犬の名前を付けるときに知っておきたい5つのこと
犬の名前を付けるときに知っておきたい5つのこと
<目次>
1:短めの音節のほうが犬は聞き取りやすい
名前はなるべく短めに:(c)GYRO PHOTOGRAPHY/a.collectionRF/amanaimages
犬の血統書をお持ちの方ならおわかりでしょうが、洋犬の場合、血統書名というのは意外に長いものです。長過ぎる名前は犬であっても人であっても、普段の生活上は支障があり、結局は短縮形や別の名前、ニックネームなどで呼ばれることがほとんどです。
人間のような言語をもたない犬では、より短い名前のほうが意識しやすいようで、犬に関する著書が多いことで知られる心理学者のスタンリー・コーレン博士も、長年にわたる経験から、「2音節の名前のほうが言いやすいのに加え、犬の良い反応を得やすいように思われる」(*1)といいます。
また、動物行動学者のパトリシア・マッコーネル博士も、最初の音節が第2音節への導線として働き、2音節の名前は犬の注意を引きやすいのではないか?という考え方に対して、「おそらく、使い方に柔軟性のある名前がもっとも有効なのだと思う」として、ある程度、肯定的な意見をもっているようです(*2)。
ということは、「アリストテレス」という名前より、「バーニー」のほうが犬には伝わりやすいということになるのでしょう。
2:“硬い音”のほうが犬に伝わりやすい
いろいろな母音と子音を発して、犬が反応しやすい音を探すのも1つの方法かも:(c)daj/amanaimages
同じく、マッコーネル博士は、「“k”“p”“d”など広帯域音にあって“硬い”子音と呼ばれるものが組み込まれたものは、母音+“柔らかい”子音で組み合わされたものに比べ、脳の聴覚受容体ニューロンをより刺激し、犬の注意を引きやすい」ともいいます。犬がクリッカーの音によく反応するのも、広帯域音にあるからだとか(*2)。
“k”“p”“d”を日本語のカテゴリーで見てみると、子音のうちの「破裂音」に入り、その他、“t”“b”“g”なども含まれています。
これが確かに有効であるとするなら、「マロン」という名前より、「クーパー」や「だいすけ」のような名前のほうが犬にはより気づきやすいということになります。犬とスポーツを楽しみたいのであれば、コマンドにより気づきを与えられるよう、これらを意識した名前をつけるというのも1つの考え方でしょう。
その他、母音では特に“a”“e”“i”“y”(広帯域音?)が、また、名前の最後が“ee”“aa”のように伸びるもののほうがより犬の注意を引きやすいという意見もあります。
一般的に、犬は、母音は聞き取りやすいものの、子音は聞き取りにくいのでは?といわれることが多いですが、まったく聞き取れないということではないでしょう。
余談になりますが、犬には人の話し声がどう聞こえているのか?というある研究では、犬は語彙や文脈はわからずとも、音を処理する脳の働きは人間に似ている部分があるとしています。それは、主に右耳から入った音は左脳で情報が処理され、左耳で入った音は右脳で情報処理されるというもの。
この実験では、犬の両側からスピーカーで何種類かの音を聞かせたのですが、普段聞き慣れたコマンドのような言葉を聞くと、犬は頭を右側に向け(=左脳が情報処理)、わざと聞き取りにくいように合成した音を聞かせると、頭を左側に向け(=右脳が情報処理)、脳の情報処理の仕方について、人と非常に似ている様子を見せたということです。
研究者は、「犬は私たちが誰で、どう喋るかのみでなく、“何”を言っているかにも注意をはらっているという考え方を十分支持できる結果である」としています(*3, 4)。
直接的に子音とは関係ありませんが、犬には私たちが思っている以上の繊細な音声処理能力があるのかもしれないというロマンを抱かせてくれる話なのではないでしょうか。
3:しつけやトレーニングで使用する言葉と似た名前は避ける
すでに、一緒に遊ぶ犬友だちがいるなら、その犬たちと発音、発声が似ていない名前にしたほうがいいかもしれない:(c)GYRO PHOTOGRAPHY/a.collectionRF/amanaimages
