も従来の9.7秒から9.6秒に0.1秒とわずかに短縮されています。7速DCTは2対の湿式クラッチを備えたタイプで、DCTでは気になるギクシャク感もほとんど気になることはなく、それでいて走るとDCTらしい歯切れのよいシフトチェンジとダイレクト感のある加速を味わうことができます。こうしたよいものができたからこそ、BMWもDCTの採用に踏み切ったのでしょう。
ただし、DCTの搭載により燃費の公表値が向上したにもかかわらず、排ガスのNOxが微妙に増加したことでDBA/CBA基準が満たせず排ガス基準が「★★★★」から「★★★」になり、従来のATのときは適合していたエコカー減税に適合しなくなってしまいました。少額ではありますが、少々残念は話です。
全体のドライブフィールは、乗りやすさという点では上級のX3やX5をしのぐほどで、軽快で気持ちのよい走りを楽しむことができます。たとえ小排気量のFFだろうと、そこはさすが“駆け抜ける歓び”を標榜するBMWの一員なのです。