アドバイス1 夫が働かなくとも老後資金は十分確保できる
ご相談はこのまま働かないとして、資金的に大丈夫かということですが、結論から言えば、心配は不要です。資金的には問題ないと考えていいでしょう。その根拠ですが、今後のキャッシュフローを見ていけばわかります。まず、現在の収支は世帯年収(手取額)550万円に対して支出は690万円。単純に見れば年間140万円の赤字です。ただし、大学生のお子さんは2年後に卒業。その時点で教育費と仕送り費用、さらに学資保険の保険料負担がなくなります。これだけで、年間にして約220万円のコスト減。2年後には一気に年間収支が80万円の黒字になるわけです。
このとき奥様は55歳。定年までの5年間、この収支が継続されれば、400万円貯蓄が上乗せされます。これに学資保険の満期金、奥様の退職金、ご主人の個人年金保険の年金、今ある金融資産を加算すれば、5年後に手元に残る資金は9890万円ほど。これがいわゆる老後資金となります。
また、公的年金受給となれば、個人年金保険の年金と合わせて、その額は年間480万円(奥様75歳までは540万円)。税金、社会保険料を差し引いても、おそらく年間400万円は残ります。今の生活費から考えて、貯蓄ができる(生活費が余る)月も少なくないでしょう。
また、もし奥様が60歳以降、フルリタイアするとすれば、60~65歳の収入は個人年金保険による年金だけとなります。これが年間150万円。仮に、生活費を月30万円とすると年間210万円の赤字。5年間で1050万円。先の老後資金から捻出するとして、まだ8840万円が残ります。将来的に、自宅リフォームやクルマの買い替えなどのまとまった支出があるでしょう。いずれ固定資産税の支払いも発生します。また、介護や病気入院、逆に長生きリスクも否定できません。しかし、それらを想定しても、老後資金は一般的には「十分な額」と言っていいと思います。
アドバイス2 今後、働くことはプラスにならない
さて、資金的には問題ありませんが、気になることもあります。それは「今は、無職ですがフルではなくパートで働きたい意思はあります」という部分。個人的には、働くことはパートであっても賛成できません。「働かなければ」と義務的に考えてのことであれば、なおさらです。優先すべきは、ご主人の健康が戻ること。そのために、働くことがプラスになるとは思えません。それどころか、さらに悪循環を生むでしょう。非正規で何カ所か勤務したものの、結局、どれも続かないで辞めてしまったことが、そのことを証明しています。仕事の第一の目的は収入を得ることですが、すでに資金的には十分余裕があります。そうなると、仕事の喜び、それを得たいという渇望が、仕事をする上での不可欠な要素、モチベーションとなるはずです。しかし、私は専門家ではありませんが、少なくとも現状では、それを得ることは難しいと感じます。今は何もせず、身体に負担をかけないことが必要ではないでしょうか。
とは言え、「何もしない」というのも、辛いかもしれません。であれば、趣味を広げてもいいでしょう。ご夫婦で旅行をされてもいいのでは。あるいは地域貢献、ボランティアでも構いません。体力的に可能なら、福祉活動もいいと思います。人は、人に感謝されることで、自分の存在意義を感じることができます。それが生活の張りや生き甲斐につながることも十分あります。もちろん、向き不向きがあります。時間は十分ありますので、慌てず焦らず、「自分らしくできる何か」を探してみてください。
そのように過ごして「仕事をしたい、仕事をして喜びたい」という渇望が沸いてきたら、パートあるいはアルバイトの範囲で仕事を再開してもよいでしょう。その渇望が生まれてこないと、同じことの繰り返しとなりますます落ち込み、ストレス等で健康を害してしまう可能性大と肝に銘じるべきでしょう。
相談者「元公務員だめんず」さんから寄せられた感想
無職のまま生活していくことが不安でしたが、老後資金は一般的には「十分な額」と回答いただきまして、安心しました。また、今後の指針ともなるべきアドバイスをいただきまして、勇気づけられました。ありがとうございました。※マネープランクリニックに相談したい方はコチラのリンクからご応募ください(相談はすべて無料になります)。
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教えてくれたのは……
深野 康彦さん
取材・文/清水京武
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