犬との暮らしの中で日常的に使用する言葉として、しつけやトレーニングに関連するものがあります。たとえば、「こっちを見て」と注目させる意味で「ルック」という言葉を使っているとしたら、「ルーク」という名前は犬が混同してしまうでしょう。同様に、以下のような例が考えられます。
ノー : ノーラ
ステイ : ジェイ
ヒール : ニール
これから犬を迎えるのであれば、しつけやトレーニングで使いそうな言葉と似た名前は避けたほうがいいでしょう。
4:同居犬や家族と似た名前は避ける
3と同様に、先にいた犬の名前が「サム」で、後から来た犬に「サミー」と名づけたとしたら、犬たちは迷ってしまう可能性があります。「ラブ」と「ラッキー」、場合によっては「ラブ」と「リリィ」のように同じ「行」で始まる名前も迷わせてしまうかもしれません。5:名前が与える印象も考慮
名は体を表す、逆に名前負けというのもありますが、名前の響きや意味などによっては、あるイメージを人に与えることがあります。一般的に少々きついイメージにとらえられがちな犬に、「ハルク」や「拳闘(ケント)」のような名前をつけた場合、より強そうなイメージになり、超大型犬に「チビ」と名づけたなら、逆に可愛らしいイメージを与えることでしょう。
どんな犬に育てたいのか、自分の愛犬を周囲からどう思ってもらいたいか、そういったことを考えるのも、場合によっては1つのポイントになります。
名前の“お試し”をして、犬の反応を見てみよう
いくつか名前をピックアップしたものの、迷っている場合には、犬をそれらの名前で呼んでみて、反応を試してみるというのもいいと思います。折角考えた名前であるのに、犬が反応しにくいのであれば寂しいもの。試した中で、もっとも反応しやすいものを、選択するというのもいいかもしれませんね。犬の名前の参考例
さて、最後に、犬の名前のセレクト参考例を挙げておきましょう。たとえば、アメリカン・ケネル・クラブの公式サイトには、DOG NAME FINDERというページが用意されており、カテゴリー別で代表的な犬の名前が載っている他、アイリッシュ系の犬やハンティングドッグ、ハスキーに向く名前、フランス語の名前、ユニークな名前なども掲載されています。
日本では、漢字であると1文字か2文字、ひらがなやカタカナであると2~3文字の名前が圧倒的に多く、メス犬では花や飲食物をイメージするものが(ハナ、モモ、サクラ、小梅、華/ハナ、小春、モカ、マロンなど)、オス犬では意外に古風な名前が目立ちます(小太郎/虎太郎/コタロウ、小鉄/コテツ、福/フク、茶々丸、大和、風太など)。
そんな中、ユニセックスな名前としては、「空」「マロン」「チョコ」「ココ」「モコ」「麦/ムギ」「ココア」などが人気のようです(*5)。
そのような名前リストを参考にするのもいいでしょうし、他にはない個性的な名前を考えるのも楽しいですよね。名前は一生使うもの。言ってみれば、そのコそのものにもなり得るわけです。みなさん、どうぞ愛犬のために素敵な名前をお考えください。
参考資料:
(*1)The Art and Science of Naming a Dog / Stanley Coren PhD., DSc, FRSC / Psychology Today
(*2)A Dog By Any Other Name / Patricia McConnell PhD. / BARK
(*3)Orienting Asymmetries in Dogs’ Responses to Different Communicatory Components of Human Speech / Victoria F. Ratcliffe, David Reby / Current Biology, Volume 24, Issue 24, p2908–2912, 15 December 2014, doi: https://doi.org/10.1016/j.cub.2014.10.030
(*4)Dogs hear our words and how we way them / Science Daily
(*5)第13回犬の名前ランキング2017/アニコミ損害保険株式会社
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